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123 閑話 カニバリズムスイサイド

ATTENTION!!!


今回は性癖にとち狂った作者による自分の作品のセルフパロディになります。マジで自分の性癖にしか優しくない。

エピソードタイトルにもありますがカニバリズム、死ネタを含みますので、苦手な方は読まなくても大丈夫です。直接本編とは関係ないので。


概要:謎軸のシュヴァイ。強いて言えば悪魔のシュバルツを受け入れたいのに受け入れなくて突き放しちゃったヴァイスと突き放されたシュバルツという謎時空。しかもヴァイス18歳で冒頭から死んでる。なーろっぱなのになんで火葬なの?という突っ込みは呑み込んでください。土葬からのカニバリズムじゃなくて火葬からの遺骨の骨噛みが欲しかったんです!!!骨噛みを自給自足したかった。シュバルツ視点。色々ツッコミどころあっても作者が性癖を無理矢理当てはめるために書いた話なので気にしないでください!!!




以上のことを踏まえて本編に進んでください!!!もう一回言いますよ!今回は死ネタ、カニバリズムありのセルフパロディです!!!

 「ヴァイスが死んだ」

そう知ったのはよく晴れた冬の夕刻のことだった。それも今日の夕暮れに火葬されるらしい。それだけを伝えてグラウはその場を立ち去った。初めて会ったときからグラウは表情に乏しく物静かで簡潔な物言いだったな…そんな風に思った。


 ヴァイスが死んだ。そんなわけがない。いや、そんなことがあってたまるか。かみ砕けない言葉を無理矢理飲み下して私は動き出していた。空を掛けて火葬場を目指す。


 遺体の安置された火葬場は静かだった。唯、静寂だけがこの場を支配していた。痛いほどの静けさの中棺桶を見遣る。真っ白な花に囲まれた君は唯々美しかった。


 日が沈む中、君は燃えさかる火に呑み込まれた。いつも今を生きていた君が死人の冷たさを持っていることを確かめることも出来ず私はその場に立ち竦んで居ることしか出来なかった。


 ああ、みんな泣いている。唯々その場に居て泣くことも出来ない私と違って。


 君は家族、友人、使用人、シャッテントゥルムの構成員、皆に慕われていた。義妹の聖女、友人の公爵令息と侯爵令嬢。みんな泣いていた。私が知る限り涙を一度も見せたことのないビーネもグラウも涙ぐんでいた。この二人は学園にも同行したのだから悲しみもひとしおなのだろう。


 炉から出てきた骨は美しかった。とろりとした白。骨壺に収まっていく骨達。華奢な君の体を構成していたモノ達。


 頭蓋骨は壺に収まる様に砕かれた。火葬場の人の手によってガツン、ガツンと骨は白く砕かれる。あの美しい青の瞳を湛えた眼窩もスッとした顎も小さく両手に収まるほどに細かく砕かれる。


 そんな光景に何か悲しさに襲われるわけでもなく唯々引きつけられていた。あの骨が欲しい。あの美しい君が骨になって私の手元にやって来る。それは何て美しく素晴らしい夢でしょうか。


 衝動的に、何かに突き動かされるように私は君の遺骨を手に入れていた。遺骨の入った壺を抱いて空を駆けていた。冷たい墓石の下から盗み出した物言わぬ君。


 ねえ、死んじゃったんだね。初めて会ったとき君は6歳だった。それから12年、最後まで君に受け入れて貰えなかった。


 唯、私は一目見て欲しいと思った君を主にと思った。それだけだった。


 でも、君は最後まで私に体を許さなかった。その身に私を受け入れ悪魔を内側に飼うことを拒んだ。


 「駄目だよ、一緒に居たら失うことを考えるから だから側に居ないで どこかで生きていると思えたら私はそれだけで十分なの」


 君はそう言って失いたくないから要らないと私を拒んだ。何がそこまで君を臆病にさせるのかついぞ私は知ることが出来なかった。側に居ない時間は長いけど、時折の短い逢瀬は私たちを満たしてくれた。キスもしたことがないけど私と君は確かに恋人のようでそれより近い何かだった。


 半身。強いて言うならその言葉が一番近いだろうか。


 「定義したら変わってしまいそうで怖いの」


 そう言ってこの関係に名前を付けなかったのも君だった。それでも、拒まれてばかりでも私は君が欲しかった。口にすることのなかった言葉は意味も無くまだ喉元を漂っている。


 骨壺を開けた。綺麗で真っ白な骨が姿を現す。君は綺麗だよ。そう言っても決してそうは認めなかった君からの返答はもう無い。それでも構わない。今は唯君が腕の中に居ることが嬉しかった。


 遠く街を見渡す丘の上。私がねぐらにしている廃教会。ボロボロで神像を失った祭壇に君を閉じ込めた骨壺を置いた。


 一欠片。つまみ上げた骨は薄く小さい。


 そしてそれを無造作に口に放り込んだ。ゴリゴリと奥歯で君の欠片を噛み砕く。初めて食べた君は少し甘くて、そして、ほろ苦かった。


 口腔の中をコロコロと転がしてから呑み込んだ。ゴクリと嚥下するときに君が私の中に入ってくると思うとささやかな興奮めいたものを覚えた。その日は骨壺を胸に抱いて眠った。君は夢に出なかった。


