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「学生の小説はいかがですかー?」
働き者の佐々木さんは行く人来る人を呼び止めてはそう喧伝している。
佐々木さんの美貌にあてられた人々の長蛇の列が、外から伸びる。
やれやれ、あんたらは自分達が下心丸出しだってことに気づいた方がいい。
佐々木さんの隣を通るときなんか目一杯に息を吸い込んでいるではないか。
佐々木さんは、まあ間の抜けた子だから気づいていないが俺と同じ販売部門にいる女子たちを見てみろ。
須く白眼視しているぞ。
まあ、かくいう俺ももし友達じゃなかったら佐々木さんほどの美人には靡かざるを得ないが。
そのまま頬杖をついて販売部門に座っていると、キーナー、セーラ・キーナーが来た。
「ふーん、見るも無惨な体たらくね」
仕方ないだろ。事実、暇なんだ。
「へぇ、佐々木さんはあそこまで宣伝に頑張っているのに、あんたには頬杖をつく余裕まであるなんて、天と地の差ね」
もしくは雲泥の差ともいう。
「そんなこと聞いちゃいないわよ。で、売上の方はどうなの」
上々だ。佐々木さんのおかげでな。
「ほんっと、いい商売してるわね。図書委員会は」
で、用は何だ。
「その本を一冊くれるかしら」
いやだね。この本には俺が描いた小説が載っている。そんなものをお前に渡したら必ず小馬鹿にされるだろう。
「し、しないわよ。そんなこと」
どうだか。
「いいから売りなさい!」
いやだね。
「この!」
取らせねぇぞ!
「あ、セーラさん。来てたんですね」
その時、救世主・佐々木さんが宣伝から帰ってきた。
ああ神よ。何と慈悲深い。
「あんたからもなんか言ってやってちょうだい。こいつ、私にだけは本を売ろうとしないのよ」
「うーん、何でですか?マイケル君」
こいつが絶対俺を馬鹿にするからだ。
「そんなことないですよ。セーラさんはただ好きな人の作った小説が読みたいだけです」
「そうそーーへ?」
おいおい佐々木さん。それは目が節穴って奴だ。こいつが俺を好き?万に一つもーー
「そそそそそんなわけないでしょう!わ、私がこんなやつを好き?ふ、ふん!笑わせないでちょうだい!」
ほら、キーナーもこう言ってる。
「え?でも、私と一緒にいるときはずっとーー」
「とにかく!本はもういいわ!私は帰るから!」
そう言ってスタスタと帰っていったキーナー。
・・・・・・よし、俺たちも戻るか。
そう言って持ち場に戻ろうとすると、佐々木さんが俺の背中にこう言ってきた。
「キーナーさんには私から貸しておきますね」
・・・・・・勝手にしろ。
法政大学に受かったぞー!今日は焼肉パーティーだー!




