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「そこ!不純異性行為はやめなさい!」
俺たち、俺と佐々木さんが登校していると、俄然、そんなことを叫ばれた。
その声の主を見ると、金髪のツインテールに西洋の彫刻然とした顔をした、少女がいた。
その少女はツカツカと俺たちの方へ歩み寄ってくる。
そしてこう宣った。
「どうせあんたらカップルは手を繋いだり、果てにはき、キスなどしているのでしょう。それは学業に多大なるダメージがあるわ。今すぐやめなさい!」
そんなことしてませんが。
「嘘ついたって無駄よ。あんたの顔にデカデカと書いてあるわ」
俺の顔に書道の半紙よろしくそんなことがデカデカと書かれているかはともかく、事実じゃないことは事実じゃないとしか言いようがないですね。
「へぇ、あくまでしらを切るのね。大した度胸だわ」
いえいえ、本当に身に覚えがないんです。そもそも佐々木さんとはカップルではありませんし。
ねぇ、佐々木さん。
横を見ると耳まで真っ赤にした佐々木さんがいた。
耳を澄ますと「き、キスだなんて」と呟いている。
もしや・・・・・・ウブなのか?あんたはウブなのか?
しかし、場合によってはほのぼのするそれも今の状況では限りなく悪い一手だった。
「ほら!彼女もこんなに真っ赤になってるじゃない!」
いやいやこれは佐々木さんかウブなだけでーー
「ぜっっったい、嘘ね。男の甘言と『行けたら行く』って言う言葉だけは信じるなと母親にも言われたわ」
そんなこと言ったって事実じゃないことは事実じゃないとしかーー
「彼女さんの反応を見ると昨日はお楽しみだったようね!どうせ唇を重ね合ってたんでしょう!あー!羨ま、コホンコホン不純不純!」
おい、今『羨ましい』って言おうとしただろ。
「な、なによ!そんなこと一ミクロンも思ってないんだからね!」
ほほう、つまりあんたが眼鏡をかけずにめかしこんでいるのはそこらへんに起因するわけだな。
「こ、これくらいレディには当然の作法だわ」
ほー、レディねぇ。
「な、なによ」
いや、なんでも。まあ、頑張れよ。
「っ!い、言われなくたってわかっているわよ!」
そう言って俺を睥睨した彼女は、相当頭に血が上った様子で学校へと向かって行った。
やれやれ、これだからウブな少女ってのは困る。あいつらは恋愛について無知なくせに自分の信じたことはとことんやるからな。佐々木さんもああはならないように気をつけてくださいね。
呼びかけられた佐々木さんはガバッと頭を向けると真っ赤になりながらもこう言った。
「わ、私は別にマイケル君となら・・・・・・」
動揺で時が止まった。
少ないって言われてもこれが携帯の限界だとしか・・・・・・