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撃たれた球は打球音を置き去りにしてコートに突き刺さる。
地面を抉るほどの威力の球はそのまま相手のラケットを貫き、後ろのフェンスを刺した。
俺は今テニスをしている。
いや、王子様の方ではない。
この世界式のテニスだ。
しかし、この世界はなまじっか人間が強いのが困る。
俺だって、たとえ本気でサーブを打ったからといってこんな悲惨な結果になるとは思わなかった。
「ナイッサー!マイケル君!」
いやいや佐々川さん。その反応はどうなんですかね。
いま、あなたは普通のテニスならあり得ない光景を目撃したんですよ。
地面を抉るってのは、まあ百歩譲っていいとして、相手のラケットを貫くってのはいかがなもんなんですかね。
ほら、相手だってあまりの出来事に呆然としてますよ。
部活ってのは青春の一つの形といえよう。
だから俺は遠慮なく部活に入ろうと決めた。
しかし、俺はこんな超進学校で毎日鬼の如く勉強させられているのに、部活も頭を使うところに入ろうとは思わない。
そこでスポーツを考えるわけだが、俺はいかんせんスポーツが得意ではない。
と、ここまできた時に前世の記憶を思い出す。
そういえば、俺はテニスをしていたではないか。
それは遠い昔のことだが、まあこの際気にしてはいられない。
そして、俺はテニス部の体験入部にきたわけだ。
そこで試しに試合してみた結果がこれである。
翌日。
投稿しているとーー
「ラケットクラッシャーが来たぞー!」
「逃げろー!」
朝っぱらから元気のいいことで。
俺としてはその要因がもっと違うことであればなお嬉しかったのだが。
俺はそれとなく隣の方を見る。
「私はみんなとは違うからね」
いやいや佐々木さん。その言い方だとまるで俺が女子生徒の体操服を盗んだ犯人として槍玉に挙げられているようではありませんか。
俺は、こう言っちゃあの相手に悪いが、ラケットを壊しただけですぜ。
それも無意識に。
「あ、そっか。あはは、なんか皆んな騒がしいからそれに乗せられちゃった」
・・・・・・本当にこの子はこの高校に合格できたのだろうか。
俺は友達の裏口入学疑惑に戦慄した。
ノリに乗ってるゼェ。