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「はぁ!」
剣の鋒が眼前に迫る。
上体を逸らしてそれを避けると俺は蹴り上げた。
佐々木さんはそれを軽くいなすと連撃を繰り出す。
その一つ一つに落ち着いて対処する。
ガン、ガンと木剣のぶつかり合う音がする。
唸りを上げる木剣は、なおもスピードを上げる。
もう常人では目で追えないスピードだ。
刹那、俺の木剣が彼女を捉える。
「っ!」
横一文字に振り切り、佐々木さんの体が飛ばされることで距離ができる。
すぐに体勢を整えた佐々木さんはなおも木剣を構える。
ほう、まだやる気か。
俺も佐々木さんとは垂直になるように体の向きを変え、右手で木剣の切っ先を佐々木さんの喉元へ向けると、一気に肉薄した。
「っ!はやーー」
かろうじてそれを受け止めた佐々木さんは、しかしにわかの体勢だったのでよろけて尻餅をついた。
「ってて、やっぱりマイケル君は強いんだね」
まあ、それなりに特訓したからな。
今思い出しても受験までのあの特訓は地獄だった。
「あはは、私もこれでも結構特訓してんだけどなぁ」
昼休み。
「で、あんたは委員会決まったの」
ああ、入らないことがな。
「『入らないことがな(キリッ)』じゃないわよ。そもそも学校の仕組み的に入らないといけないの。・・・・・・佐々木さんは?まさかこのバカと同じく決まってないわけじゃないわよね」
「わ、私はマイケル君と同じところにしようかなぁって・・・・・・」
「はぁ、冷徹の女王が聞いて呆れるわ。だったらあんたから何か提案して見せなさいよ」
「わ、私は別に・・・・・・」
「そんなんだからこの馬鹿もつけあがるのよ。何かガツンと言ってやりなさい」
「・・・・・・私が今一番やりたいと思うのは図書委員会なんだけど・・・・・・」
「ほら、もう決まってるじゃない。万年ぼっちのマイケル君も誘ってあげなさい」
おい、形容詞に悪意があるぞ。
「マイケル君、私、図書委員会をやりたいんだけど、マイケル君もどうかな?」
座高的に佐々木さんが上を向くような形になり、自然に上目遣いとなっているその体勢で、さらにこてんと首を傾げたのでそうとういたいけに感じた俺は、いつのまにか肯んじていた。
「・・・・・・」
おいキーナー、何だその不満顔は。
「別に」
お前、ちょっと怒ってないか?
「怒ってないわよ!」
やっぱり怒ってるじゃないか。
「ふん!」
おいおい、何で怒るんだ。佐々木さんもなんか言ってやってくださいよ。
そう言ったはいいものの、あわあわと慌てる佐々木さんはこれっぽっちも役に立たず、俺が矢面に立ってキーナーをなだめすかすことでその日の昼は終わった。




