04 不可解なパーツ発見!? もしかして所謂魔力ってやつでしょうか...
柊花蓮のうわさ4 猫を飼っていたらしい。
辺りが暗くなってきたことに焦った私は、頭をフル回転させてなんとかテントを完成させ…られなかった。
「ていうか、明らかに欠陥品だよねこれ!?」
ここまで組み立てられないのは流石におかしいと思って一度全パーツを確認してみたところ、明らかにパーツが足りていないのだ。
足りていないというのは『本来あるべきパーツがない』という意味ではなく、『パーツは全てあるのだがそのパーツでは明らかにテントとしての機能を成していない』のだ。
何故こんなテントなのか全く心当たりがない──というと、嘘になる。実はあるのだ、不可解なパーツが一つ。
それは、今日街に入ろうとした時にあったあの謎の球体に似たものだ。
そう。私になんの反応も示さなかったアレである。
「これは……まさかね」
一瞬、頭に『魔力』という文字が浮かぶ。
すぐにそんな馬鹿なものと思い直したが、私がそれを否定できる根拠は全くなかった。
「いやいや…変なことが起こりすぎて変な思考になっちゃってるだけ…だよね…」
しかし、どんなに頭で否定しても、その『魔力』という文字は脳裏に焼き付いて離れることは無かった。
もしかしてもしかすると、あるのかもしれない。魔力というのかはわからないが、私の知らない何かの『力』が。
「うーんと…とりあえず今夜はどうしよう」
このテントを組み立てられないとなると、どこか代わりに部屋替わりになるところを探さなければならない。何が起こるかわからない異世界で、その辺に転がって寝るなんて絶対に嫌だ!
しかし、当然そんな場所に心当たりがあるはずもなく、今から森に入って場所を探すのも危険だと思ったが、少しだけならと森を探索してみることにした。
それから少しして、私は早速安易に夜の森に入ったことを後悔していた。
「ノーノー……私、敵意…ナイヨ」
森を探索して早数分。私は、今まで見たこともないような生物と遭遇していた。
それは、大きな狐だ。九尾狐というのだろうか。ただでさえ私より大きな図体に加え、その図体より大きな尻尾を携えていた。
その九尾狐はこちらをじっと眺めていて、私はかつて聞いたクマから逃げる時は顔を背けないようにしながらゆっくり後進するというアレを試していた。
──いや、まあ相手はクマではないのだが…
「大丈夫…大丈夫…害意、ナイヨ…」
九尾狐が動く気配を見せないので少し余裕の出た私は、そういえば街に入る前に出会ったあの巨大な蜥蜴もだし、この世界の生物は巨大なのかな?とか別のことを考え始めてしまった。
「あっ……」
ああ、私はなぜこうも愚かなのだろうか…
すぐに無駄なことをして自滅してしまう。安易に森の探索なんて始めてしまったのもそうだし、今気を抜いて草に引っかかってしまったのもそうだ。
「あ…来た…終わった…」
急な事態に脳が覚醒したのか周りが全てスローモーションのように見える中、転けた私に驚いたのか、九尾狐がこちらに飛び込んできた。
「……っ」
絶賛浮遊中の私にどうにか出来るわけもなく、私はその九尾狐の突進を受け入れるしかないのだった。
「猫っていいよね…」