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それはある日の屋上での会話からだった。
そういえば最近西蔭智春が来ないな。
俺はぽつりとつぶやく。
「なんて言いました?」
佐々川さんが聞き返す。
いや、ほら、西蔭智春が最近来ないなと。
「に、ニシカゲさん?誰ですか?」
その時の俺は佐々川さんもついにそこまで来たかと仰天してしまった。
ほら、笑うと八重歯が出るあいつだよ。
「……うーん、そんな方知りませんね」
いやいや、佐々川さんもいっぱい話していただろ。ほら、日焼けした。
「……うーん、私にはわかりかねます。キーナーさんはどうですか?」
「どうしたの?」
キーナーは弁当を食べていた手を止めてこちらを仰ぎ見る。
「ええと、ニシカゲさん?でしたっけ?ってご存じですか?」
「ニシカゲ?誰よそれ」
俺は血の気が引いた気がした。
お、おいキーナー。悪い冗談はよせ。
「あんたこそ冗談はよしなさい。今まで私たちは三人だったじゃない」
ああ、本当に悪い冗談だったらどんなに良かったか。しかしここは、そう、魔法も使えるいわばファンタジーの世界である。それに俺はこんな状況を知っている。ああ、俺が転移して以来、つまりスライムがなんやかんやするっていう画期的な虚構に実感が伴って以来のそれだ。これは、ああ、そうだ。どっかの憂鬱なSFラブコメが映画でやっていた。そこには“消失”なんて言葉がでかでかと書かれていて、俺としてははらはらしたもんだ。しかし、それがもし本当だったとしてなぜ消失した。ああ、あの消失が起きた原因とは何であっただろうか。そんなこと当の昔過ぎて覚えちゃいない。だが、何とかしなくちゃならないのは同じだ。
下校時、ジョン・ハリスにこう洩らした。
なあ、お前だったら人が消えたらどうする。
「人が消えたらですか?……マイケルさんだったら躍起になって探しますよ」
そうか。やっぱり探すしかないのか。
「あー、そういえば、なんかそんな話聞いたことがありますね」
そんな話?
「いや、ヴァニッシュ教でしたっけ?そこがなんか得体のしれない人ばっかを集めているので人さらいでもしているんじゃないかと」
なるほど。
この時の俺はこの言葉を軽く考えていた。しかし、その言葉は確かに俺の心に引っかかったし、次の段階へと解決に近づけてくれたのだ。
短いけれど我慢してくれたらうれしいです。




