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「まず一つ目は、トイレの花男さんです!」
事前に書いてきたらしいメモ用紙を見ながら居丈高に胸をそらすのは佐々川さん。何やら本当に自信があるらしい。鼻を得意げにならすと、放課後で俺たち、キーナー、と俺と佐々川さん以外誰もいない教室の黒板をバン!とたたいた。
「こっちも終わりました」
帰りの会が終わったらしい、後ろのドアから顔をのぞかせたのはジョン・ハリスだ。
ああそうかハリス。こっちは今始まったところだ。
俺はハリスに俺の隣を促す。
「いいですか!トイレの花男さんは女子トイレに現れます!」
やれやれ、それは性的にどうなんですかね。幽霊界では男女の区別がないのだろうか。それだったらちょうどいい。口うるさいフェミニストどもをみんな幽霊界に送ってやれば万事解決というわけだ。
「ああ!確かに!これはいけませんね!私たちで教えてあげないと!」
……普通幽霊ってのは怖がるもんじゃないんですかね。大体、今の集まりもそれを想定して集まっているでしょう。それを、正してあげるために?やれやれ、佐々川さんはもし法で幽霊が存在してはいけないと書かれていたら世界中の幽霊を成仏させに言っていたんですかね。いや、あるいは復活させるかもしれない。もしそんなことをしたらせっかく復活して神格を見せたイエス・キリストさんも涙目でしょうね。
「今回はこれを最初に見ます」
はいはい、佐々川観光ご一行が通りますよ。幽霊の皆さんは所定の位置について我々を驚かしてください。
「次にひとりでになるピアノを見ます。これは音楽室です」
……もしかして小学生が良く言うやつと同じか?
「次に――」
なおも佐々川観光の予定の説明は続いた。
で、お前は参加するのか?
「ええもちろん。あんな面白そうなこと、参加しないわけにはいきません」
はぁ、となると、俺も参加か。
「なぜですか?僕の決定なんか無視すればいいでしょう」
いいや、そうもいかないんだな。お前がもし参加しないのなら、女子ども二人でキャッキャと楽しんでくれと言えたんだが、お前が参加するとなるとそれも使えないんだよ。
「なるほど。……クックック、でも、僕が参加しても参加しなくても、どっちにしろマイケルさんは参加することになるだろうと思いますけどね」
なぜだ。
「佐々川さんは潤んだ瞳で、キーナーさんは握りこぶしでマイケルさんを誘うでしょうからね」
おい、キーナーのは誘うとは言わねぇだろ。そりゃあ実力行使だ。
「ハハハ!」
かくして佐々川観光への参加は取り決められた。
午後の紅茶などという陽キャの飲み物を飲んだらおなかを壊しました。許すまじ陽キャ。




