10 閑話 賢い妹
セレナの兄レーツェル視点です。
私はレーツェル・ナロウ8歳。ナロウ公爵家の長男だ。
私には妹がいる。セレナ・ナロウ6歳。母上と同じつややかな銀髪と青い瞳がよく似合うきれいな顔立ちをした子だ。
ある日、私の歴史の家庭教師に用事ができたようで、急遽、私はセレナと一緒に授業を受けることになった。
「セレナ、今日は急なことでごめんね」
「いいえお兄様、お兄様と一緒に授業を受けられて私は嬉しいですわ」
うん、セレナはいい子だ。
授業が始まってすぐに私は驚いた。授業の内容がちょうど今私が習っていた箇所とほぼ同じだったのだ。
「セレナはもうここまで教わっているのかい?」
「ええそうですわ、お兄様。」
セレナの家庭教師によると、セレナは物覚えがよく、また、自分でも本を読んで進めていくので授業の進度がとても速いそうだ。
「セレナはすごいね 歴史が好きなのかい?」
「はい、そうですわね 比較的好んでおりますわ」
その後も驚くことが続いた。セレナは教師と対等に歴史議論をしていたのだ。これまで、受動的に講義を受けているだけだった自分とずいぶん違う。
「ですからここは~だと思うのですが先生はどう思われますか?」
「ですがここは~で~だと思いませんか?」
「たしかにそうですね では、~はどのようにお考えですか?」
自分が入る余地がないほどにめまぐるしく続く会話においていかれそうになる。
思い切って質問してみた。
「先生、私は~は~だと思うのですが~と~は何が違うのでしょうか?」
先生は一瞬動きが止まったが、すぐに破顔して、私の質問に答えてくれた。それから私も交えて、活発に議論をした。
授業が終わった。いつもと同じ時間なのに、あっという間に感じるほど濃い時間だった。
「セレナ、今日はありがとう とってもためになったよ」
「お兄様のお役に立てたなら光栄ですわ 私こそお兄様の見識には驚かされました お兄様はすごいのですね」
それを聞いて、これからもすごいとセレナにいってもらえるような兄になれるようにより一層勉学に励もうと思ったのだった。
なお、セレナにとって歴史は小説のストーリーのようなものなので、オタク感覚で授業を受けていることをレーツェルは知らない。
また、完璧な令嬢という仮面が謎の美少女プレイに必要だと思っているのでほかの教育にも必死でついていっているセレナであった。
レーツェルは小説でも優秀ですが、セレナの影響で、より優秀になっていきます。