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桜、桜、今咲き誇る。刹那に散りゆく定めと知って。
そんな何処か風流を感じる桜を仰ぎ見ながら行く通学路。
血と汗の結晶である俺の通う高校の制服。
剣の柄を握ること星を数えるが如し。
勉学すること久闊を叙するが如し。
その甲斐あってクルーデン高校に合格した俺は、前世で言うなら超進学校と言っても過言ではない高校に合格した俺は、それなりの矜持と登校初日からずしりと重い鞄を持って通学路を意気揚々と進んでいた。
ああ、俺がこの高校に合格した旨を報告した際の父親の顔は印象的だった。
相好を崩して快哉を叫んでいた。
この高校は近場だったため、俺としても喜ばしい。
その日は貴族でも背伸びをしないと手が届かない外食店に行って豪華な食べ放題を頼んだっけ。
独り立ちして長年家族の温かみを忘れてた俺にはすこぶる衝撃的な経験だった。
通学路を行く、ていうことはつまり俺は歩いているわけだが、通学路に十字路があって俺は前世の記憶でそうそう、こんなところからラブコメなんてものが始まるんだと、これまたベタなラブコメのライトノベルを思い返しながら差し掛かろうとする時、卒爾に右から飛び出してきた人影があった。
俺は当然避けようとするが、それも間に合わず体が当たり、よろけた俺は転ぶわけだ。
そしてその人影は俺の上に覆いかぶさり、「ごめんなさい!」と可愛らしい声で呟くとすぐに立ちあがろうとするわけだ。
顔を一瞥すると、そりゃあもう全国の男子が鼻の下を伸ばす程の別嬪さんでおったまげたね。
しかし別嬪さん。一体そこで何をぐずぐずしておられるんですかい。
あなたのご様子だと大層焦っている風でしたが。
すると彼女は心を決めたかのような顔になってこう告げた。
「変質者に追われているんです!助けてください!」
少女の走ってきた方をチラリと見る。するとそこには黒のロングコートを着た怪しい男がいた。
「あいつをどうにかすりゃあいいんですか?」
「え、ええ」
そう言う少女にはまだ迷いが見える。
どうせ人に頼るのに抵抗感があるだけだろう。
それが高慢からくるものなのか、思いやりから来るものなのかは俺の知ったこっちゃないが。
まあ、俺が頼り甲斐のある人間だってことをそこでとくと見ておくがいい。
今後関わる可能性は、彼女のそのきらきら感からないと悟った俺は、どうせ最後の逢瀬だと思って出し惜しみをしなかった。
「桎梏よ、彼の者を縛れ」
刹那、怪しい男の周囲に暗黒のゲートが開いたかと思うと、ところどころ錆びていて鈍重な鎖が男に纏わり付き、地に押し倒した。
「これでいいか」
彼女は呆然としている。
それもそのはず。
この年代でこれほどの練度を持った魔法を撃つのは非常に稀有だからだ。
その様子を見た俺は満足して鼻を鳴らし、通学路を歩いて行った。
うかうかしてられっか!ええい!重複投稿や!