目覚めない白雪姫
白雪姫は王子様のキスで目覚めるけど、彼女に何度キスしても目覚めない。
私は今日も毒リンゴを持って、白雪姫の所にやってくる。
醜い老婆はすでに亡き者にした。
あとは白雪姫にキスをするだけで目覚めるはずだ。
「美しいよ、白雪姫」
そっと口づけ。
しかし彼女は目覚めない。
これは毒リンゴを配っていた老婆を間違っていたのか?
私は何個目かに分からない毒リンゴを捨てると、白雪姫に抱き着く。
「貴女はどの毒リンゴで眠ったのですか?」
彼女は目覚めない。
何年か前に彼女は毒リンゴを食べた。
そして眠りについた。
王子である私は、姫を目覚めさせるために努力してきた。
毒リンゴを売っている老婆を亡き者にし、毒リンゴをもって彼女の棺の所へ向かう。
そしてキスをして、目を覚ますのを待つ。
彼女は年を取ることなく、美しいまま眠っている。
私の想いはいつ届くのだろう?
「ああ、また毒リンゴを探さないと」
彼女の眠る棺の下には、朽ち果てた無数のリンゴ。
悪臭が漂うが、私は気にしない。
彼女が目覚めるのが大事なのだ。
「お兄さん、リンゴを買っていかないかい?」
道を歩けば、毒リンゴを持った老婆に声をかけられる。
今度こそ、白雪姫を眠らせた老婆だろう。
「いいだろう。全部買ってやる」
「気前のいいお客だねえ。全部で――」
「ああ、私の家に来てくれないかい? 姫が待っているのだ」
老婆は一瞬ためらった。
でもすぐに破顔すると承諾する。
今度こそ、姫を眠らせた老婆だ。
私は家の中に老婆を招いた。
耳障りな老婆の悲鳴。
そこには朽ちた老婆の死体。
老婆は逃げようとする。
私は老婆の髪の毛を掴むと、首を絞める。
やがて息絶えた老婆から、リンゴを奪った。
「今度こそ、姫を目覚めさせる」
リンゴを齧りながら、姫の元へ向かう。
姫は眠ったままだ。
「ああ、美しい姫。どうしたら目覚めるのですか」
リンゴを捨てて、姫にキスをする。
しかし姫は目覚めない。
今度の老婆も毒リンゴを売っていないらしい。
いつになったら、彼女は目覚める?
私はまた老婆を探すべく、街へ繰り出す。
今はリンゴ売りの老婆であふれ返っていた。
何かの祭りだった気がするが、そんなの関係ない。
私は私の姫を目覚めさせるだけだ。
「――ちょっと良いですか?」
派手な身なりの警察に声をかけられる。
なんだ? 私が何かしたか?
「ここでハロウィンで仮装した老婆が、行方不明になる事件が多発しているのですが」
「知りませんね。私だって王子の恰好をしているでしょう?」
姫を目覚めさせなければ。
私は警察のやり取りを躱しながら言う。
全く。
私の姫を目覚めさせないといけないのに。
私は今日も徘徊する。
ハロウィンは絶好のチャンス。
姫を目覚めさせるためなら、狂った王子にでもなろう。
私は今日も夜の街を歩きだす。




