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皆さんの周りには整形した人はいるだろうか。整形ってのは自分をより一段上の自分に高めてくれる。確かにそうだろう。ただ、相手のそれを知らずに夜の営みに入ろうものなら、そりゃあどんなくっころよりもくっころらしいかもしれないし、失望感ってのは計り知れないだろう。では、友達が整形をしようとしていたら?俺は止めはしない。なぜならそれは本人の自由だからだ。ただ、節度を持てよわが友よ、と忠告ぐらいはするかもしれない。今回はそんな問題だ。トレイシー・マーセルは整形を切望した。
「豊胸手術をするぞ!」
閑散とした生徒会室。俺とリンダさんの碁を裏返す音だけが響くそこにて、俄然、トレイシーちゃんが大声を出した。やれやれ何ですかトレイシーちゃん。俺の心臓に自分探しの旅でもさせる気ですかい。
「豊胸手術をするぞ!」
今度は俺の眼をまっすぐにとらえて告げた。何度も言われなくてもわかってますよ。……その心は。
「人間の構成要素がわかったのだ」
なるほど。それを使って複製魔法を体内に行使し豊胸すると。
「ああそうだ」
しかしそんな高度なこと我々に――
「だからほかの人に頼む。これを見ろ」
トレイシーちゃんが見せつけた雑誌にはでかでかと「豊胸手術請け負います」という字が書かれていた。
……大体なんでそんなこと――
「ナイスバディ(body)になるためだ」
なぜナイスバディになりたいんですか。
「それは、――のナイスバディ(buddy)になるためだ」
すいません。途中が聞こえませんでした。
「だから、――のナイスバディ(buddy)になるためだ」
一向に聞こえる兆しがないのだが。これはわざと聞かせてないのではないか。俺はいぶかしんでトレイシーちゃんの顔を見る。そこには赤面したトレイシーちゃんがいた。やれやれ、なんでこんなことで赤面できるんですかね。つまりトレイシーちゃんは道端で猫が交尾していても赤面するほど初心なんですかね。そんな初心な人誰一人――一人を除いてこの世にいるわけがないでしょう。一人とは誰かだって?そりゃあいわずもがなってやつだ。
しかしトレイシーちゃん。そんなナイスバディになりたいなら名前も変えたらどうです。トレイシー・マーセルなんて立派な名前もいいが、あんたに似合っているのは、そう、ベティ・ナイスなんかどうでしょう。なんでかって?そりゃあ、日本名読みしたら「ナイスベティ」になるからだ。
トレイシーちゃんが得心顔といった感じで拍手する。俺は得意げにリンダさんの方を見る。するとそこには氷雪気候より低温の寒空が広がっていた。
スターバックスでホワイトモカを飲んでいたら盛大にこぼしました。やっぱり陽キャの聖域に陰キャが入ることは許されないことだったみたいです。これからスターバックスに入る時は二礼二拍三礼と清めの塩を忘れないようにします。




