14
図書委員会の仕事中。
なあ、佐々木さん。
「はい」
暇だな。
「ええ、誰も人が居ませんもんね・・・・・・」
そこでだ、もし佐々木さんの前に3つの扉があるとしよう。
俺は余った紙にペンで3つの扉を描く。
このうちのどれか一つにはとても豪華な財宝が入っている。
「はい」
右から1、2、3として、佐々木さんならどれを選ぶ。
「私は・・・・・・うーん、ここは3を選びます」
よし、じゃあ次に俺が1を開けて何もなかったとする。そして佐々木さんはもう一度扉を変える権利を得るとする。さあ、変えるか?
「え?変えても変えなくても一緒なので変えません」
そう、直感ではそうなんだ。だが、これはモンティ・ホール問題と言って直感とは反する事象が確認されたんだ。
「と言うと?」
実は扉を変えた方が当たる確率が上がるんだ。
「へぇ!すごいです!」
・・・・・・前のめりになるほど驚いてくれたら俺としても嬉しいのだが、ここはいかんせん図書館だからな。
「あ、すいません・・・・・・」
まあ、誰も居ないからいいだろう。
「で、何でそうなっちゃうんですか?」
これは例えば100個と扉で想像してもらうとわかりやすい。
佐々木さんが初めに扉を選んだ時、当たる確率は100分の1だ。
そして、俺が佐々木さんの扉とあと一個を残して全部開ける。
ここで佐々木さんが選択を変えると2分の1の確率で当たるってことだ。
「なるほど。でも、そしたら変えなくってもその扉を選んだってことで2分の1になりませんか?」
いいや、それは「変えなかった」と言う選択肢になる。
もっと細かく言うと少し違うんだが。
「何が違うんですか?」
だから、このモンティ・ホール問題で1番の問題なのは3個の扉のうち一つに固執するってことだ。
誰も3個の扉のうち一個だけを選び続けないだろう?
これは、そのゲームの中の話じゃなくてゲームの回数の話だ。
例えば、ジャンケンで一生グーを出し続ける奴などいないだろう?
それと同じだ。
これは3個のうち一個を選び続けることによって起こる必然なんだ。
「はぁ、何だかわかったようなわからないような・・・・・・」
まあ、これはどこぞの大天才様が思いついたものだから凡人の俺たちには理解など難しいのさ。
「ーーっていう話をしてたんです。セーラさんはどう思いますか?」
「はぁ、これまたあんたらしいというか何というか・・・・・・」
キーナーは俺の方を見ながら嘆息する。
どうだ、面白い話だろう?
「ええ、あなたの偏屈さがとってもね」
「マイケル君は偏屈じゃありません!優しいです!」
ほら、佐々木さんがこう言ってる。
「はぁ、玲奈、騙されているわ。やっぱり男っていうのは甘言で女を誑かすものなのね」
おい、俺がいつそんなことをした。
「いつもよ」
おい、俺がいつからそんな天然女ったらしになった。
「さぁ、知らないわ」
はぁ、前にこいつは俺に頑迷固陋など何だの言ってきたがこいつの方が頑迷固陋じゃないか。いや、むしろ因循姑息とまで言える。
「もっと私にもかまってくれていいじゃい・・・・・・」
内省に夢中だった俺にはその呟きは届かなかった。
何で人気が出ないんでしょう。僕にはとても面白いように思えるのに。




