11 社交デビュー
貴族の子息子女は7歳になるときに、社交デビューすることが決まっている。私も例に漏れず、7歳の春に社交デビューのパーティーをナロウ公爵家の屋敷で催すことが決まっている。また、自力でパーティーを開催するより、ナロウ公爵家のパーティーに出た方がより多くの人と繋がれるため、同派閥の令嬢2人と、令息3人がここで社交デビューすることが決まっている。
というわけで、私も、パーティーのために、公爵令嬢教育を頑張り、招待者の名前を覚え、繋がりを持つべき人物、庇護下に入れるか見定めるべき同世代の子息子女の情報を頭に入れ込んでいる。
「お嬢様、仕立屋が参りました」
ミルトが仕立屋を連れてきた。今日は社交デビューのための衣装をあつらえることになっている。
「お嬢様、何かご希望はおありですか?」
正直よくわからないが、そんなことを馬鹿正直に言わないのは令嬢教育の賜物である。
「そうね、私の髪色に映えるものがいいわ」
なんとなく緩い注文を言っといたらいい気がする。目の色に合わせてとかいろいろあるものね。
「それでは…」
いろいろと細かいデザインをミルトや仕立屋、メイドたちが考えてくれているので、その決定を承認すればお嬢様としての仕事は終わりである。しかし、たまに意見を聞かれるのでよく聞いておかないといけない。
「それではこちらでよろしいでしょうか?」
「ええ、そのようにしてちょうだい」
結局私の社交デビューの衣装は薄い水色のオフショルダーのドレスに、白地に金の刺繍のカーディガンになることが決まった。きれいめのシンプルなデザインだが素材が高いのか値段が笑えない。こんなものを平然としてあつらえないといけないのだから恐るべし、公爵家。
ついに私の社交デビューの日がやってきた。私は朝からメイドたちに磨かれて、すでにぐったりしている。しかし、本番はこれからである。昼前、私の社交デビューパーティーが始まった。
ホールいっぱいの人・人・人。 さすがに多過ぎではという疑問は飲み込んで、私は会場へ、1歩踏み出した。
「あちらがナロウ公爵家のご令嬢ね」
「おきれいな方ですわね」
何か貴族たちが囀っている…..悪口ではないといいのだが、失敗してないよね?
そして私が壇上の父の元に到達すると、父から私の紹介が始まった。簡単に言うと、うちの娘と仲良くしてやってくれというもの。貴族的な修辞技法で飾っているが大体はそんなところである。
大きな拍手の後に、立食パーティーが始まった。ただし、私は食べられない。やってくる、招待客の挨拶を受け続けないといけないからである。
ああ~疲れた。そろそろ何か食べたい。そう思ったらミルトがさっとつまめるものを用意してくれた。私のメイドは優秀だ。
「ねえ、ミルト、これ、いつまで続くのかしら?」
「あと少しでございます」
あと少しがすごい長いやつね、わかってる。
こうして私の長い一日はほぼ挨拶回りに答えることに費やされた。
めっちゃ疲れた、お嬢様するの大変。
その後家族が私の社交デビューをお祝いしてくれた。お母様はサファイアのペンダントを、お父様からはペンを、お兄様からは花束をもらった。嬉しいね。
こうして私の社交デビューが終わった。