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それで、結局父親はどうなったんだ。
俺はジョン・ハリスに率直に聞いた。
「ああ、それがね、クックック、面白いことに僕も詐欺にあったんだよ」
詐欺、というとあの治療費の話か?
「うん。いやぁ、やっぱり人にやった悪事は帰ってくるんだね」
となると、まだ家庭は?
「いいや、円満になったよ。母親も僕を見て反面教師にしたらしくってね、あの神父ともきっぱりさ。それに最近父親も薬を飲み続けた結果会話くらいならできるようになってね、昨日なんていつぶりに笑いあったことか」
それはよかった。
「それもこれもマイケル君のおかげだよ。マイケル君があの時僕に合わせて言ったセリフなんて、もうみんなで大笑いだったよ。勧善懲悪なんてね、僕たちも悪事を働いているじゃないかってね」
そ、そうか。喜ぶべきなのか悲しむべきなのか。
「それに、僕を救ってくれたからね」
そんな大層なことではないさ。人は一人で救われる。俺はたまたまその取り巻きだっただけだ。
「ハハ!謙遜なのか卑屈なのか、判別不能なのがマイケル君のいいところだ!」
おい、それは悪口だろ。
「アハハハハ!」
今日も今日とて俺たちは平和なのだった。
ハリスと話しながら廊下を歩いていると、一人の幼児が仁王立ちしているのが見えた。顔を見ると頬は膨らませていて、涙目である。トレイシーちゃんだ。
「むーっ」
近づいてみると鳴き声を上げた。そうか、見ないうちにさらに幼児退行して進化論の逆を辿ったか。
「マイケルめ!最近生徒会室に来ておらんじゃろ!」
ああ、そのことですか。ちょっといろいろありましてね。
俺はハリスに目配せする。するとハリスは微笑み返してきた。トレイシーちゃんの隣にいたリンダさんが何やら耳打ちする。するとトレイシーちゃんははっとしたような顔になった。
「わ、私は別にそんなことで差別などしないからな!むしろ振り向かせてやろうとやる気になるまである!」
トレイシーちゃんが何やらわけのわからないことを言っている。リンダさん、いったい何を吹き込んだんだ。
「お、お前!」
トレイシーちゃんがハリスを指さす。
「マイケルは渡さないからな!」
ハリスは意味が分かったのか笑い出した。やれやれリンダさん、いったい本当に何を吹き込んだんだ。俺は先を思いやり嘆息した。




