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024 森の魔女、出陣する

 私は魔法兵の制服を着て、腰に丸薬をぶら下げて、仮面をつけている。他の三人も制服、丸薬、仮面と同じ装いで、身長も魔法兵にしては小柄だった。


「私は死に場所を求めて現役復帰を願い出たのですが、この丸薬を飲むと若い頃より強いファイアボールが撃てます。ただ、連発すると体力が持ちません」


「体力がキツくなったら必ずこの薬を一本飲んで、戦場を離脱してください。ここはまだ皆さまの死に場所ではありません。この戦いはまだまだ続きます」


「了解です。黒の軍師殿、我々はあなたに従います」と三人が跪いた。魔法兵として最大の敬意を払ってもらった。


「私たちの任務はただ一つです。ドンゴンバルトの砲兵部隊を潰すことだけです。それ以外のことに魔力は使わないでください。防御は私に任せてください。皆さまは攻撃に集中してください」


「了解です!」三人揃ってピッタリと返事が返って来た


「では、出陣です」



 ドンゴンバルトの陣地を私たちは蹂躙じゅうりんしている。砲兵部隊はあっさり片付いてしまったので、三人のおじいちゃん魔法兵が満足するまで、ファイアボールを撃ちまくっている。


 ドンゴンバルトと諸国連合軍が動き出した。撤退してくれた。エルトリアは助かった。たった四人では戦局は変えられるないもの。


 おじいちゃん魔法兵も体力回復薬を飲んだ。私たちは秘密兵器という扱いなので、エルトリアの軍には戻らず、そのまま騎士団の魔法兵の控え室に戻るように、ワルド副団長から言われている。




 ワルド副団長が笑顔で迎えてくれた。「ご苦労だった。君たちの存在は機密事項として扱われている。酒場等で武勇伝を語らないように。軍師殿は少し残ってもらいたい。解散」


 私を残して、残念そうにおじいちゃんたちが控え室を出て行った。話したかったのだろう。


「軍師殿、ジルベスタたちがエッシェンバルトの王城に侵入し、王宮を大混乱に落とし入れた。エッシェンバルトの国王は、ハインツ王子の反逆罪を取り消し、ハインツ王子は農民兵部隊の解散を命じた」


「エルトリアの義勇兵は、これを受けてエルトリアに帰還することになった」


「農民兵の部隊は解散ですか? 罪を赦されたのはハインツ王子たちだけですよね。農民兵の人たちが危険では……」


「ハインツ王子たちは、ドンゴンバルトに引き渡された」


「えっ、どうしてですか?」


「ハインツ王子の部隊がドンゴンバルトの部隊を襲撃した罪だそうだ。エッシェンバルトの罪は赦されても、ドンゴンバルトの罪はそのままだそうだ」


「引っ掛けられた訳ですね」


「エッシェンバルトがドンゴンバルトの要求は拒否出来ないのは、ハインツ王子たちも知っていただろうに。赦されたってことで舞い上がったのだろう」


「我々としてはエッシェンバルトの王宮に侵入した魔法兵、砲兵部隊をあっさり片づけた魔法兵の存在を、ドンゴンバルト国王に認識させたことで、しばらく時間が稼げる」


「アンリエッタ女王陛下が、軍師殿に爵位を与えたいと言っているがどうする」


「遠慮いたします」


「我々も軍師殿は謎のままでいてもらいたいので、軍師殿の存在もドンゴンバルトがエルトリアへの侵攻を躊躇ためらわせる、要因の一つになっているので。ジルベスタたちが戻って来たらまた、呼び出すので、それまでは自由にしていて良い」


「ありがとうございます」


「ジュリアなのだが、少々困ったことになっている」


「困ったこととは……」


「騎士たちが、毎日私のところにやって来てはジュリアと別れてほしいと、行ってくる」


「はあーー」


「ジュリアを自分の正妻にするそうだ」


「それはそれは、何というか凄いことに……」


「ジュリアの婚約者になるために決闘で決めるというバカも出ている。悪いが、ジュリアを研究所で保護してほしい。騎士団に置いておくと不測の事態が起こりそうなのだ」


 美少女の力、恐るべし。


「承知しました。研究所で保護します」


「助かる……」


 ワルド副団長はお疲れのようだ。目の下にクマが出来ていた。化粧で隠しているが。



 私が研究所に戻ると、困り顔のフェルドン先生がそこにいた「フェルドン先生、ここで何をされているのですか?」


「エルザを待っていた。アンリエッタ様がエルザに会いたいと言って来られている。今は実験中で手が放させないと言っても帰ってくれない。コーヒーは私が淹れてアンリエッタ様にお出ししておいた」


「何の用なんでしょうか?」


「さあ……、すぐに来てほしい。午前中から来られている」


「今は二時過ぎですけど!」


 私はすぐに応接室に向かった。


 そこには苦りきった表情の侍従長と満面の笑みのアンリエッタ女王陛下がいた。




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