43
病室からは名の知らぬ木が見える。ああ、無名の木でもこんなに生き生きと太陽の光を浴びてんだ。俺も頑張って回復しようではないか。そう奮起すると、ベッドに体を預けた。病室の白い壁を眺めていると、何か引っかかるものを感じる。いや、懐かしいんだ。だが俺は、うれしいことに今の世では病院に行ったことがない。そうなると前世に何かあったというわけだが、それも思い出せない。ただ、ああ、心地よい。ころころと琴の音のような笑い声が耳の奥に聞こえ、ほほえましいやらなんやら、とにかく温かい気持ちに包まれる。
彼女はこんな気持ちだったのだろうか。ゆったりとした日の光を浴びて、手に取った雑誌の雑誌臭さに酔いながら羅列された記号を読み、思い出に心を馳せ、精神的に心地よい営みをしていたのだろうか。
俺の内なる声がそんなことを囁く。何のことかわからない。だが、何かがわかったような気がした。
病室の扉がピシャッと勢いよく開く。
「おうマイケルよ!遊びに来てやったぞ!」
そこにはリュックを背負ったトレイシーちゃんがいた。後ろにはリンダさんがたたずんでいる。やれやれ、普通はまず心配から始まるものじゃないんですかね。そんな讒言もどこ吹く風、持ってきたリュックからトランプを取り出したトレイシーちゃんはおもむろにカードを配り始めた。
「さあ!リベンジといこうではないか!」
リベンジ?ああ、いつもやっているババ抜きで連敗しているのがそんなに悔しいのか。まあ、トレイシーちゃんはまだ子供なんだからな。
「子供じゃない!」
その体格で子供じゃないというなんて、ずいぶんませているじゃないか。ほれ、もし俺たちに勝てたら頑張りました賞で500銅貨をあげよう。
「だから子ども扱いするな!……あと、銅貨は1000だ!」
……やれやれ、お金にがめつい女の子はモテませんよ。
その時、ふと、ある光景を思い出した。前世の休日、晴れた日の陽光が差し込む病室で、彼女と笑いあったことを。彼女とは誰だっただろうか。顔も朧気だ。だが、彼女の琴の音のような笑い声だけは耳に反響し、楽しかったという感情だけが想起された。
伏線回収的な?




