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プロローグ:小さくも確固たる理想
ここはパラクミ。秘境と呼ばれる、普通の生命体では感知できない特殊な土地にある、小さな村だ。外からアクセス出来る者は限られている為、来客は0に等しい。
そんな世界から隔離された村で昨日、一人の男が死んだ。数十年前に外界より現れ、窮地を救った、ここの民にとっては英雄とも呼べる男。
英雄の死に、村中が非情に包まれている中、それとは違う、激情を寄せる青年が一人。
その青年は村はずれにある丘の上で、夜空にただ一人呟いた。
「やってやるさ」
春。新芽が地より顔を出し、陽に近づこうと必死に成長する季節。
時代は移ろぎ、世界は雪解けの予感を感じ取る。