20
風よりも速く。光よりも速く。
地面を駆ける足は地を轟かし、全身全霊に前を向く上体は空に唸りをあげる。
敵の鮮血の舞に後塵を拝させ、気付かぬうちに頭と体との繋がりを断たれた敵は絶命する。
緑黄色の肌を切る鉛色の鋭利な剣はなおも次へと狙いを定める。
それは刹那の出来事だった。
俺がゴブリンの一団を一掃したのは。
まあ、大体こんなもんだろ。
「すごいです!」
佐々木さんは俺の素晴らしさに感嘆する。
と言っても佐々木さん、あんたもこれくらいならできるでしょう。
「いえ、やっぱり自分のと人のものを見るとでは体感が違うんで」
そんなもんか。
「そんなもんです」
「ほら、玲奈、あんたも道草食ってないでゴブリンの耳、回収する!」
「あ、はーい」
そう言ってトテトテとキーナーの方へ行った佐々木さん。
俺は一人になったので感傷に浸っていた。
時は遡ることおよそ数日前。
俺たちは担任にクラスに集められていた。
そしてその担任はこんなことをおっしゃったわけだ。
チーム戦でモンスター狩りを行うので準備しておきなさいと。
何でもそのチームとやらはクラス横断の3〜4人で組むらしい。
俺としては他のやつと組んでもよかったのだが、佐々木さんに泣きつかれて、そこにひょろひょろっといつのまにかキーナーも入ってきて今のチームになったのだ。
俺としてはもっと変化に富んだチームでもいいと思いますがね。
事実、あらゆることであんたらと組まされる俺はあんたら以外に友達ができてないわけだから何とも度し難い。
まあそんなこと言ったって決まっちまったもんを覆せるような胆力やら頭脳やらってのは、凡人な俺にはないわけだしここは甘んじて受け入れるしかないってことだ。
「あ!あそこに木の巨人がいます!」
「あー、ウッディトロールね。確かポイントが一番高かったし、倒してみましょうか」
はぁ、他の班は俺たちみたいに場当たり的にじゃなくて地図をよく見て色々計算しながらことを進めていると思うぞ。
「そんなこと言ったって仕方ないじゃない。私たちにはこの森は簡単すぎるんだもの」
はぁ、苦労を、受験期にした苦労をもう一度味わいたい・・・・・・
「何よ。あんたもずいぶん天狗になったものね。だったら中級ダンジョンにでも入ったらいいわ。きっと死に物狂いで苦労できるでしょうから」
・・・・・・いや、やっぱいい。
「はぁ、だったらさっさとーーあれ?玲奈は?」
・・・・・・確かに見当たらないな。
「あ!もうあんなところに!」
あー、勢い余ってもうウッディトロールに突撃してやがる。一人じゃ倒せないだろ。
「ほら!さっさと私たちも助けに行くわよ!」
あー、面倒くさい。
やっぱり東大目指したいんで浪人しようかなって思ったけど、そんな軽い心意気じゃあ浪人ってのはやっていけないでしょうから浪人生ってのは尊敬すべきなんだなぁと思いました。




