55
諸君の学校にはどんな七不思議があっただろうか。女子トイレの一番奥の個室に花子さんがいる?あるいは夜中になると人体模型が動き出す?あるいは夜中に音楽室のピアノが勝手に鳴り始める?あるいは……云々などと奇怪な事象はいくつでもあげられるだろう。まあ、そんなもん高校に入れば全く見なくなるのだが。しかし、小学生のころなんかはそんな話を聞いてわくわくしたものだ。ああ、まったく。それのおかげでどれほど夜が怖かったか。或いはおしゃれにこう言ってみよう。俺には眠れない夜があった。
まあ、先ほども言ったようにこれは小学校までなら、ああ、十分通用するだろう。リアル、ノンフィクションというものに疎い小学生にとっては、そりゃあ新たな現実となるわけで、裏腹に感じられたことだろう。では、高校生はどうか。高校生にもなってそんなものにうきうきしているのは、はっきり言って将来が不安になるだろう。ああ、だから俺も佐々川さんがそんなことを言ったときはすっかり気が気でなかったね。まあ、そんなことは置いといて、俺の高校にはどうやら七不思議があるらしいことを、ジョン・ハリスの人畜無害な微笑みが肯った。
おいハリス。お前は正気なんだろうな。
「というと?」
佐々川さんのあれを肯っただろう。
「ええ、そうですね」
本気で言っているのか。高校生にもなって、ましてやこの高校に七不思議があるのだと――
「ほら、僕は前にツボを売っていたじゃないですか」
……ああ、あの詐欺な。
「やっぱりその時は仕事柄いろいろな人の話を聞くのでね、もちろんその話題についても入ってきました」
それはあれだろう。お前の甘々な詐欺に騙されてしまう頭の鈍い人だからだろう。
「そう思うでしょう?いいえ、違うんですよ。何人もそんなことを言うんです。さらに言うとその人たちは僕のツボを買いませんでした」
……お前、騙されていないか?それはつまりその怪談だけを言いに来たってことだろう?お前をもてあそんでいるようにしか――
「いいえ。ほら、よく言うじゃないですか。金の切れ目が縁の切れ目ってね。つまり僕はその人たちと交友関係を築いてツボを買わざるを得ない状況に追い込んだんですよ」
なんとあくどい。本当にお前と友達でいいのか疑問符がついてきたぞ。……後、その言葉はそういう用法を想定していないだろう。
「言葉ってものは変容するものです」
さわやかな笑みで言ってのけたハリス。ああ、確かにこの輝かしい笑みだったらすぐに交友関係は築けるかもな。俺はそう思った。
これ以上登場人物を増やしたくないのでここで粘ります。




