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西蔭智春が話したのはこんなことだった。なんでも、西蔭智春は自らに魔法をかけたらしい。それがみんなに存在を忘れさせる、もう少し細かく言うと思った人に思った程度の記憶喪失をさせるということだった。もちろん、そんな高度な魔法一人ではできないからヴァニッシュ教という宗教に手伝ってもらったようだ。その理由についてや、俺がなぜ西蔭智春を忘れていないのかについての理由は頑なに言わなかった。まあいいさ。俺が忘れていないどうこうなんかより、みんなが西蔭智春のことを忘れていることのほうがよっぽど重要だ。
で、なんで教会なんかに通っているんだ。
「情けない話なんだけどね、やっぱり忘れてほしくなかったんだよ。みんなともっとお話をしたかった。だからその魔法を解いてもらおうと思ってね。そしたらあっち側からお金が必要だといわれて、それが莫大な料金だったから分割して払っているんだよ。だけど、それもあともう少しで終わるんだ。だからもう少しで普通に――」
いいや、たぶん終わらないと思うぞ。
「――え?どうして?」
それはあれだろう。弱みに付け込んでお金を巻き上げるっていう詐欺だろう。たぶん終わらないと思うぞ。
「……じゃあ私はどうすれば……もしかして一生このまま……」
……はぁ、どうして俺の周りはこんなにも事件が多いんですかね。
「ご、ごめんね」
まあいいさ。全員が全員、俺の大切な人なんだ。協力は惜しまない。
「……そんなことを言ってくれて私もうれしいんだけれど、でもマイケル君には迷惑をかけるわけにはいかないよ」
いや、いいんだ。
「でも――」
じゃあ西蔭智春。お前にこれが解決できるか?
「……できない」
だったらなぜ人に頼らない。
「……でもマイケル君だってこれを解決できるかは――」
できるさ。
「――その確信はどこから?」
まず一つ目に俺はお前より賢い。
「……それはそうだけれど――」
そして俺にはやる気がある。
「……うん」
これのどこにできないという要素があるんだ。
「……いや、やっぱり――ううん、そうだよね。マイケル君は私よりも賢い。そしてやる気もあるっぽい。たぶん、ううん、絶対、私の問題を解決してくれる。私も信じてみるよ」
そうか。じゃあまず俺に頼め。
「……マイケル君、どうかわたしを救ってください。お願いします」
ああ、わかった。大船に乗ったような気持でいろ。
この物語を今日で書き終えるつもりです。




