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再会

カーテンから眩しい光が差し込んでいて、気づけば朝だった。

昨日の夜の事もあり、寝たのは朝方の4時だった。

寝た気がしなかったが、部屋で学校の準備をしていた。


「ピーンポーン」


家のインターホンが鳴った。

誰だろうと思いながら、画面を見た。

そこには見たことの無い見知らぬ少女が立っていた。


「どちら様ですか?」

「浅間茉莉奈と言います」

「浅間?……」


考えていると、部屋が開いた。


「私の妹です」

「お姉ちゃん!ここに居たんだね」

「どうしてここに来たの?」

「お姉ちゃんとはGPS共有してるでしょ?それでわかったの」

「でも、私切ってるはずだよ」

「ふふ〜ん。内緒」


結菜の妹はそう言って居なくなった。

時計を見ると7時30分になっていた。

俺はいつも朝ごはんを食べないで学校へ行っていた。


「朝ご飯食べないのですか?」

「食べないよ」

「では、明日からは私が朝ご飯を作りますね!」


結菜はそう言い残して部屋に戻った。

学校に行く時は別々に行こうと話していた為、俺は先に出た。

家から学校までは15分くらいで着くが、俺は図書室で勉強をする為早く行っていた。

図書室に着きノートを開いた時に声をかけられた。


「あ、あの...」

「はい?」

「隣いいですか?」


声をかけてきたのは昨日会ったばかりの綾ちゃんだった。


「どうしてここにいるの?」

「連絡しようと思ったんだけど、なんか言い出せなくて...」

「あっちの学校は?」

「色々問題があって辞めてきた。それで今日からこっちに来たの」

「そうなのか。今日からまたよろしくな!」

「うん!」


綾ちゃんはそう言って本を選びに行った。

昨日休んだ分遅れてしまった為、俺は優に授業の写真を貰っていた。

それを見ながらノートに写し、大事な所にはチェックをしてまとめていた。

時計を見ると8時15分になっていて、慌てて教室に向かった。

俺の学校は8時20分からHRホームルームがある。


「樹、遅かったな」

「図書室でノートまとめてたらこんな時間だった」

「もう少しで遅刻だったな」

「危なかったわ」


席に着くと同時に担任が入ってきた。


「まず初めに転入生を紹介する」


担任の後ろに着いてきたのは綾ちゃんだった。

俺は図書室で聞いていたからなんとも思わなかった。

綾ちゃんは自己紹介をした。


「有栖川学園から転校してきました。紫宮綾です。よろしくお願いします」


全員拍手をして迎え入れた。

席は俺の隣が空いていて、綾ちゃんは座った。


「緊張したぁ」

「おつかれ」


HRも終わり、教室は騒がしくなった。

転校生に興味津々な陽キャ達はすぐに綾ちゃんの所に近寄った。


「紫宮さんってお嬢様学校からなんで来たの?」

「好きな物とかあるの?」

「服に興味ある?」


女子達の質問攻めにあっている綾ちゃんは呆れた顔で俺の方を見た。

綾ちゃんは昔から、沢山の人に話しかけられることが苦手だった。

それを知っていた俺は止めようと思ったが、既に机の周りはたくさんの人で埋まっていた。

俺は諦め、顔を机につけて寝ようとしていた。


「おいおい、隣に可愛い子が来たのに無視か?」

「可愛い子ねえ」

「なんだよその反応...まぁいいけどよ」


優はそう言い残して席に戻った。




放課後になり、俺は結菜に伝える事があって席に向かった。

机の上に1枚の紙切れを置いて、俺は廊下に出た。

その紙切れには、「廊下に来てくれる?」とだけ書いた。

そのメモを見た結菜も続いて廊下に出る。


「買い物してから帰るから何か欲しいものある?」

「それなら一緒に買い物しますよ」

「実は、綾ちゃんに一緒に帰ろって言われててさ、帰り遅くなると思うんだよね」

「もうそんなに仲良くなったのですか?」

「あ、まだ言ってなかったね。実は幼馴染で小さい頃からよく遊んでたんだよ」

「そうだったんですね。先に帰って夜ご飯の準備しておきますね」

「ありがとう」


俺らは話を終えて別々に教室に戻った。


席に座ると直ぐに綾ちゃんが来た。


「ねぇ、今からカラオケ行かない?」

「今日買い物する分のお金しかないから無理」

「えー...行きたいのに...」

「また後で行こう」

「それじゃ、いっくんの家に行っていい?」

「一緒に帰るだけな」


帰る支度をしながら言うと、綾ちゃんは寂しそうにしていた。

久しぶりに会えたから長く居たいのだろうと思ったが、俺の家には結菜がいる。

さすがにバレるわけにはいかないと拒否した。


帰り道2人で昔の事を話しながら歩いていた。

すると、前を歩いていたクラスメイトの荒木と安田が話しかけてきた。


「え、2人で帰ってるの!?」

「なんで田端なんかと帰ってんだよ」

「俺らとカラオケ行こうぜ」


陽キャの2人は綾ちゃんが俺と帰っているのが気に食わなかったみたいだ。

カラオケという単語に少し反応した綾ちゃんだったが、ずっと黙ったままだった。


「2人でカラオケにでも行ってこいよ。」

