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隠している事

朝日が差し込む部屋で学校に行く支度をしていると、部屋をノックされた。


「あの、おはようございます」

「お、おはよう」


昨日の事があり少し気まずかった。

結菜も少し元気がなかった。


「ご飯作ってあるので食べてくださいね」

「ありがとう」

「先に学校に行ってますね」


玄関が閉まる音が聞こえた。

泣いた後の顔を見られたから落ち込んでいるのかな…そう思ったまま部屋を出た。

テーブルの上には、目玉焼きとベーコンが置いてあった。

俺はテーブルにある料理を食べて、学校に向かった。


席に着くと優がすぐに来た。


「おっす樹!」

「おう」

「なんか元気無くね?また風邪か?」

「風邪なんかひいてねぇよ」

「ま、話なら聞くぜ」


そう言って、優は席に戻った。

俺は読書をしようとしていると隣に綾ちゃんが来た。


「おはよう」

「おう」

「なんか元気ないね」

「別にそんなことは無いよ」

「ならいいけど」


また俺は本を読み始めた。

みんな元気ないのが分かるのか...と思いながら本を読んでいた。

チャイムが鳴ったが、結菜はいなかった。

学校に行くと言っていたのにどうしたのだろうか...

授業中もその事でいっぱいだった。


「ここの問題を、樹解いてみろ」

「いっくん?」

「樹!」

「え?あ、はい」


俺は授業中も結菜が休みの事を考えてぼーっとしていた。


昼休み、俺は担任にお願いして帰らせてもらう事にした。

家に向かう前に、結菜と出会った公園に向かった。

公園に着き、辺りを見渡したが結菜の姿は無かった。

他に行く宛てもなく俺は家に帰った。

ガチャッ


「ただいま」

「あ、おかえりなさい」


俺は下を向いて靴を脱いでいたら、声が聞こえた。

声の方に顔を上げると·····

そこには結菜が立っていた。


「え?何してるの?」

「学校行ったけど、体調悪かったから帰ってきました」

「そうだったのか⋯」

「さっきまで寝ていたので楽にはなりましたよ」

「心配で早退してきたよ」

「心配かけてごめんなさい」

「いいよ、ゆっくり休んで」

「ありがとうございます」


話を終えて、結菜は部屋に戻った。

俺はソファーに座り体調悪かっただけなら良かったと安心した。

昨日の事で何かあったら⋯と考えていたが、その必要は無かったみたいだ。

俺は安心したからか、眠たくなってソファーに横になり眠ってしまった。


目が覚めると隣に結菜が居た。

俺はびっくりして飛び起きた。


「沢山寝れましたか?」

「お、おう」

「それは良かったです」


結菜は笑顔でそう言ってキッチンに向かった。

俺は可愛いなぁとずっと見てしまった。

そして目が合い、俺は頬を赤らめて目を逸らした。

恥ずかしがっている俺を見て、結菜は笑っていた。

俺はソファーにうつ伏せになってスマホを弄っていた。


「今日の夜ご飯なんですけど...」

「うん?」

「ハンバーグでもいいですか?」

「いいけど、材料あったっけ?」

「無いんですよ⋯」

「一緒に買いに行こうか」

「は、はい」


ハンバーグを作ろうと思ったが、材料が無かったため2人で買いに行った。

いつもは俺一人で行くのに今日は何故か一緒に行きたい気分だった。

俺が一緒に行こうと言うから結菜の返事もびっくりして裏返った。

2人は準備をして買い物に出かけた。


「ハンバーグを作るんだよね」

「はい」

「冷蔵庫に何も無いから他の物も買おうか」

「ですが、お金が少ないので買えるかどうか...」

「お金はあるから大丈夫だよ」

「いいんですか?」

「俺の家の物だからね」

「ありがとうございます」


歩きながら会話をしていると、スーパーに着いた。

結菜はメモを見ながら必要な物を探した。

一緒に居ても邪魔になるから俺は他に必要な物を探しに向かった。

探していると声をかけられた。


「あれ?いっくん?」

「お、おう」

「買い物に来るなんて珍しいね」

「家に何も無くてね…はは」

