おばあちゃん大好き
『玄関チャイム』
古い町並み 長屋の端っこ
白い塗り壁 茶色の引き戸
脇の簡素なチャイムを押すと
小柄な人影 覗き窓
老女の声で
「…はい? どちらさん?」
いぶかしむよな 声色に
わざと少しの間をおいて
元気な声で おどけて返す
「おばあちゃん!」
「…!
あいよ!!」
嬉しそうな人影が
窓から急いで遠ざかる
引き戸に駆けよる つっかけの音
「来てくれたんか!
まぁ、入り!
ご飯は食べて帰れるんか?
今晩泊まっていけるんか?」
辛い時には鳴らしてしまう
心の中の玄関チャイム
長屋はこの世にもう無くて
いまはあおぞら駐車場