「は?田端になんか言ってねえよ」

「調子乗んなよ」


2人はキレ気味で帰って行った。

陰キャの俺が可愛い子といるだけいつもこうなる。

陽キャ怖いなあと思っていると隣から声がした。


「いっくん、なんかごめんね」

「綾ちゃんが謝る必要ないよ」


しばらく2人は無言のまま歩いていた。

買い物をするスーパーまではまだ距離がある。


「てか、家はどこなんだ?」


俺は気になって聞いた。


「おばあちゃん家だよ」

「そうか、おばあちゃん家はこっちにあるんだもんな」

「おばあちゃん優しいから」

「昔から優しかったもんな」


そんな話をしているとスーパーに着いた。

俺は結菜に言われた物とちょっとした物を買った。

綾ちゃんはおばあちゃんに電話をして必要なものを聞いて買っていた。


「いっくんの買ってる物なんか主婦みたいだね」

「うるさいなあ」

「一人暮らしだと買う物は主婦みたいになるのかな」


綾ちゃんは笑いながら言ってきた。

普段はこんな買い物をしないが、言えるわけもない。

スーパーを出た2人は十字路で別々に帰った。

家に着くまでの間俺は考え事をしていた。


「俺は結菜との事をいつ切り出せばいいんだ」

「でも、学校で知れ渡って面倒事になるのも嫌だなぁ」

「どうしたらいいんだ」


そんなことを考えていると家の目の前にいた。

暗い顔をしたまま家に入った。

玄関を開けると声がした。


「おかえりなさい」


普段は一人暮らしだから、帰ってきてからただいまということもない。

そのせいでただいまと言えずにいた。

俺は恥ずかしくなり、何故か頭を下げて買い物袋を置いて、部屋に急いだ。

結菜は首を傾げて、キッチンに向かった。


部屋に入った俺は⋯

ベットに倒れ込んだ。


学校にいた時は普通に話していたはずなのに⋯

帰り道に考えなければ話せたはずなのに⋯


俺は着替えしながらまた考えてしまった。

着替えを終える頃に部屋の外から声がした。


「田端くん、ご飯出来ましたよ」

「今行くね」


俺は急いで部屋を出た。

結菜に頼まれて買ってきた物でできたのは、青椒肉絲だった。


「うお!めっちゃ美味しそうじゃん!」

「頑張って作りました」


いただきますと言って、俺は一口食べた。

今まで食べた中で1番とは言わないが、そのくらい美味しかった。

俺は直ぐに食べ終わってしまった…

無くなった皿を見て結菜が話しかけた。


「あの、沢山作ったのでおかわりしますか?」

「良いんですか!」

「良いですよ!」


おかわりをする為に俺はキッチンに向かった。

結菜はゆっくり食べていた。

おかわりを持って俺は席に戻った。

何度食べても美味しかった。


「ごちそうさまでした」


2人で言った後に皿を流し台に運んだ。

皿洗いは俺がやると言っていたから、結菜はソファーに座ってスマホを見ていた。

俺は皿を洗いながらまた考え事をしてしまった。

結菜は何か話しかけていたようだったが、俺は反応しなかった。

変に思った結菜は、皿を洗っている俺の横にいた。


「田端くん?大丈夫?」

「ん?大丈夫だよ」

「皿洗うの変わろうか?」

「あと2枚だから俺がやるよ」


安心したようで結菜はソファーに戻った。

きっと俺は暗い顔をしていたのだろう。それで心配になったのかもしれないなぁと思って、結菜の方を見ると目が合った。

俺はドキッとして目を逸らした。


俺は、皿を洗い終わり、ソファーに座った。

隣に座る結菜はスマホを見ていたのをやめて話しかけてきた。


「あの…帰ってきた時どうしてあんなに暗い顔してたんですか?」

「いや…まぁ色々考え事しててさ…」

「そうなんですね…」

「恥ずかしいなぁって思って部屋に行っちゃったけど……」

「色々考えることはありますよね そんな時は私も頼ってくださいね」

「ありがとう」


そう言われたが、俺が悩ませているのは結菜との事だ。

その為、言い出すにも言えなかった。

そんな事を考えるとまた暗い顔になってしまう。

明るい事を考えようと俺は必死だった。

だが、好きな事を考えても、勉強の事を考えても、浮かんでくるのは全て結菜との事なのだ。

どうしようもないと思った俺はそのままお風呂に向かった。


「お風呂入ってくるよ」

「行ってらっしゃい」


いつも通り笑顔で送る君はなんとも思ってないのだろうか...

それとも、こういう状況が慣れているのだろうか...

どちらにしても、陰キャと陽キャでは生きてる次元が違うのだ。

お風呂から上がりリビングに戻ると、誰も居なかった。

結菜は部屋に行ったらしく、伝えに行くと扉の前で俺は止まった。

彼女の部屋からすすり泣く声が聞こえた。

俺はどうしたらいいかわからなくなり、その場から動けなかった。

すると、ガチャッと扉が開いた。


「うわっ」

「きゃっ」


2人は同時に驚きしりもちをついた。

結菜の目は赤くなっていた。

さっき泣いていたからだろう。


「お風呂いいよ」

「分かりました」


2人はそう交わして終わった。

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