 君の骨を食むことは私の習慣になった。基本的に眠らない悪魔の私だけど昼間は大体眠っている生活を送っている。だから朝寝る前に一欠片、夜起きて一欠片。たまに二欠片。


 今日食べる骨は、何処の骨か、君の肌の何処にこの骨が埋まっていたか、夢想してから骨を噛む。


 今日は橈骨。 ひじから手首までの2本の前腕骨のうち、前腕の親指側にあり、尺骨と平行している長管骨だ。君の白い肌は滅多に晒されることはなかったから半袖の姿は珍しくその時に見えた肘を艶めかしく感じたことを遠く思い出す。


 今日は月状骨。壊死しやすいというその骨は小さくてまろい白をしていた。愛撫するように舌の上をコロンと転がしてから噛む。

 「うへぇ、苦いよ君」

がりっ、と響いた音。その音は硬く中身の詰まった骨の音だ。


 まるで君のようね。呟いた言葉は空に吸われて、くゆる紫煙のように掴めず消える。


 芯の強い君の骨はしっかりと中身が詰まっている。一方でがらんどうの私は如何だろう。現し身など幾らでも弄れるのに私の骨は屹度スカスカ空いていることだろうと思った。


 私の隙間を君が埋めてよ。もう、君が心をくれることはないからせめて骨の隙間だけ君が埋めて頂戴。物言わぬ骨に語りかける私はさぞ滑稽なことだろう。愛されなくて骨を求めて其れを食む悪魔。ははっ、笑っちまうね。


 後頭骨、前頭骨、篩骨、蝶形骨、側頭骨、頭頂骨、鋤骨、下鼻甲介、涙骨、鼻骨、頬骨、上顎骨、口蓋骨、下顎骨、耳小骨 、鐙骨、砧骨、槌骨、舌骨、頸椎、胸椎、腰椎、仙骨、尾骨、肋骨、胸骨、肩甲骨、鎖骨、上腕骨、橈骨、尺骨、手根骨、手の舟状骨、月状骨、三角骨、豆状骨、大菱形骨、小菱形骨、有頭骨、有鈎骨、中手骨、手の指骨、手の指節骨、手の基節骨、手の中節骨、手の末節骨、手の種子骨、寛骨、大腿骨、膝蓋骨、脛骨、腓骨、足根骨、距骨、踵骨、足の舟状骨、内側楔状骨、中間楔状骨、外側楔状骨、立方骨、中足骨、趾骨、趾節骨、足の基節骨、足の中節骨、足の末節骨、足の種子骨。


 成人の骨の数は206だと言うのだが。君の骨はどの骨を食べたか、順番まで全て覚えているから粉々になって原型をとどめていなかった骨があったかどうか食べきったら分かる。形が残っていることに固執する訳ではないけれど蝶形骨の蝶の羽の美しさ、肩甲骨の翼のような形に見惚れなかった訳ではないから形は残っていれば残っているほど嬉しいし、何より何処の骨か思いを巡らせることが出来て良い。


 特にお気に入りは涙骨だろうか。君の美しい瞳を支えていた涙の名を冠する骨。舐めると少し甘かった。


 後は恥骨。君の恥部の骨。少し無防備であどけない表情を見せる君の顔がこの骨に何故か結びついているのがこの骨の官能的な印象と全く違って可笑しいやらなんやらで不思議な気分だった。


 骨壺の中身は日に日に質量を減らしていた。


 君が私に溶け込んでいる。そう思うだけで温もりなんて必要としない入れ物の体が温かく感じるのだから、君は凄い。若し君の血なんて吞んだ日には体中酷く熱くなるんだろうな。もう蒸発したであろう君の血肉。君の魂と一緒に旅立ったのだ。


 じゃあ取り残された骨は何時君に逢うのだろう。一人取り残された私はまた君に会える日が来るのだろうか。


 「…じゃあ、私が連れて行けば良いじゃない」


 其れはわかりきった結末を示していた。どこかで無理矢理引き延ばしてきた結末。食む骨が無くなれば私が迷い無く選ぶだろう道。どうして引き延ばしてしまったのかも分からないくらい自然に念頭にあったこと。


 前夜、何より大切な君に杯を捧げた。骨壺にわずかに残った骨を全て砕いて杯の中に溶かし込んで飲み干した。立ち上る酒精とわずかな苦みに酔う。ついぞ受け入れられなかった君の死。さようならなんて言わないの。だって直ぐ迎えに逝くのだもの。


 夜の空に走り出す。さみしがりで、だけど、素直にそうは言えない君は屹度見つけ出されることを待っている。大丈夫、私が見つけるよ。何処までも透明な世界を駆けて、君の瞳の色した海に沈んだ。君の骨と心中する。自然と穏やかな微笑みが浮かんd


 END


ホラホラ、これが僕の骨だ、

生きてゐた時の苦労にみちた

あのけがらはしい肉を破つて、

しらじらと雨に洗はれ、

ヌツクと出た、骨の尖。

 (中原中也 「骨」)


大好きな詩です。

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