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白、青、緑は遥か先。
小太りで愛らしい赤の鉢巻をかけた少年が肩で息をしながら、もはや歩いている方が速いのではないかという速度でバトンを渡そうと迫ってくる。
赤のアンカーである俺は彼の走る距離が少しでも短くなるように、スタートラインに棒立ちで手を伸ばす。
俺の手にバトンが渡った。
刹那、粉塵が巻き上げられたかと思うと、俺がスタートした。
小太りの少年、お前はよく頑張った。
肩の力が程よく抜けた状態で伸び伸びと足を次から次へと運ぶ。
踏み切るとドッ!という音とともに地面が凹み、砂塵が巻き上げられる。
よし、緑は追い抜いた。
あとは白と青だけだ。ーー
「すごいよ!マイケル君!」
爛々と輝く目で前のめりになりながら俺にそう言うのは佐々木さん。頭には赤色の鉢巻が巻かれている。
「ほんと、あんただけは反則よね」
そう呆れたように宣うのはセーラ・キーナー。頭には青色の鉢巻が巻かれている。
小太りの少年、と俺の健闘により1位でリレーを終えた赤組は、圧倒的大差で勝っていた。
類例を見ないらしい。
玉入れでは佐々木さんと俺が、騎馬戦では俺が、大玉転がしでは佐々木さんが活躍した結果、始まってこの方紅組が一位を取りこぼしたことがない。
キーナーに聞くとどうやら青組では諦めムードが漂っているらしい。
諦めたらそこで試合終了だ。
とどこぞの名言を思い出しつつ、体育館に向かっていた。
昼食を食べるためだ。
まあここら辺でいいか。
「そうね、ここにしましょう」
俺とキーナーがブルーシートをひいていると、なにやら佐々木さんがもぞもぞしている。
どうした。
俺は佐々木さんにそう聞いた。
「い、いやぁ、そういえば今日の弁当作り過ぎちゃって食べきれないなぁって・・・・・・」
何だ。そんなことか。じゃあ俺が食べてやろう。
「本当!?」
何でそんな前のめりになるのかは甚だ疑問だが、そのまま無駄にするのも勿体無いだろう。ちょうど、俺は購買で買う予定だったからな。
すると今度は、らしくない、キーナーがもぞもぞとしている。
ええっと、なんだっけ?
もぞもぞ困る、もこそもこそ大変だだっけ?
で、キーナー、何をそんなにもぞもぞしているんだ。
「わ、私も弁当作り過ぎちゃったからあんたが食べなさい!」
・・・・・・何だ、お前らは体育祭の日には余分に作ってくるというDNAの塩基でも入っているのか。
ぐべら!




