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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ウェディングプランナーですが、担当の披露宴が修羅場と化しました……

作者: 家具付

短編ハッピーエンドです! ウェディングプランナーに関しては捏造満載ですので、現実とは違います!! 合言葉はご都合主義のふわっとさくっと!!


「どれもこれも安っぽくってたまらないわ! もっといいドレスはないの!!」


その日サニーは、自分の担当するお客様のご令嬢と、ウェディングドレスを選んでいた。

最初は色々なドレスがある事に目を輝かせていたご令嬢は、しかし、試着に試着を重ねた結果、サニーに大声で文句を言い放ったのである。

サニーはある意味多少は慣れていたので、そんなご立腹の令嬢に対して、穏やかに説明をした。


「お客様のご予算の中に合わせると、どうしてものこの部屋のドレスが最上位になりまして……お気に召さないのであれば、予算を変える事を検討していただけるのでありましたら、別の部屋にもあります、ドレスをご案内できるのですが……」


「あんな大金を支払っているのに、まだ予算に合わないっていうわけ! おかしすぎるわ!! 上の者を呼んでちょうだい!! 私は貴族なのよ!!」


サニーはこれはどうしたものか、と少し考えた。このご令嬢は確かに貴族のお嬢様である。

しかしながら、何から何まで特注の事が多い貴族が、こう言った店を利用するだけでもう、どれくらいの懐事情なのか察する事は出来たのだ。

そう、ここは結婚式専門の店である。

割合歴史の浅い専門店で、サニーの祖母の時代に執り行われた、王族の結婚式に庶民も貴族も憧れて、一大結婚ブームになった際に、祖父母が立ち上げた専門店でもあった。

あの当時の王族の結婚式は、まだ王国の財政がとても豊かだったから、それはもう華やかに派手にきんきらきんに、といった具合で、あの当時に誰もが神殿で結婚式を執り行い、披露宴で招待客を感動させ、という事に対して夢を見た時代なのだ。

その時代に、神殿と契約を結び、結婚式会場も披露宴会場も確保し、結婚式の目玉ともいえるウェディングドレスを大量に用意し、料理も引き出物も選べると言った、画期的なシステムを作り上げた祖父母の実力により、この専門店は相当なブランドとなったのだ。

この専門店で結婚式を用意したというだけで、庶民なら一目置かれるし、うらやましがられるくらいなのだ。

そして、何から何まで特注で用意するという、貴族的金銭の余裕はないけれども、お祝いをしたいという下位貴族から中位貴族の間でも、この専門店は大人気となり、着実に儲かっているのである。

専門店の顧客として、上は中位貴族、下は庶民を対象にしているため、どうしてもドレスやその他もろもろはそれなりの質になるわけで、サニーが今このご令嬢に案内しているのは、中位貴族のレベルの、この店でも結構質のいいドレスたちなのである。

それを安っぽいと言われても、困ってしまうわけである。

サニーからすれば、いや、あなたの予算に合わせるとこうなるのですけれども、という感じだ。

しかしご令嬢は激昂しているし、上の者を出さなければおさまらないだろう。

そういうわけで、サニーは速やかに上司である従姉を呼んだ。

従姉のエリーは速やかに、ご令嬢の要望を聞きだし、怒り狂うのをなだめ、なんとか着地点を見つけた様子である。

祖父母が立ち上げた専門店を引き継いだのが、伯父夫婦なので、従姉の方が上司なのである。

ついでにサニーは、数年前に婚約破棄のどったばたが起きたため、独身でこの専門店で働く身の上でもあった。

話を元に戻すと、納得したのか何なのか、先ほどよりは落ち着いた様子でご令嬢は帰っていき、エリーが疲れた声でこう言った。


「サニー、なかなか厄介なお嬢様だったわ。何とか、予算を変えなくちゃ他のドレスは用意できないって事を説明して……あなたも説明しただろうけれど……結果、婚約者と相談するって事で落ち着いたの。まあ、うちが持っている最上位ドレスは、公爵級のお金持ちが用意した物もあるって話したのがてきめんに聞いたみたいね」


「訳ありドレスなんですけどね……」


「それを言っちゃいけないわ。結婚式の前に妊娠が発覚して、式が出来ないってなってこっちまで流れてきたのとか、あの部屋のドレスは訳あり多いけど、みんな幸せな訳ありでこっちまで来ているから、呪われているわけじゃないし」


