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金属と金属がぶつかり合った様な音、金属音とでもいうのだろうか、まあ、そんな無機質な音があたりに響いた。無機質というからには、俺としては相対者も無機的であることを望んだのだが、ああ、確かに一方はジェイレンさんの剣なのだが、もう一方が予想とは違った。そう、大きな蜘蛛であったのだ。数多くの虫の目は赤く不気味に光り、口からは蜘蛛の糸の屑を垂らしている。俺としては金属でスパッと切れるくらいのちょうどいい硬さが良かったね。不満を垂れてみるが現実は未だ変わらず、ジェイレンさんの剣と大蜘蛛の足が鍔迫り合いしている。もっとも、蜘蛛の足に鍔などないのだが。
「おい!お前ら!こいつぁ俺一人じゃあちいときつい!お前らも手伝え!」
そんなことだろうと思いましたよ。
俺たちは参戦する。だがしかし、こいつは金属並みに硬いので攻めあぐねていた。ということで、ここは魔法だろう?そこで、魔法が得意なキーナーに、まあ俺でもよかったんだがキーナーはいかんせん力仕事ができない関係上後ろで暇を持て余しているし丁度いいだろう、座標を特定してもらうことにした。
おいキーナー!魔法は打てるか。
「え、ええ座標さえわかれば」
それさえわかればいいんだな。よし、じゃあキーナー、あいつに突っ込め。攻撃は俺がなんとかする。
「そんな無茶なーー」
無茶かどうかはやってみなきゃわからないだろう。ほら、早く。
「わ、わかった!いくわ!」
駆け出したキーナー。
身の危険を感じたのか蜘蛛の体がキーナーに向く。
俺はその後ろからキーナーを追いかける。
刹那、蜘蛛がキーナーに向けて脚を振り下ろす。
「キャ!」
キン!と甲高い音が響く。
ほら、早く。攻撃が来ても突っ走れ。大丈夫だ。俺が後ろにいる。
「そ、そんなこと言ったってカッコよくなんかないんだからね!」
・・・・・・やれやれ、これだから少女ってのは困る。男の良し悪しってのはかっこいいか違うかですかい?いいや、他にもあるでしょう。ほら、たとえば甲斐性だとか。そういう意味で言ったら今の俺なんて甲斐性の塊だね。前世には全日警なんてものがうようよしていたが、その全社員と比べたって遜色ないだろう。そんな取り止めのないことを考えながら攻撃を受け流していたのが悪かった。大蜘蛛の脚の勢いが剣で殺しきれずに俺の脇腹へと突き刺さったのだ。
「マイケル!」
キーナーの悲痛な声が響く。
佐々川さんがそれに気づいて一瞥し、状況を把握すると俺の前に滑り出て蜘蛛の追撃を防いだ。
「マイケル君!大丈夫ですか!」
佐々川さんが隣で一言。
ああ、俺は大丈夫だ。それよりキーナーを走らせろ。
「・・・・・・わかりました。キーナーさん!マイケル君は大丈夫です!走ってください!」
「わ、わかったわ」
貫かれた直後にわかったがこの蜘蛛の脚には毒がある。しかもそれは即効性があり、今はもう意識朦朧として立っているのがやっとだ。だが、倒れてはいけない。佐々川さんには迷惑をかけるが倒れてはいけない。キーナーが立ち止まってしまうからだ。これは自業自得だ。それに他人を巻き込んではいけない。俺は遠のく意識の中、キーナーが詠唱に入ったのを確認した。・・・・・・
学校が早めに終わった。




