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ありきたりな転生物語をもう一度!  作者: ありきたりな人間
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師、走る冬。暖かな陽光は深々と降り積もる雪に閉ざされ、太陽の差すような光は雪に純白の輝きを宿す。その雪を踏みしめ行くのはクルーデン高校の学徒である。俺はその一段の中で、寒さに首を縮めながら歩いていた。吐く息は白く、踏みしめる雪はいまだ感触がある。

なあ佐々川さん。なんで冬ってのはこんなに寒いと思う?

「本当に寒いですよね」

ああ、俺としては春のような過ごしやすい日がずっと続けばと思っているのだが。

「まあ、いいじゃないですか。こんな時があるからこそ、時が巡っていると感じられるんですから」

ああ、確かに。ただ、だったらもうちょっと工夫してくれませんかね、神様は。これだったら多分図画工作をした小学生の方が創意工夫という点では上でしょう。

「そうかもしれませんね」

佐々川さんは朗らかに笑う。

「あら、奇遇ね」

そんな時、キーナーがいつも通り合流する。

ああ、本当に奇遇だ。これで何百日連続だろう。

「あ、セーラさん、おはようございます」

「おはよう、佐々川さん」

……はぁ、寒い。そして隣がうるさい。

「なによ。佐々川さんにあいさつしただけじゃない」

ああそうか。だったら多分俺はすでにセーラ・キーナーアレルギーなのかもしれないな。

「へぇ、言ってくれるじゃない。これだったらあんたの弁当にピーマンでも入れてやればよかったわ」

大丈夫だ。その時は佐々川さんのがある。

どういうことか。つまりこれは体育祭の後から俺の昼食が購買から女子ども二人の手作り弁当に変わったことを意味する。

「だめですよマイケル君。好き嫌いしちゃ」

いやいや、俺は好き嫌いっていうより――いや、まてよ。佐々川さん。その話をするってことは……

佐々川さんの顔に怪しい笑みが浮き出た気がした。




ピーマンの肉詰めを味が感じられる前に書き込んだ俺は、満腹であることの幸福感を感じながら窓辺の席でうとうとしていた。すると――

「たのもー!」

はぁ、またあいつが来てしまったか。セーラ・キーナーの二番目にうるさいあいつが。

「お!マイケル殿!眠ろうとしておられるな!それだったら子守唄をうたって差し上げよう!」

子守唄が大音量のアルトで歌われ始める。

ええい、やめい。耳が爆散するわ。

「おや、お気に召さなかったかな」

お気に召すも何も、そんな大音量誰だって敬遠するわ。あと、寝かしつけるならお前の場合の最善策はお口をチャックだ。いいか?これからはそうするんだぞ?

「善処しよう」

ああ駄目だこいつ絶対しねぇわ。

こんなことを話していて、何が目的なのかと感じる方もおられるのかもしれない。俺も前にそれが気になって本人に聞いてみた。すると帰ってきたのは悲痛な笑みと「ただ話したいだけだよ」という言葉だったので、俺はそれ以降何も聞けずにいるのだ。そうか、これがいわゆるチャットというやつか。




なあハリス。お前、一回俺と変わってみないか。

「あはは、いやです」

なぜだ。

「そりゃあ、ねぇ」

一度でいいんだ。ほら、これがハーレムという奴だろう。

「それ、本当にそう思ってます?どうせマイケルさんのことだから激しい人生に辟易としているんじゃありません?」

そ、そんなわけないだろう。いいから変われ。

「あはは!図星ですね!」

ふ、ふっ、悪い冗談を。

「まあでも、もし僕が本当に変わりたいと思っていたとしても、変わらないでしょうね」

……なぜだ。

「そりゃあだって、その人生ってのはマイケルさんがすごいからできているんです。マイケルさんが佐々川さんを助けた、キーナーさんを助けた、西蔭さんを助けた、僕を助けてくれた、マーセルさんを助けた、だからこそのそれです。僕にはマイケルさんの代わりにはなれません。案外、マイケルさんってすごい人なんですよ?」

……褒められているのか貶されているのか。

「……プッ」

おい、今笑ったな。貶しているだろ。

「いえいえ、やっぱりマイケルさんにはその頑迷固陋さが似合います」

お、言ったな。じゃあお前もこれから西蔭と同じキーナー学派だ。そっちは暴君キーナーがいるがこっちには佐々川さんがいるからな。そりゃあもう――

「まあ、まだその時ではないでしょうからね。僕はそれでもいいと思っていますよ。ただ、もしもマイケルさんが本気で悩んだとき、その時は僕を頼ってくれてもいいですよ」

なまじりを決したハリスの視線に俺はうなずくことしかできなかった。




「お!マイケルよ!来たな!」

生徒会室の扉を開けると、生徒会長と題された机に傲然と座るトレイシーちゃんが反応した。ああ、今日は、いや、今日も、いや、ここ数日、いや、あの事件以来、胸バッドをつけているのか。相当お気に入りなんだな。これはあの会社も浮かばれることだろう。

「今回はUNOというゲームをします!」

そういうリンダさんの右手には赤いパッケージが握られていた。――

そう、これが俺の、なんてことない日常である。


ごめんなハリス。お前の存在を忘れていた。ということで、ハリスの部分だけどこか浮いてます。

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