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032 森の魔女、アンリエッタ女王陛下が失踪した話を聞く

 私が氷河龍のところに行っている間に、エルトリア王国は大変な騒ぎになっていた。アンリエッタ女王陛下が突如失踪したから。


 騎士団長からの情報では、ジルベスタ様を公爵の位にあげて、婚約者として発表すると前国王陛下に直訴したところ、公爵にはするが、アンリエッタとの結婚は絶対反対、余を殺してから結婚すれば良いとまで、前国王陛下が言い放ったとのこと。


 父と娘が大衝突をしている時、王妃様が言わなくても良いのに、別の公爵家の令息との話を進めていることをつい言ってしまったため、アンリエッタ女王は激怒して部屋に篭ってしまった。


 数日しても女王が部屋から出て来ないので近衛騎士団が女王の部屋に入ったところ、テーブルの上にメモが一枚残されていた。ジルベスタと結婚出来ないのですあれば生きている意味がないという内容だったらしい。国王陛下、王妃様の理解のなさ、娘への無理解を訴える内容を長々と書いてあったらしい。


 とばっちりはジルベスタ様で、どうにかしろと前国王陛下から言われて、心あたりを探して、今は体力回復薬が手放せない状況になっている。マジで迷惑なことになっていた。


 アンリエッタはその性格から大貴族、中小貴族を問わずコアなファンが多く、アンリエッタのためなら死ぬ覚悟がある者が多い。そのためまったく行方が掴めないでいる。



 私の中ではアンリエッタのことは、どうでも良い。龍の子どもだけど、私も母親になったし、息子エルムントが悪魔サタンに殺されないようにしないといけない。第一私は息子エルムントの仲間探しを任されている。


 悪魔サタンについて、調べてみた。何度かこの世界にやって来ては、勇者に追い返されている。勇者の仲間については全員が英雄または英雄級でないとダメみたい。


 勇者の仲間たちは歴代冒険者の中でも抜きん出た実力の持ち主ばかりだった。はて、世界最高の冒険者たちは先の火炎龍との戦いでチリとなって消えた。どうしよう。


 英雄……、氷河龍認定の英雄、それは私だ。エルムントのパーティに私の参加が確定した。後は誰だろう、ドンゴンバルト国王だろうか? 候補にあげておいても良いけど、勇者の仲間になってくれるだろうか? 絶対周囲が止めると思う。ドンゴンバルトの頭脳にしてエンジンだもの。


 私の身近な人だと、ジルベスタ様とジュリアちゃんかなあ。でも、ジュリアちゃんの狙撃が悪魔に通じるかと思うと無理だと思う。


「ああ、もう世界中を巡って英雄たちを探す旅に出ようか!」


「私も一緒に行くわ」



「はあ?」私は顔を上げた。そこには現在失踪中のアンリエッタ女王が立っていた。


「アンリエッタ様、ここで何をされているのですか?」


「フェルドンにかくまってもらっていたの。この部屋空いてたし、転移陣もあるし便利だし」


 転移陣は私と同等の魔力がないと動かない設定にしてある。それ以上の魔力の人だと壊れるように、それ以下の人だと動かないように設定してあるのだけれど、どういうこと?


「アンリエッタ様、魔力があるのですか?」


「ええ、なんか私ね、先祖返りしたらしくて、父上にも母上にもほとんど魔力がないのに、私だけがこうなのよ。私が生まれて初めて魔力を使った時は、父上は母上の不義を疑ったのよ。父上は最低よね」


「私も一時不義の子って呼ばれていたから、ジルのことが他人事とは思えなくて、それが恋に発展したのよ!」


 うん、暑い、ウザい、その恋バナは。


「それで、いつ世界旅行に行くの? 当然ジルも参加よね。相思相愛の恋人を引き裂くマネはしないわよね……」


 アンリエッタが怖いよ。


「アンリエッタ様はこの部屋にいてください。騒ぎになりますから。私はフェルドン先生に旅のことを相談してきますから」


「良くてよ」



 私はフェルドン先生の研究室に飛び込んだ。「フェルドン先生、大変です」


「エルザ、うるさい、薬剤の計量に失敗したじゃないか! 僕の六時間を返せ!」とコーヘン君が叫んでいる。可愛い。


「ごめんなさい。コーヘン先輩。フェルドン先生はどちらに?」


「フェルドン先生なら、薬草園で薬草の成長の具合を見ているよ。どうもおかしいって言ってね」


 私は薬草園に走った。実際は窓から飛んだ。



「先生、大変です!」


「エルザ、窓から飛び出すのはよろしくない。ちゃんと出入り口を使うように」


「先生、いました。今お探しの方が……」


「ありゃ、見つかってしまいましたか。これは困ったね」


「で、エルザは通報するのかな」


「そんなことはしません。ご自身で帰ってもらいます」


「それねえ、無理なんだよねえ。絶対にアンリエッタ様とジルベスタの結婚を国王は認めないから。実はねえ、ジルベスタの母親は魔女だから」


「えっ、ジルベスタ様のお母様は酒場で働いていたのでは……」


「ジルベスタにはそう言ってあるが、実際のところは、ジルベスタの父親が贔屓にしていた体力回復薬と魔力回復薬を作っていた魔女との間に出来た子どもだから、アンリエッタ様との結婚は絶対無理なわけ」


 ええとそれだと、ジルベスタ様は、ジルベスタ様の父上と私の母さんとの間に出来た子ども。つまりジルベスタ様は私の兄、頭がクラクラして来た。


「ちなみに双子。もう一人の子は女の子だったので、魔女が育てることにしたそうだよ」


「私とジルベスタ様と年齢が違います。ジルベスタ様は十七歳で私は十六歳なんですけど」


「エルザのお母様が間違えた。たぶんすぐに気付いたけれど、どうでも良いので訂正しなかった。誕生日はジルベスタとエルザは同じはず。一度ジルベスタに尋ねてみると良い」


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