05 九尾狐の親子!?なんだか両親のことをを思い出します...
柊花蓮のうわさ5 黒より白が好きらしい。
「………あれっ?」
九尾狐の突進の衝撃を覚悟していたが、実際には衝撃なんてなく、むしろ転んだ衝撃すら感じなかった。
「っていうか、もふもふだ…」
何が起きたのか確認してみると、九尾狐は突進してきたのではなく、転んだ私を包んでくれていたのだった。
予想外のことに困惑していると、九尾狐は更に私の顔を舐めてきたり身体を撫でてきた。
「なになに?どういうこと…」
私より大きな九尾狐に抵抗できるわけもなくされるがままになっていると、街に入る前に貰った真っ黒の玉がポケットから落ちてしまった。
すると、どういう訳か突然九尾狐は私をくわえて森の中へと疾走しだした。あまりの速さに驚いたのもつかの間、近くにあった洞穴の中に入ると、九尾狐はすぐに走るのをやめて再び私を包む体勢に戻ったのだった。
「ふう……じゃない!どうすればいいの!?」
いつの間にか九尾狐に包まれてる状況に安心感を覚えていることにセルフツッコミを入れながら、状況を整理しようとなんとか正気を取り戻した。
「うーん…気持ちいい…」
しかしそれももふもふの前にはすぐに潰え、今日はこのまま寝ちゃおうかな…とか思い始めた時、九尾狐の尻尾の間から何かがもぞもぞと這い出てきた。
「きー」
「きー?」
すぐ近くから変な鳴き声が聞こえ、何かと思って確認してみると子狐がこちらを見つめていた。
「かわいい…」
擦り寄ってきた子狐を抱きしめると、子狐はすやすやと眠り始めた。
それを見た私も、心地よいまどろみの中に身を委ねるのだった。
☆☆☆★★★☆☆☆★★★
「………」
次に目覚めた時、辺りはもうすっかり明るくなっていた。
普段あまり夢は見ない私なのだが、昨夜は珍しく夢を見た。それは幼い頃に両親と遊んだ時の夢で、目が覚めた時には少し涙が流れそうになった。
「ききー?」
すっかり俯いて考え込んでしまった私を、既に起きていたらしい子狐が心配そうに見つめてきた。
しかし、それでも私の気が晴れることはなく、考えるだけで辛くなってきた私は再び眠ることにしたのだった。
「……なんの話?」