【2】実験
過去に実験場行われた時の映像を、ボクは特別に見せてもらえる事になった。
中央のメーターの針は徐々に上がって行った。
そのメーター類の上には丸い窓が3つあり、その窓には実際の実験の様子が映し出されるらしい。
暫くしてメーターの針が真上を示すと、丸い窓に変化が現れた。
窓は靄に光を当てたかの様にぼんやりと光始め、徐々に光が増していった。
更にメーターの針は上がり続け、時計の2時の辺りまでになると丸い窓は激しい光を放っていた。
「そろそろ電子ブレインがみんな動き始めるよ
日めくりカレンダーみたいな数字がたくさん並んでるでしょ?」
「えぇ」
「一番左の今1になってるとこ、
これは、今1台の電子ブレインが働いてるんだ
見ててごらん」
三角博士がそう言った後にパタパタとその数字が増え始め、その数はすぐに100を越えてしまった。
「108になりましたね」
「うん
108個で1セットで、それが10セットあるんだ」
更にメーターは上がり続け、108になった隣の数字が動き始めた。
それも108になると更にその隣が動き始めていく。
「こうなると後は電子ブレイン達の頑張り次第なんだ
次は丸い窓を見ててごらん」
どうやらあの数字が全て108になるまで、メーターの針をを上げられるらしい。
「ん…?」
窓の様子が変わってきた。
激しく輝いていた窓に、極たまに黒い点が現れる様になった。
その黒い点達は、現たかと思うと一瞬のうちに消滅して行った。
「あの黒い点、気になるだろう?
キミはなんだと思う?」
「う~ん…」
「ヒントを出そうかね
この実験での成果なんだが、天体には数多く存在してると言われるものだな」
「黒い天体、、
ブラックホールとかですか?」
ボクは殆んど当てずっぽうで言ってみた。
「そう!
ブラックホールは超重力により光すら抜け出せないんだが、
他の次元に作用可能な存在は現在重力のみとされていてね」
まんまと当たってしまった、と言うより当てさせられた感を感じるなぁ。
過程はよく分からないけど、つまりこの実験場はブラックホールを人為的に作る為のものなのだな。
ボクはやっと、この施設を少し理解出来てきた気がした。
そうか・・この実験が成功したからこそ、皆笑顔でいられるのだろうな。
いつの間にか、10個ある電子ブレインの数字は全てが108になっていた。
そして、中央のメーターの針の動きもかなり緩やかになっていた。
「そろそろかなぁ?
よ~くみててね」
黒い粒の発生は頻繁に起こる様になり、その様子は画用紙に一つまみ程の砂つぶをまいたかの様だった。
「えッ!?
まさか…こ…れって…」
ボクが声を上げたその瞬間、唐突に実験が中止されてしまった。
──しかし──
その一瞬、ボクは確かに見た。
暫くボクは放心状態にも似た感覚で、残りの映像を見ていた。
この映像の最後にはこう書かれていた。
「我々に諦めると言う選択肢はない」
と、三角博士がタイミング良く声を出したので、ボクは驚いた。
「あの…三角博士」
「ちゃんと見えたかい?」
「えぇ、、あれが」
「あれが0.1ミリ外側の次元だよ」
そうだ…一瞬だったけど、その別の次元にも文明らしきものが見えた。
ボクはもう少し長く映像を見ていたいと思った。
「それにしても
なんでいきなり実験が中断されてしまったのですか?」
「そうだなぁ…
せっかくいいところだったのにね、
彼女があれ以上の実験継続は無理って判断した為なんだよ」
「彼女…?って誰ですか?」
「あぁ、、すまないね
電子ブレインのリーダーをそう呼んでるんだ」
「へぇー
電子ブレインにリーダーが居たんですか」
「彼女と呼んでいるのが最初の電子ブレインでね
まぁ…ちょっと特別なんだが…
彼女には電子ブレインの量産化も手伝ってもらっているんだよ」
「彼女…と言うとその電子ブレインは女性なんですね?」
だが、この質問に博士は答えなかった。
機械に性別を聞くのはおかしかったかな?
ボクは三角博士に今後の計画について聞いてみた。
実験が成功したなら次の段階に移行するはずだからだ。
「今後の計画はもちろん進行中だよ
電子ブレインの数も、もっともっと増やさなくてはいけない」
ただし、まだ未解決の部分もあるらしい。
それはこの次元を安定させる為、別次元にアンカーと呼ばれる存在を打ち込まないといけないそうだ。
その実験がまだであり、理論的にも一番難しいものらしい。
ボクが実験に興味を示した事を伝えると、特別に次回の実験に立ち合う事が許された。
これらは、ボクがあそこから派遣されていなければ、きっとかなわなかった事なのだろうな。
──その夜──
今日もあの地を這う様な不快な振動がやって来る。
不快な振動は夜にしかやって来ない。
そして、不快な振動がやって来る直前には、全ての明りが落とされる為に街は真っ暗になる。
ココロはその闇をとても不安がった。
「大丈夫だよ、こんな時はね」
ボクは暗闇の中、隙間から薄明かりの漏れる窓を探って開けた。
『わぁ~!星がいっぱいなの!』
暗い街のその空には普段は見ることの出来ない、たくさんの星明かりが瞬いていた。
その時ボク達の視線の先に、丁度流れ星が横切った。
「流れ星み~つけた!」
『あッ…!間に合わなかったの!』
「願い事?」
『うん』
──星に願いを──
『あッ!また光った!』
そう言ってココロが空を指差した。
「本当だ!
今のはきれいだったなぁ」
ココロを見ると、両手を口の前にそろえて笑っていた。
「ん?間に合った?」
『うん!』
「何てお願いしたの?」
『うんとね
あなたとずっと一緒にいられますようにって』
「あ!ボクと同じだ」
そう言うと、ココロはにっこりと微笑んでくれた。
分かり切った事だったけど、ボクにとっては貴重な「気持ちを確認する手段」だった。
ボクは星明かりに照らされ、ぼんやりと輝るコバルトの六弦に気が付いた。
コバルトとは、六弦のネックの先にそう書いてあった為、最近になってそう呼ぶことにした。
それがこの楽器の名前なのか、メーカーの名前かはわからない。
このコバルトは不思議な楽器だ、ココロと出会った頃に偶然手に入れたもので、今まで見たこともない青く美しいなりをしていた。
それより不思議だったのは、楽器を手にした事がないボクが、奏でる事が出来た事だ。
ボクがやさしくコバルトを奏でると、ココロはそれに応えて歌ってくれた。
あぁ、ずっとこのまま一緒にいれるといいな。
──どうしてだろう──
ずっと居られるはずなのに、そう思ってしまうのは。