①
ひんやりした感触が伝わってきて目が覚めた。周りを見渡すと教室くらいの大きさの部屋で壁も床も真っ白なコンクリートのようだった。現状確認をしていると聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「おはよう。調子はどうかな?」
「なぜ俺を騙したんだ!?」
壁を思いっきり叩いた。大きな音が鳴ったと同時に手にじんとした痛みが伝わってきた。
「騙してなんかないさ。これから手術する人間が混乱しないように気を使っただけさ。」
手術だと?俺は体に異常がないか確認をした。しかし、特には変わりはないようだった。一度深呼吸をして、考えをまとめる。
「異世界に行くために未知の病原体に対しての手術か?」
「それもある。」
「それも?」
「それはこれからわかるさ。これから訓練を行ってもらいます。とてもつらいと思うけど頑張ってね。」
音声の切れる音がし、静けさが部屋を支配する。勝手に手術するような奴の思いどうりになってたまるかよ。脱出して逃げてやる。
壁をつたって出口がないか確認していると境目を見つけた。押してみると壁が動いた。俺で逃げれると思った瞬間、下腹部に衝撃が走った。そのまま、崩れ落ちて下腹部を抑えた。
「こんな弱そうなやつを殺すだけでシャバに出れんのかよ。」
男はにやりと下種な笑みを浮かべていた。見た目は30代後半くらいでガタイはがっしりとしていた。
「お前…は…?」
「通りすがりの殺人鬼だよ、ほらやるよ」
目の前にナイフが転がってきた。これでこいつと戦えってことか?
「ま、待ってくれ!連れてこられたばっかりで何が何だかわからないんだよ。お前は何か知ってるんだろ?」
状況把握と同時に時間稼ぎでもあった。殺人鬼と戦うなんて無理だ!俺は恐怖に支配されていた。
「知らねえよ。」
一言発すると顔面に蹴りを入れられ、地面に倒れこむ。鼻から温かい液体が出るのを感じた。
ふざけるな、こんなのあんまりだ。目に涙を浮かべ、地面に落ちているナイフを握りしめその場から逃げた。
「ああ、懐かしいなこの感じ。人が必死になって逃げてる顔が何よりもおもしろいからやめられないんだよなあ。」
どうするどうする?こちらが有利なのはナイフを持っていることくらいだ。だめだ、なにも思いつかない。考えがまとまらないまま、壁際まで追い詰められた。
「さあ、もう逃げられないぞ。どうするんだ?」
「く、来るなああああ!」
マンガのチンピラがやられかけた時にするようにナイフを振り回した。
「なんだよそれ。」
足を蹴られて、体勢を崩されたところを顎をかすめられ、脳震盪を起こし倒れこんだ。
「俺は運がいい。しくじって死ぬのを待つだけだったがこんなに簡単にシャバに出られるんだからな。じゃあ、サヨナラだ。」
「死に゛たくない゛、助けてくれ!なんでもするからあ!」
俺にできることは懇願することだけだった。涙を流し、醜態をさらしただただ許しを乞う。
「バカか、お前は。殺そうとする相手に助けを求めてどうするんだ。」
男は俺の首を曲がらない方向に曲げて鈍い音がなった瞬間意識がなくなった。