「いつも宅配だもんね」

「そんなことも無いよ!」

「えぇ〜?ほんと?」

「ほんとだよ」


そんな馬鹿げた会話をしてその場を後にした。

会計をする為に並んでいると結菜が来た。

するとその後ろに綾ちゃんがいた。


「とりあえず必要な物は全て揃いました」

「ここで話すのはちょっと…」

「どうしてでしょうか」

「色々とまずいことが…」


結菜は後ろに居る綾ちゃんにも聞こえるくらいの声で話しかけてきた。


「あのぉ、必要な物って何?」

「はい?」

「綾ちゃん、聞かなかった事にして欲しい」

「どうしようかなぁ」

「綾さんは転校してきた子ですよね」

「そうです」

「それではこうしましょう」


結菜はそう言って会計を終えた。



・・・・・



なぜこうなった⋯

気がつけば俺の家に結菜と綾ちゃんが居る。

何故なら、会計前に結菜と綾ちゃんが仲良くなり、結菜の提案が通ってしまったのだ。


「綾さんも家で晩御飯を食べましょう!」

「え!?結菜ちゃんの家に行けるの!」

「はい!」

「いや、待て待て」

「なんでしょう」

「まぁいいや⋯なんでもない」


どうしたらこんな考えになるのか俺には不思議だった。


「着きました」

「え、ここって⋯」

「俺の家だ」

「もしかして、2人って⋯」

「一緒に住んでます!」

「えぇぇ!!」

「びっくりするよね⋯」

「う、うん」

「まぁ、この話は後にしてご飯作りましょう」

「そうだね」


俺も料理を手伝おうとしたが、断られてしまった。

キッチンには2人が立っていた。


「何を作る予定なの?」

「ハンバーグを作ろうかと思ってました」

「ハンバーグいいね」

「それでは作りましょうか」

「はーい」


2人は楽しそうに作っていた。

その間俺はソファーに座ってスマホを弄っていた。

結菜はいつも作っているからわかるが、綾ちゃんは作れるのだろうか⋯

そんな事を考えていると、綾ちゃんに呼ばれた。


「いっくん」

「どうした?」

「もう少しで出来上がるから、テーブルとか拭いてくれる?」

「わかった」

「よろしくね〜」


俺はソファーから立ち上がり、テーブルの上にある布巾で拭き、箸も用意した。

ほとんどソファーでスマホを弄りながら2人を眺めているだけだったからか、やっと仕事が来たと喜んでしまった。

ハンバーグとご飯と味噌汁がテーブルに3人分並んだ。


「おっ、めっちゃ美味そう」

「頑張って作ったんだから味わって食べてよね」

「冷めてしまう前にいただきましょう」

「いただきます」


3人揃っていただきますを言い、食べ始めた。


「美味い!」


俺は食べた瞬間にこの言葉が出た。

お腹が空いていたのもあって、直ぐに食べ終わってしまった。

俺はまだ食べている2人を待っていた。


「食べ終わるの早くない?」

「お腹空いてたからな」

「早いですよね」

「そんな事ないって」


3人で笑いながら話をしていた。

それから少しして2人が食べ終わり、キッチンに皿を運んだ。


「皿洗いは俺がするよ」

「皿割らないでよ〜」

「いつも洗ってるから割らないわ」


綾ちゃんはバカにしつつソファーでくつろいでいた。

結菜は食べ終わると直ぐに部屋に行ってしまった為、今は俺と綾ちゃんしかいない。

とても気まずい⋯


「よし、終わった〜」

「おつかれ〜」


皿を洗い終わった俺はテーブルの椅子に座った。

座って直ぐに綾ちゃんに聞かれた。


「結菜ちゃんと一緒に暮らしてるんだね」

「そ、そうだけど、どうかした?」

「いや〜前にさ、家に行っていい?って聞いた時に断った理由がわかったからさ〜」

「周りには言えないけどな」

「そうだね〜」


綾ちゃんはどこか寂しそうに話していた。

俺はテーブルからソファーの方に行き、隣に座った。

そこからは沈黙が続いた。

気まずくなった俺は口を開いた。


「そろそろお風呂に入るかな」

「もう入るの?早くない?」

「まぁいつもはもうちょい遅いけど⋯」

「それじゃ、もうちょい話そう」

「お、おう」


綾ちゃんは帰りたくないかのように話そうとしてきた。

