100 魂喰い
祝・100話!
途中から初のシュバルツ視点入れます^^
…これだけ弱ってるならいけるかも?うん。多分いける。
{おい、何をする気だ!? …まさか …ッ止めろ、駄目だ!}
「魂喰い」
ぐわっと首をもたげた闇が3体の天使を喰らった。
熱い。ヒリヒリと焼けるような熱が躯の中を侵すのをどこか遠くに感じる。ああ、これは不味い。
そう思ったときには視界はぼやけ始めていて、私の意識は奥底から突き上げるような熱に呑み込まれた。
{おい!…おい!返事をしろ! 止めろ… 逝くなッ!君は、君は私を置いて逝くのか? …いっ、嫌だ、嫌だ、よぉ、ぉ}
フフ、ごめんね。理由も詳しいことも聞いていないけど、君が天使の撲滅を望むから叶えたくなっちゃった…それが君の望みなら迷うことなんて無いのだから。
ふふっ、一寸眠たい、か、な。…おやす、み、シュ、バルツ、君。
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(シュバルツ視点)
意識を失った君から、無理矢理双子形態で体を分離して、軽い躯を抱き上げて転移する。
ヴァイスからセレナに容姿が戻った。屋敷のベットにその身を横たえる。
「治癒っ!」
ひたすら闇属性の治癒をかける。聖属性に対する耐性が比較的高いのが闇属性だ。普通は治癒の属性は水とか風だが、別に闇属性でも出来ないわけではない。
「っ! 落ち着いたか!?」
容態はひとまず安定した。
後はどれだけ体が聖属性を分解できるかだ。気が抜けてずるりとベットサイドに座り込む。
「はぁ…」
ついたため息が液体になればこの部屋を満たしきるんじゃないかと思うほど大きく息を吐く。ぐるりと振り返ると、君が視界に入る。
こうやって見ると寝顔はあどけなく、いつもの軽い口ぶりからは想像もつかないほど、神秘的な美しさを秘めているのが分かる。確かにこれは美少女だ。
「綺麗…」
乱れた前髪を手で整えてやる。その間にも身じろぎ一つしないのが死を思わせて気に食わない。早く起きてよ。いつものように莫迦な話をして、理想の謎の美少女プレイを追い求めて、一緒に笑って…
喪失感、と言うのだろうか。知らない感情が心の内からその身をもたげる。
分からない。何故私は君がいないことを悲しく思っている、の、か。悲しい?悲しいのだろうか。
失いたくない。自分にそんな感情があったのが意外だった。気が付かなかったし、意識もしなかった。
だって、君があまりにも自然に私に心を許すから。溺れるように引きずり込まれてもう出て行けない。そんな感覚が私を襲った。
無茶な魂喰いで君の体の内部は酷く傷付いている。聖属性を分解するのは肝臓が酒を分解するのに少し似ている。許容量を完全にオーバーしているのだ。完全に分解しきるには下手をすると一季節程かかる見込みだ。
早く起きて。なんて私が望んで良いとは思えない。だけど、「会いたい」、だなんて今この瞬間に一人願うことぐらいは許してほしい。
…一緒にいるときは大丈夫、だけどいなくなると一気に駄目になる。君は私にとってそういう相手。
そんな風に思って目を閉じる。ぬるりと君の体に吸い込まれて一つに戻る。少し眠ろう。眠ることのない悪魔の私だけど、ふと、そう思った。
後書き失礼します。
「100話ですよ!!!」テンションぶち上がりの作者です。
え?「節目の100話になんて話を書いてるんだ!」って?
いや何ででしょうね???