「そうですよね。婚約破棄して流れてきたドレスはないですもんね」


「そうそう。いつも面倒なお客様の対応ありがとうね、サニー」


「いえいえ、ここにはお世話になってますし、多分私の運が悪いだけなので、エリーさんのせいじゃないですよ」


そんなやり取りを穏やかに行い、エリーは自分の担当するお客様が来店する時間なので、颯爽と受付の方に歩いて行った。

いつ見ても素敵な女性である。

それを見送って、サニーは一度、あの部屋のドレスの確認をしなくちゃな、と仕事を見つけて、この店の持つ最上位ドレスの確認作業に移ったのであった。





ちょっと待ってほしい。サニーはあくる日、やってきたお嬢様が連れてきた男性にめまいがいそうになっていた。

何故か。答えは簡単だ。その男性が、王国でも屈指の財源を持っていると言われている、とある公爵家のご令息だったからである。

この公爵家の血筋の人間は、青みのある銀髪をしているため、一見して身分を察する事が出来るのだ。

しかし嫡男ではないだろう。嫡男の結婚式に、結婚式専門店を使う理由がわからない。

そんな混乱をしたサニーだが、ご令嬢は幸せそうに男性と腕を組み、これ見よがしに言ってくる。


「彼が、いくらでもドレスを選んでいいって言ったわ! 昨日見せていただけなかったドレス、見せていただけるのですよね!」


「かしこまりました」


予算が大丈夫なら見せてもいいだろう。サニーはそう判断し、昨日は案内しなかった最上位ドレスが何枚もトルソーにかかっている部屋へ、彼女たちを案内したのであった。

作成費用としては、公爵家の結婚式に使われるだけのものである、と知らせていたため、安っぽいという事は言われなかったし、数多の金糸銀糸にビーズに水晶、ガラス、数多の宝石に純白のレース……この部屋のドレスは夢のような物ばかりで、点検もしたため問題のあるドレスはない。

そんな中をご令嬢は積極的に動き回り、それを男性は目を細めて見ている。


「決めましたわ、これにします!」


そして、三時間ほど試着を重ねた結果、ご令嬢が選んだドレスは、ご令嬢にとってはかなりウエストのきつい、今でぎりぎり入るかどうかといった具合の、しかし豪華なドレスだった。


「それが一番君に似合っているよ」


男性も文句はない様子で、さっそくサニーはドレスを予約した。

ちなみに費用がかなり増えるのは、もしもの時の修繕費用がバカにならないからである。


「これ位費用が増えますが、よろしいですか?」


「これ位ならなんて事はないさ」


男性の方が頷き、うっとりとご令嬢が彼を見つめる。

よし、決定。サニーはドレスも決まったため、後はお料理のコースをどうするかなどを決めなければな、とまた仕事の事を考えたのであった。





結婚式の準備は滞りなく行われ、いよいよ明後日が結婚式である。

ちなみに明日は貴族学校の卒業式で、卒業と同時に結婚を選ぶ生徒も多いため、当日と翌日はてんてこ舞いになる事も多い。

サニーは他の担当の人の補佐に回ったり、従姉のフォローに回ったりと忙しなく動きまわり……とんでもない事を知らされたのだ。

それも担当する結婚式の当日の朝に、である。


「え、花嫁を入れ替える!?」


早朝に出勤するや否や、店の前に待ち構えていた言伝の使用人に聞かされたサニーは、絶句した。


「いったい何があったんですか……!?」


式のスピーチやその他もろもろの調整が必要になる。どれくらい修正がかけられるだろう!? サニーの頭はフル回転した。

言伝の使用人は、言いにくそうに言う。


「実を言いますと……花婿が花嫁の姉と結ばれ……そちらと結婚式を行うという事になりまして……」


「何がどうしてそんな事に……」


「昨日の卒業式で、騒ぎがおきまして……花嫁が姉をいじめていたという事がわかり……そんな相手と結婚は出来ないという大騒ぎが起き……その、花嫁を変えての式を行う事を当主様が決めたので……」


あまり詳しい事は、見ていないのでわからないと前置きして、使用人が言ったのは、ここの所巷で流行の恋愛小説か? と言いたくなる中身である。

卒業式のパーティで、異母姉をいじめていた事が分かった花嫁が、婚約を破棄されたのだとか。

しかし家同士の結婚式であるため、式をなかった事にはできないゆえに、姉と花婿の式が決定したとか。


「……急ぎ調整を行いますが、その分金額は跳ね上がりますとお伝えください」


「かしこまりました」


言伝の使用人はそう言って頭を下げ、サニーは大急ぎでウェルカムボードだのなんだのや、式のスピーチをする専門職の人やらに連絡を回し、何とか取り繕えるところは、取り繕ったのであった。




