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「まあ、ほとんどの人は私の無意識が作り出したんだけれどね」
ほとんど、と言うと?
「ハリス君は私のあこがれが生み出したものだったんだよ。私もああいう風に頼りがいのある人になりたかった。ああいう風に頭がよくなりたかった」
なるほど。じゃあ。キーナーは?
「ああ、あの子はこっちの世界の人だよ。こっちの世界でもセーラ・キーナー」
そうか。どこにいるんだ。
「さあ、わからない。でも、たぶん会えばわかると思う」
まあ、一度はこっちの世界であってみたいな。
会話が途切れる。俺は本題に入ろうとのどを整えた。
で、お前のその病気は治りそうなのか。
「うん、昏睡していたおかげでね。医療技術が進歩したんだ。ただ……」
ただ?
「ちょっとお金がね」
あー、なるほど。幾らぐらいかかるんだ。
「それが――」
刹那、医師が飛び行ってきた。
「佐々川様!手術費のお支払いありがとうございます!」
「え?わ、私そんなの払って――」
「いえ!先ほど佐々川ユキヒト様からお支払いいただきました」
「ユキヒト?そんな人私は――」
……ああ、なるほど。お前なんだな。ありがとう。だが、こんなサプライズってのはどうかと思うぜ。ほら見ろ、佐々川なんて目を点にして困惑している。まあしかし、つまりはお前のところの問題は解決したってことでいいのか。俺としてはそれを知るだけでもうれしくなれるが、こんなサプライズを用意してくれるとは、やはりご子息は違うね。
佐々川、いいんだ。お前の兄弟にはユキヒトってやつがいた。そうだろう?
「ええ、でも……」
ああ、今ならわかる。こいつが、佐々川が変質者から助けてもらう時にためらったのは思いやりからくるものだと。まあ、あの世界もなんだかんだで楽しかった。感想?そうだな。……もし可能なら、あの、ありきたりな転生物語をもう一度、ってな感じか。
完走いたしました。ありがとうございます。次の物語もご期待いただけると幸いです。