俺は色々聞かれても困る事しかないと思っていた。

しかし、綾ちゃんから出た言葉は意外なものだった。


「あのねぇ、うちね、好きな人がいるの」


そう言って綾ちゃんは話を続けた。


「その人とはね、小さい頃からずっと一緒だったんだけど、高校で離れちゃったの⋯⋯

でも、転校してきたら再会することが出来たの」


俺は綾ちゃんの話を聞いていて不思議と自分の事が浮かんだ。

しかし、それは俺の思い込みに過ぎなかった。

綾ちゃんは続けて話をした。


「その人はね、背が高くて、痩せてて、とても優しい人なの。でも⋯⋯」


綾ちゃんはそこで話すことをやめた。

どうしたのだろうと思い、綾ちゃんの方を見ると涙を流していた。


「綾ちゃん⋯どうして泣いてるの」


俺はびっくりして聞いてしまった。

すると綾ちゃんは、俺に泣きついてきた。


「少しだけこうしてていい?」

「い、いいけど⋯」


俺は戸惑いを隠せなかったが、どうする事も出来ない。

何があったかは聞かないでおく事にした。


「ごめんね⋯私⋯」

「ん?」


泣いているのと、服に顔を埋めているのもあり、なんと言ったかは分からなかった。

少しして綾ちゃんは落ち着いたようで俺の膝を枕にして寝ていた。

俺は動こうにも動けずにいた。

その時、結菜の部屋の扉が開いた。

俺は開いた扉の方を見た。


「すみません、課題やってました」

「いいよ」

「寝てしまったのですか?」

「このまま寝ちゃった」

「仲良いんですね」

「そんな事ないけどな」


結菜と話をしていると、綾ちゃんが起きた。

俺と結菜の笑い声を聞いて目が覚めたようだ。


「あっ、ごめんいっくん」

「いいよ」

「寝ちゃってた〜」

「ぐっすりだったな」

「えへへ」


寝起きでふにゃふにゃしてる綾ちゃんが可愛く見えた。

目は覚めているはずなのに、俺の膝から身体を起こそうとしない。

これをずっと結菜見られているのは、さすがに恥ずかしかった。


「あのぉ、綾ちゃん⋯」

「うわぁ、ごめんごめん」


俺が言おうとした事わかったようで、綾ちゃんは顔を真っ赤にして身体を起こした。

もう夜も遅い為、1人で帰らせる訳にもいかず、綾ちゃんを泊めることにした。

まだみんなお風呂に入っていないので順番に入ってもらう事にした。


「では、私が最初に入りますね」

「2番目は私ね〜」

「はいはい」


結菜がお風呂に向かった。

また綾ちゃんと2人になったが、何も話さずスマホを弄っていた。


「俺ちょっと部屋行くね」

「わかった」


お風呂に入るまでの間、俺は部屋にこもった。

俺も部屋でゲームをする事にした。

しばらくすると、部屋をノックされた。

どうやら2人とも上がったみたいだった。


「田端くんいいですよ」

「わかった」

「あの、私と綾さんでコンビニに行ってくるので、ゆっくり入ってていいですので」

「気をつけてな」

「何か欲しいものありますか?」

「飲み物が欲しいかな」

「分かりました」

「お金あるか?」

「ありますよ」

「うちもいるから大丈夫だって」

「そうだな」


結菜に呼ばれたので俺はお風呂に向かった。

ゆっくり入ってと言われたが、いつもシャワーだけで済ませる俺はどうしようと考えていた。

あの2人だけで行かせて大丈夫だったのだろうか⋯⋯

俺は心配になり、いつも通りシャワーだけにして、コンビニに向かった。

玄関を出ると、楽しそうに会話しながら戻ってくる2人が見えた。

俺はそれを見て、家に戻った。


「戻りました」

「ただいまぁ〜」

「おかえり」


2人はリビングにいる俺を見てびっくりしていた。


「もう上がったのですか?」

「ゆっくり入ってて良かったのに〜」

「いつも通りにしただけだ」


2人はクスクスと笑いながら、俺に飲み物を渡して結菜の部屋に行った。

俺ももう寝る事にした。

結菜と綾ちゃんが1日であそこまで仲良くなるのは意外だった。

結菜も気が楽だろうと思いながら俺は目を瞑った。


こうして1日が終わった。

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