「気に入らないわ! 他のドレスを用意して!! センスがないったらありゃしないわ!!」


あのご令嬢はまだ理性的だったな、とサニーは投げつけられた花瓶をぎりぎりで受け止めてそう思った。

花嫁控室に来た、花嫁の異母姉は、本日の主役である。これからは花嫁と称する事にする。

彼女は、異母妹の選んだドレスを見て、鼻に皺を寄せて嫌がり、今から式を始めるというのに、他のドレスがいいといちゃもんをつけ始めたのである。

これはどうしようもない。サニーは控室にいる、彼女の両親にも言った。


「申し訳ありませんが、当日にこのような連絡が入ったため、今からドレスを緊急で変える事は難しいのです」


「それを何とかするのがお前たちの仕事だろう!」


「それも出来ないんですか? 可愛いシャーラの結婚式なのに、シャーラの好みのドレスが着られないなんておかしいわ!!」


これどうしよう。サニーは考えたのちに、仕方がないとこう決めた。


「では、今からドレスのある部屋に案内いたします。ドレスのキャンセル料に新たなレンタル料などもかかりますがよろしいですか?」


「大丈夫に決まっている! 花婿は有数のお金持ちなのだからな!!」


「さあシャーラ、素敵なものを選んでちょうだい」


「ウフフ、出来るならさっさとやればいいのよ!」


花嫁一同がドレスのある部屋に入る。そしてすぐさま金切り声をあげた。


「なによなによ!! どれも安っぽいじゃないの!!」


「当日レンタルできるドレスはこれらになっておりますので」


「なんであのドレスと同じくらいの物が用意できないの!!」


「身頃などの調整を、どれだけ急いで行っても間に合わないからです!!」


そう。中位貴族級のドレスたちは、多少サイズが合わなくても、広がったり狭まったりする魔法の布が身頃に使われているため、なんとか当日でもレンタルできるのだ。

しかし一点物のドレスとなると、当人のためだけに作られているので、そんな魔法の布は使われない。

どうしたって、ランクは落ちてしまう物なのだ。


「仕方がないわね……隣の部屋は?」


「隣の部屋はご案内できるドレスがございませんので……」


「いちいちうるさいわね、あなたがいるとドレスを選べないわ!! 呼ぶまで来ないで!」


しっし、と追い払われたサニーは、結婚式前は情緒が乱れる花嫁も極めて多い事から、仕方なく場を後にした。

花嫁の入れ替わりにより、行わなければならない調整はまだまだ多いのだ。

ドレスを選ぶくらいは大丈夫だろう……とサニーは判断し、他の仕事に回ったわけである。

そしてもうドレスを着用しなければならない、という段階で花嫁はドレスを選び終え、ニマニマした顔でこう言った。


「あんな所にも、私に相応しいドレスはあったわね」


「……お客様、そちらのドレスが、あの部屋にございましたか……?」


「あったから選んでいるんじゃない!」


サニーは、絶対に入っちゃいけない方に入ったよな、と思いつつ、自分が監督していなかったせいだ、と自分に対して自己嫌悪も覚えつつ、花嫁が選んだドレスを見ていた。

それは当店の最高級のウェディングドレスで、何から何まで華やかで、王族の式で使用されても違和感のない高級品だったのだ。

これをあの部屋に置いていたわけがない。

だが証拠がないので、サニーは渋々、ドレスのレンタル料を跳ね上げることを決め、ドレスの着用を助ける従業員たちに声をかけ、それを花嫁に着せたのであった。




式は滞りなく……行われなかった。というか修羅場もいい所だったのだ。

何しろ花嫁が違うのだから、内容はずいぶん違ったものになるわけで、それが新しい花嫁の好みと大きく違っていたからか、花嫁が始終苛立った顔を隠さず、更に友人代表の言葉に至っては、友人が花嫁をいじめていた異母妹というのは嘘っぱちだと大暴露。

証拠もそれなりに取り揃えられており、実は花嫁の方が異母妹をいじめていて、婚約者などを奪いまくった結果今回の縁談となり、それも奪い取ったというわけで、披露宴は大騒ぎになったのだ。

花婿側は聞いていないと大激怒。花婿の方も、君がこんな女性だったとは思わなかった、詐欺だという具合で、式場は怒号が響き、花嫁の泣き叫ぶ声が響き渡り、なかなかの修羅場となったのである。

これをどうにかするのは、サニーの仕事ではないので、どうしたらいいかあたふたしたのだが、泣き叫んだ花嫁が暴れだした際に、大事なドレスがべりっと大きな音を立てて裂けたため、花嫁を控室に急ぎ連れて行き、招待客などに謝り倒して、なんとかその場はどうにかなったのである。

そういった修羅場が終わった後、式の費用を出す出さないで両家はもめ、しかし騙していたのが花嫁側だったという事で、費用を支払うのは花嫁側となり、今度はこんな金は払えない、減額しろと騒がれて、警邏などまで出て来る騒ぎが店で起き、やっとそれらの揉め事が解決したのは、半年も過ぎてからだったのである。

偽りの罪を着せられた異母妹はどうなったかと言うと、卒業式の日に家を追い出されてから行方をくらまし……サニーの前に現れた彼女は、頬を染めて、質素な服に身を包んだ男性と腕を組んでいた。


「家のための結婚なんてもうしていられなかったから、厭味な女を演じてみたの! サニーさん、我儘ばっかり言っていてごめんなさいね? 私、派手なものよりこう言うのの方が好みなの!」


お金を貯めたら結婚式を、またお願いできる? と微笑んだ彼女に、サニーは笑顔で頷いた。


「ぜひ!! 幸せのお手伝いをさせてくださいね!!」

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