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それからの俺は図書館に入り浸った。西蔭智春の魔法を解く方法を探るためだ。そしてこんな文献を見つけた。高度な魔法は魔法陣に使用記録がアーカイブされている可能性が高い。また、その魔法陣が消失すると、魔法は効力を失う、と。それを知った俺は早速西蔭智春に会って話した。
――ということだが、心当たりはあるか?
「ああ!そういえば、私に魔法をかけるとき、怪しい布を下に敷いていたかも!」
なるほど、となるとそれだな。
「……でも、どうするの?」
……まあこれはあんまり大声では言えないんだが、一つ、作戦を考えている。
「というと?」
その名も教会消失作戦だ。
「消失?」
ああ、お前がみんなの記憶から消えたように、教会もあの土地から消してしまおうというわけだ。
「どうやって?」
そんなの簡単だ。魔法陣の保管庫の座標を特定して、火の玉でどかんだ。
「……フフフ、アハハハハハ!面白いこと思いつくね!」
いや、結構真面目に言っているんだが。
「で、潜入はどうするの?」
それなんだが、あいつらはお前らの顔は全員把握していないよな?
「そうだけど、それがどうしたの?」
信者のふりをして中に入る。
「アハハ!いいね!で、そのあとどうするの?」
俺はマッピング魔法を持っているからそれで魔法陣の場所を特定する。
「途中で教会員に不審がられたら?」
トイレと間違えましたというわけさ。
「なるほど。フフフ、スパイ大作戦というわけだね」
ああそうだな。
決行の日が来た。もう夜も遅い。なぜ夜なのか。これは特に理由はなく、ただ単に西蔭智春が夜のほうがスパイっぽいといったことに起因する。俺たちは信者の服装に身を包むと、中に入った。中に入ったら一応、信者か確認するために神への誓いの言葉を唱えるのだが、それも練習してきたとおりに言えた。そして無事に内部へ侵入すると、マッピング魔法を適応した。教会の全体像が俺の脳内に流れ込む。そしてしばらくいろいろな場所を見ていると、それらしいところを見つけた。西蔭智春に目配せすると、二人に隠密魔法を行使した。トイレに行く途中迷いました作戦はあまりに不審すぎるため、棄却されたからだ。そして部屋にたどり着くと、隠密魔法を解き、魔法陣の座標を特定し始めた。大体これくらいの大きさでこれくらいの頑丈さだからこれくらいの魔法を行使して、これは鋼鉄だから火の玉にしてなどといろいろ考える。そして一通り確認し終えると、詠唱を開始した。
須く照らす太陽よ!須く燃やす極炎よ!今ここに現出したまえ!その火は混淆をも焼き尽くし、その光は歴史の先駆者となるだろう!穿て!<インフェルノ・サン>!
俺は詠唱し終わったことを西蔭智春に告げると、一緒に逃げ出した。
ゴーッと業火が上がる。火の柱は天を穿つ。これで多分協会は跡形もなく消滅しただろう。
「アハハ!見て見て!あたりが昼間みたいに明るいよ!」
無邪気に言い放つのは西蔭智春。その腕には金貨がぎっしりと握られている。というのも、あそこには金貨もあって、その中から西蔭智春はいくらか持って行ったのだ。やれやれ、お金にがめつい女はモテませんよ。まあ、その無邪気さでプラマイゼロといったところでしょうか。
「……ねぇ、マイケル君。なんでマイケル君が私を忘れなかったか知りたい?」
ん?ああ、そりゃあ知れるもんなら。
「実はね、魔法にかかる時こう思ったんだ。もしマイケル君が私を大切にしてくれているなら、マイケル君だけは私を忘れませんようにって。ほら、マイケル君、最近私にかまってくれなかったじゃん?だからそれで寂しくなっちゃって」
あー、なるほどな。ああ、お前は俺の大切な友達だよ。
刹那、俺の右頬を温かくて柔らかい何かが触れた。
何かしたか?
俺は西蔭智春に聞く。
「ううん、何にも。ただ、友達ってところじゃ終わらせないよ」
そう言って笑った彼女の笑みは蠱惑的だった。
書き終わりました。GGです。




