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【4】小さな瞬きたち

ボクは三角博士にココロを会わせてみる事にした。

三角博士にココロを会わせてみれば、何か分るかと思ったけど。

ココロの能力を目の当たりにした三角博士は、なんとココロに夢中になってしまった。


「ココロくんはどんな食べ物が好きなの?」


『お魚!』


「うんうん

やっぱりお魚だよね」


こんな調子で研究とは関係なさそうな話をしている。


「三角博士?

今日の予定はどの様な…」


さすがに心配になって声をかけた。


「あー、、すまんすまん

急きょ予定を変更したいんだけど…いいかな?」


「あ、はい

変更で何になりました?」


「ご覧の通り

ココロくんの能力について調査する事にしたよ

本当によく連れてきてくれた!」


「え?

ココロが役に立てますか?」


「なるとも!

ココロくんは今まさに我々がしたい…いや、

すべき事を道具なしでやってるのかもしれないからね」


「ココロが、、ですか…」


ココロを連れてきてまさかこんな事になるとは。

ボクはココロを三角博士に会わせたら、どんな顔をするか程度でしか考えてなかった。

甘かったな、もう少し慎重になるべきだったかもしれない。


「そうだ!

ココロくんを電子ブレインに会わせてみようかね」


三角博士って、電子ブレインを余り他人に見せたがらないのかと思っていたんだけど、そうでもないのかな?


ボク等は、この間行った実験場の中にある、電子ブレイン室にやって来た。

室内には、沢山の艶消しされた黒い箱が規則正しく並んでいて、その並びの美しさと余りの数の多さに圧倒される。

この黒い箱達が、電子ブレインと呼ばれるものなのだろう。

全体を引いて見ると、全ての電子ブレインは少しづつ向きが変えられており、ある方向に向けられて並べられている。


その向きの方向の先には、赤い箱があった。


あの赤い箱が三角博士の言っていた「彼女」なのだろうか?

彼女と呼ばれる電子ブレインが、全ての電子ブレインのリーダーで、最初の電子ブレインだと言っていたな。


すると、いつの間にかココロは赤い箱の前に立っていた。


『はじめましてなのです……さん』


「!?

え…?今何て…!?」


離れているせいでよく聞こえなかったけど、ココロは赤い箱を名前の様なもので呼んでいた様な気がした。


その直後、黒い箱のランプが中央の赤い箱を中心に一斉に瞬きだした。


「わぁ~

何てきれいなんだろう」


そう言いながら三角博士に目をやると、彼は驚きの表情でココロを見ていた。


少し離れた所から、箱達の小さな瞬きの様子を眺めていて、ボクはある事に気が付いた。

その光は1つ1つ見るものじゃないって事だ。


箱達は協力しあって、それぞれに付いているランプの光を使って大きな映像を作り出していた。

それはココロの呼び掛けに応えたかの様に、電子ブレイン達は小さなランプをこぞって光らせ、1つの大きな絵を作り出していた。


「ココロ、ほら見てごらん

ここから全体を見ると絵に見えるよ?」


『ホントだ!

すっごくきれいなの』


その絵は見事に色の濃さまでが表現されていた。

凄いな、電子ブレインってこんな粋な事も出来るんだ。

ボク達が気が付いたからなのか、その絵はゆるやかに動きだし映像に変わって行った。


「三角博士!

箱についているランプで映像が?」


「おぉ…何て事だ…

今まで何故気が付かなかったんだ」


三角博士も気付いていなかったらしく悔しがっていた。


箱達の作り出したランプの映像には、知らない人物が映し出されていた。

ボクには誰かわからないけど、三角博士にはわかるだろうか?


こういう演出までする電子ブレインに、ボクは1つの自立した意思がある様に見えた。


「電子ブレインってまるで生きてるみたいですよね」


「え?あぁ

生物の様に自立した思考を持っているからね

生きていると言って間違いないな」


「そうとしたら

この部屋には大勢いる事になりますね」


『ふむー?』


「よし!

それじゃ始めようかね

ココロくんいいかい?」


おかしな事を言ったかな?

ココロも首を傾げていたし、三角博士にも流されたらしい。


すぐにココロと電子ブレインとの対話が始まった。

電子ブレインが導き出した「適切な質問」に、ココロが答えると言うのだけど、機械から質問が出てくるのは驚きだ。


残念な事に質問の内容はよくわからなかった、電子ブレインの思考をココロが読み取って答えているからだ。

さすがに「うん」とか「違うよ」とかじゃ、何を聞かれてるか分からないや。


すっかり取り残されたボクに、三角博士は紅茶を入れてくれた。

三角博士の紅茶は更に甘く、やわらかい香りがした。



小一時間やり取りが続いた後、電子ブレインによるココロへの質問が終わった。


代わりに三角博士は電子ブレインの前に座り、タイプライターを叩いていた。

小気味よい音が辺りに響いている。


ともかくこれで、ココロもティータイムを取れる。


「お疲れ~!

どうだった?」


『うふふふふふー

と~ッ…ても面白かったの!』


ココロは両手をバンザイの形に上げ、笑顔で楽しさを表現して見せた。


「箱さん達の質問ってさ

いっぱいいるから大変だったんじゃない?」


『ん~ん?

赤い箱さんだけだよ?』


「そっかー

なら同時にわいわい聞かれたりはしないね」


『だって赤い箱さんしかいないのよ?』


「黒い箱さんは黙ってたの?」


『んーと

黒い箱さんもみんな同じみたいなのよ?』


「同じ?……あ!」


『そーなのーッ!』


ボクが理解した事は当たっているみたいだ。

電子ブレインはたくさんあるけど、意志を持つのはリーダーである赤い箱だけなのだろう。

確かにたくさんある電子ブレインが、それぞれ意見を言うのではなかなか考えがまとまらなそうだ。


あれ?


これって…実はすっごく機密事項なんじゃない?


だって電子ブレインって世界中が欲しがってるものらしいし、知っちゃってていいのかな?

もちろん、ここで仕入れた情報は口外するつもりがないけれど。


赤い電子ブレインの事をボクは考えた。

意志を持つことが出来たのが赤い箱1つだけなら、電子ブレインを外部に分けてあげる事は出来ない。

ならば、それを理由に断る事も出来そうだけど。


意図的に意思を持たせたのが1つだけって事も考えられるし。


それにしても、ボクが気になってるのは最初のあれだ。


「ねぇココロ

さっき挨拶で赤い箱の名前を呼んでた様に聞こえたんだけど

何て呼んでたの?」


『んー?

わたしが呼んでたの?』


ココロは首をかしげた。

あれ?ただの聞き違いだったのかな?


「よしッ!

よしよしよしッ!!」


三角博士が唐突に大きな声を上げた。


「おっ?

三角博士何かわかったんですね?」


「すごいよココロくんは!

だってココロくんのしている事はね…

おっとこうしちゃいられない!

ヤル気満点!!


すまんがまた明日続きを頼めるかな?」


「えぇ、いいですよ?」


『わかったの~!』


ココロはそう言って耳をくりんと回した。


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