②
男は首の骨を折り、少年の体がだらりと脱力し、力がなくなるのを確認して大声で話し出した。
「おい!言われた通り殺したぞ。早くここから出せ。刑務所よりも気味の悪いとこに居たくねえんだ。」
刑務所にいた時、弁護士以外で面会することのない俺に面会を求めてきたやつがいた。
「見たことのねえ顔だな。被害者の親族か?あいにく罵倒なら法廷やらでさんざん聞いたつもりだがまだ言い足りないのか?」
目の前に座っていたのは自分と同じ年くらいの探せばどこにでもいそうな男性だった。
「残念ながら、被害者の親族ではないんだ。私は君と交渉をしに来たんだ。」
「何の交渉だ?最高裁でこのまま死刑宣告されるようにってか?」
「いや、君を自由にする交渉だ。」
なんだ?新手の詐欺師か?俺みたいな奴よりもよっぽど金をむさぼり取れるやつなんているだろ。そうじゃなかったとしても怪しすぎるな。俺が捕まったのも仲間に裏切られたからだしな。早く帰ってもらうとしよう。
「そんなうまい話があってたまるかよ。じゃあな。」
立ち上がって、扉に近づいたとき
「明日、君は外に出られるだろう。」
俺は振り返らずそのまま扉をあけて面会は終了した。
次の日の朝、看守が「釈放だ。」一言告げ、俺は刑務所を出ることができた。刑務所の前に真っ黒な車が止まっており、ドアが開き、昨日会った男が出てきた。
「やあ、昨日ぶりだね。」
「どんなトリックを使ったか知らねえが昨日の話を聞く気になった。聞かせてくれ。」
「よかったよ。常識的な人間で。じゃあ、説明するね。」
男の話は俺にとってはなんらデメリットがない話だった。ある少年を殺せればシャバに出られるようにする、ただそれだけだった。詳しくは聞かされていないがかなり厄介なやつなのだろう。
「その少年から情報を引き出したりはしなくていいのか?」
「しなくていいよ。ただし、君は本気で殺しにかかること。殺すときに遊ばないこと。」
結構拷問とかして殺すのも楽しいんだけどな。シャバに出れるなら、言うことは聞いとくべきだろう。
「分かった。」
「じゃあ、これからその少年がいる場所に移動するから車に乗って。」
俺はうなずき、車に乗った瞬間意識がなくなった。
気が付くと刑務所のような部屋のベットで寝かされていた。
「すまないね。ここまでの道を知られるわけにはいかないから手荒なことをしてしまったよ。」
「気にしてない。」
起き上がり、軽くストレッチを行い、
「その少年はどこにいる。」
「そう焦らなくても今から案内するさ。」
部屋を出て、エレベーターに乗り、目的の階に行く。エレベーターを降りると、一本道の廊下に左右にガラス張りの部屋がいくつもある。歩きながら、覗いてみると肌がただれて、あーうーと言って部屋を徘徊するもの、足や腕が4本あるものなど現実に存在しているとは思えない人間がいた。そして、なによりその全員が目の前にいる男と同じ顔をしていることが気味が悪かった。
「君にも刺激が強かったかな?着いたよ、ここで待ってて。この扉が開いた瞬間出てきた人がその少年だよ。この部屋から出さないようにしてね。ああ、あとこれ少年に渡しといてね。」
ナイフを渡し、男は来た道を戻っていった。裏切った仲間たちに復讐するためにもシャバに出ないとな。気合を入れ直して扉の前で待機していた。
「おい!なんか返事しろよ!」
しばらく待っても返事がなく、俺は苛立ちを隠せずそこで倒れている少年の死体を蹴った。少年を蹴った時違和感を覚えた。仕事を完遂したはずなのに決定的なミスがあった、そんなときと同じ感覚だ。違和感の原因を探す。そして、気づいた。こいつ、首の骨を折ってあらぬ方向に曲がったままのはずなのに元通りになってやがる。ひんやりした汗が背中をつたっていった。おいおい、首の骨折っても元通りになるやつの殺し方なんて知らねえぞ。
俺がたじろいている間に少年は目を覚ました。




