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で、なんでお前は喋れるんだ。
俺は校舎裏の閑散とした場所で右手に持ったどんぐりににらみを利かせた。
「あははー、ぼくもわかんなーい」
わかんないじゃ困る。その現象をわかるか、ここで埋められるか、どちらかを選べ。
「ちょ、ちょっと待ってよ!本当にわかんないんだって!」
……はぁ、だったら黙っていたらどうだ。俺が話しているときに横やりを、しかも俺にしか声が聞こえないように入れてくるのは悪質だぞ。
「あはは!だって『恋は理想の押し付けで愛はありのままの受容だ』なんて言葉、相当気障じゃなきゃ出ないでしょ」
お前……よし、このどんぐりはやっぱり埋めてしまおう。
「ご、ごめんって!第一、君にしか声が聞こえないみたいなんだ!」
俺にしか声が聞こえない?
「そ、そうなんだよ。ほかの人に話しかけてみたけど全然反応がなくって」
そりゃあ変な声がいきなり聞こえたらな。
「僕も最初はそう思ったんだ。だけど何度話しかけたって結果は同じで……」
……そう、か。それじゃあ仕方ない。このどんぐりは雪ダルマに戻そう。
「ちょ、ちょっと待ってよ!べ、別に僕は今日のことをそこまで悪く思っていないっていうか、まだ続けてあげてもいいっていうか……」
つまり、何が言いたいんだ。
「……ずるいよ。そうやって本音を言わなきゃさせるなんて」
ん?なんか言ったか?
「――しかったの」
聞こえないのだが。
「だから!楽しかったの!授業なんて珍紛漢紛だったけれどでも、マイケル君のノートをとっている音が聞こえて、みんなは反応してくれなかったけれどでもマイケル君がさりげなく僕にも反応してくれて、楽しかったの!ダメ!?」
……はぁ、だったら最初からそう言え。俺はお前が苦痛じゃないかどうかが心配だったんだ。
「そうやって優しくするからマイケル君は――」
ん?なんて言った?
「もう鈍感系主人公なんて知らない!」
……やれやれ、なんで雪だるまの精はここまで幼児後退しておらっしゃれるのでしょうね。先日なんて大人顔負けのシニカルな冗談をおっしゃっていたというのに。まあいいだろう。楽しかったと言ってくれただけでも良かった。それだけでも連れてきた甲斐があったってもんだ。
僕の声は、自称イケボなのでtwitterの方でこの物語を朗読したものを投稿しようとしたのですが、mp3が投稿できないと知り、悲嘆に暮れました。




