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「それでその人が――」
「へー、そうなんですねぇ」
春風駘蕩と言った屋上で奏でるのは俺たちののんびりとした声音だった。今日も平和だ。購買で買った揚げパンをかじりながら天を仰いだその時、衝撃的な一言が俺の耳を貫いた。
「ところで皆さん、こちらのツボに興味がありませんか?」
発言者は佐々川さんだった。なんでも話を聞いてみると買うだけで運が上がるとか。しかも、それを他人に売るとその利益の一部を自分がもらえるとか。いやいや佐々川さん、それは俗にいうマルチ商法ってやつじゃないですかね。キーナーも若干顔が引きつっていた。ああ、哀れな佐々川さん。何事にも初心なあなたはすぐに騙されてしまうのね。
「なるほど、私は騙されたわけですね!」
ええ、大体そういうことになります。ところでその元気の要因は。
「ああ、私、実は騙され慣れているんです!」
なんで神様はこんなにも不憫な生物を作り給うたのか。俺はそう痛切に感じられた。
そこからは俺とキーナーによる必死の調査が始まった。少しでも佐々川さんの無念を晴らそうというわけだ。まあ、当の本人はケロッとしていたのだが。そこで行き着いたのがこの場所、学校にあるさびれた会議室だ。キーナーと目配せするとその扉を蹴破った。
「詐欺師め!もう観念なさい!」
そこにいたのは白髪の少年だった。振り向いたその顔は、誰がどう見ても、どこを切り取っても美形であり、空色の眼はすべてを透かすかのようだった。
「やあ、僕のお客様かな?」
ハイトーンで透き通るその声、スレンダーな体、おぼろげな白髪の主は一瞬にしてその場を支配していた。
で、なんでこんなことを?
「そりゃあ、金稼ぎのためだよ」
金稼ぎなんてほかの方法でもできるだろう。なぜ詐欺なんかを。
「君は面白いことを聞くね。そりゃあ、より大金が稼げるからだよ」
聞き方が悪かった。金を稼ぐのだとしても、例えば普通の人だったら詐欺なんて思いつかないだろう。なぜおまえの性根はそこまで腐っているんだ。
「アハハ!言うねぇ。……まあ、確かに性根は腐っているんだろうね。君の言うとおりだ」
だったら――
「だけど、それがどうしたっていうんだ。僕の性根が腐っている?ああ、確かにその通りだ。だけど、だからどうした?反省して返金しろと?いいや、僕は性根が腐っているからそんなことなどしないさ。第一、騙されたほうが悪い」
ああ、それはわかっている。佐々川さんが全部悪いってことぐらい。だが、騙すのが勝手ならお前を恨むのだって勝手だろ?だから俺たちはお前を恨む。お前の商売を邪魔する。いいな?
「恨む。恨むねぇ。ああいいさ。好きなだけ恨むといい。だけど、君たちもわかっているんだろう?そんなことしたって意味がないってことくらい」
意味がない?そんなこといつ決まった。たとえ意味がないように見えたって、俺がその意味を作ってやる。意味っていうのは存在に先行するわけじゃないからな。
「ハハッ!男前だね!」
43を飛ばしてしまったけれど気にしない。或いはその偶然から生まれる物語なんてものもあるかもしれないから。とりあえず今は考えてないけれど。今回の物語を読んでいただけるとわかると思うのですが、登場人物を新たに増やしました。しかし、物語としては陳腐なものです。それは僕の発想力の至らなさに起因します。僕も化物語のような血沸き肉躍る物語を書きたかった。しかしそれは僕の能力を超克する。小説の魅力ってのは言わずもがな、目新しさ、novelの形容詞の意味がそれであることからも明らかなようにそこにあります。いや、これは僕の考えなのであると思うと一歩後退したほうが適切でしょうか。まあしかし、僕にはそれができない、これは刹那的な話ではなくて継続的な話ですが、それができない。ということで登場人物を増やすほかないわけです。しかし、ええ、確かに今はその場しのぎですがこれからは違うと思う。僕もここまででだいぶ成長したでしょう。不可逆的な進歩を歩んでいる。だから、化物語のような発想は未来の僕に託したわけです。つまり何が言いたいか。一言にして決するのであればこれからも応援をお願いすることと、今まで読んでくれてありがとうということです。




