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夜風が吹きわたり、月はほんのりと光る。星々は自身の存在を輝くことによって示し、漆黒は一里先を埋め尽くす。街灯に照らされた三つ編みはだれかの存在を待っているようだ。俺は彼女に、リンダ・ジョンソンに声をかける。
急に呼び出して一体何の用ですか。
「……まずはお礼を言わせて。ありがとう」
……何に対してですか。
「それはもちろん、トレイシー・マーセルを救ってくれたことについてだよ」
救ったわけではありませんけどね。
「いいや、彼女は救われたよ。少なくとも一時的にはね」
……で、話はそれだけですか?
「……マイケル君は優しいね。マイケル君もそろそろ気付いているんでしょ?私がトレイシー・マーセルの周りに男を集めた張本人だって」
……まあ、そりゃあね。あんたがあの時いないのは不自然だったので。
「それなのにそれを直接聞かないってのは、マイケル君の配慮なのかな」
……まあ、大体そんなもんでしょう。
「……少し、昔話をするね」
そういうと彼女、リンダ・ジョンソンは以下のようなことを言った。
トレイシー・マーセルは気の弱い子だった。リンダ・ジョンソンもそのような感じだったからすぐに打ち解けたらしい。そして二人でいつもつるんでいたわけだが、ある日、トレイシー・マーセルはこんなことを言った。生徒会長になりたいと。そして、弱い自分を変えたいと。リンダ・ジョンソンは彼女の過激なその思想に、心の中では反対こそすれ何もできなかった。なぜ過激か。それはトレイシー・マーセルの羨望は変えようのない外見にまで及んでいたからである。そして流されるままにトレイシー・マーセルは生徒会長に、リンダ・ジョンソンは副会長になった。一応選挙なんてものも精力的に活動したのだが、俺の例と同じように大半の生徒は黙ってても丸をするため効果なんてなかったらしい。まあ、それは置いておいて、とりあえず、トレイシー・マーセルは生徒会長になった。しかし、というべきだろうか、だから、というべきだろうか、彼女は絶望した。生徒会長になっても強くなどなれなかったからだ。だが、トレイシーはそれでも生徒会長の理想像を追い求めて気丈にふるまった。そして、いつからか自己と理想像の相克に悩むようになった。それは傍から、つまりリンダ・ジョンソンから見てもわかるほどだったらしい。しかし、続けるよりほかはない。そんな時、俺が入ってきた。リンダ・ジョンソンは、その一縷の望みにかけたのだった。
で、それは成功に終わったんですか?
「それって?」
ほら、俺にかけたんでしょう。
「ああ、うん、もちろん。大成功だったよ」
それならよかった。
「…………それでね、最後にお願いがあるんだ。トレイシーちゃんはね、ああ見えても本当はすごく弱い子なんだ。だから、いじめないであげて。そして、泣かせないであげて」
いやぁ、それは確約できませんね。何せ、トレイシーちゃんは泣き虫なんでね。
「ううん、そうじゃない。まあ、マイケル君は鈍感だから今は何もわからないかもしれないけれど、……うん!これだけは覚えておいて!トレイシーちゃんを泣かせないこと!」
は、はぁ。
俺はリンダ・ジョンソンの勢いに困惑しながらもうなずくしかできなかった。
今日はすごくいっぱいかけましたが、たまたまです。明日に期待しないでください。明日は新入生歓迎会に行ってきます。




