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「ーーということで、図書委員会の説明を終わります」
窓の外を只管に眺めているだけで終わった図書委員会の説明。
「日替わり制・・・・・・」と何やら画期的なアイディアでも知ったかのような佐々木さん。
埋め尽くさんばかりのメガネ。
三々五々に散らばって帰っていく。
で、佐々木さん、あんたは一体何に感心しているんだい。
「い、いや別に何でもないよ。ただ・・・・・・」
ただ?
「キーナーさんと日替わり制にしようかなって・・・・・・」
何をだ。
「その、昼食を・・・・・・」
ああ、つまり交互に作ってこようってことか。
「ううん、そうじゃなくて、マイケル君と一緒にいるのを」
・・・・・・なぜ?
「私だってもっとマイケル君と二人で居たいし、セーラさんだって同じだろうから」
おいおいよしてくれ。そんなんじゃ俺が二人の美少女を侍らしているみたいだろう。
「美少女なんてそんな・・・・・・」
照れるところはそこか?もっと他にあっただろう。大体、友達なんてそんな長く一緒にいてもつまらないもんだぜ。今のこの距離が心地いい。
「友達・・・・・・」
ああそうだ。佐々木さんは別に俺に恋慕している訳ではないんだろう?だったら友達ってのは適度な距離がある方がいいもんさ。
「マイケル君は私と友達?」
ん?当たり前じゃないか。むしろそれ以外なんだっていうんだ。
「・・・・・・そう」
おいおい、そんな悲しい顔をしてくれるなよ。そんなに俺の友達は嫌か?だったら、そう、お前は親友だ。唯一無二のな。
顔を翻した佐々木さんは無理矢理な笑顔でこう言った。
「そうだね!」
俺はその悲痛さの意味をまだ知らない。
「ーーってな会話をしたきりだ」
「あんた、最低ね」
「なんでだよ。俺はあの後も佐々木さんの友達、いや、親友としての存在感を語ってやったんだぞ。つまり人事は尽くしたわけだ」
「どおりで最近学校に来ていないわけね」
「理由がわかるのか?なら教えてくれ。もしかして、誰かに脅されているのか?」
「そんなわけないでしょ。まあ、これはあんた自身の問題でもあるし、彼女自身の問題でもある。私が関わるべきことではないわ」
キーナーと話をした数日後。
佐々木さんが出し抜けに学校に姿を現した。
当然、俺は挨拶をするわけだ。
「よお、久方ぶりだな」
そして当然、この後来るであろう佐々木さんからの挨拶を待っていたわけだが、そんなことにはならなかった。
彼女は俺の方を仰ぎ見て、渋面になると口を開かずに去っていってしまった。
やれやれ、俺は何で嫌われているんだか。
これが理不尽というやつですかね。
それから数日、佐々木さんは学校に登校していたわけだが、俺と何の会話もなさなかった。
そこで俺は一縷の望みを託してキーナーに打開策を聞くわけだが、それも不発に終わり、とうとう八方塞がりとなった俺は、おっとり刀にこんな行動を起こした。
俺は何も言わずさっていく佐々木さんの腕を掴んだ。
ハッとしたような顔になった佐々木さんはそれを振り解こうとする。
当然、俺はそれをゆるさない。
「離して!」
何でだ。最近避けてるのは何故だ。
「マイケル君の顔を見ると辛いの!」
・・・・・・それは一体どうすりゃ治る。
「わかんない!」
だったら一緒に考えよう。
「嫌だ!離して!」
俺だってそれは嫌だ。
「離してよ・・・・・・」
目尻に涙を浮かべた佐々木さんは呟くようにそう言った。
・・・・・・とりあえず、ここは人が多いから裏庭に行くぞ。
俺は佐々木さんを裏庭まで引き連れて行った。
で、どうしたんだ。
「・・・・・・マイケル君はどうして私と友達なの?」
そりゃあ、仲がいいからな。
「仲がいいって何?いつも話しているってこと?」
ああ、大体そうだ。
「私は女性としてはどうなの?」
女性として?あー、そりゃあ、ここまで可愛いわけだし、彼氏の一人や二人、できてもおかしくないだろうと思っている。
「・・・・・・そんなの、ずるいよ。私だけ意識して・・・・・・私が馬鹿みたいじゃん」
その佐々木さんの呟きは一陣の風に流された。
「ねぇ、マイケル君。マイケル君は彼女を持とうとは思わないの?」
・・・・・・ないな。
「何で?」
だって出会いがない。
「出会いならたくさんあるよ。それに、マイケル君は顔も良いから作ろうと思えばすぐに作れると思う」
・・・・・・そうか、ありがとう。
「でさ、もし良ければその彼女にーー」
あー、いや、いい。
「・・・・・・何で?」
手伝ってくれるってことだろ?俺の彼女を作るのを。でもな、それは運命じゃない。それは上辺だけの関係に過ぎない。俺は運命の相手を求めているんだ。
「・・・・・・その運命に、私は入らないのかな」
何を言ってるんだ。片や平凡な俺で、片や見目麗しい美少女だぞ。うまく行ったって美女と野獣だ。物語ならそれも面白いかもしれないが、ここは現実。だからそんな宿世なんてないのさ。
「何でマイケル君はそんなに自分を卑下しているの?」
卑下なんかしていない。それが事実なんだよ。確かに良い高校に入れた。だが、大天才ではない。確かに俺は剣技やら体術やらが強い。だが、先駆者とはなり得ない。全部が全部、平凡の範囲内なんだよ。
「・・・・・・例えばマイケル君が自分は特別だと理解したとして、そしたら私と釣り合うかな」
ああ、まあもっとも、俺に特別なことなどないと思うが。
「ううん、少なくとも、私にとってはマイケル君は特別だよ」
・・・・・・そうか、ありがとう。
で、そろそろ教室に帰るか。昼休みもそろそろ終わりだ。
「そうだね」
あの後、今までの空白を埋めるかのように雑談しあった俺たちは、授業に合わせて教室に帰った。
やれやれ、やっと佐々木さんの機嫌もお直りですか。大層骨の折れることで。
長野




