プロローグ④
「それってどういう…?」
俺は一気に頭が真っ白になった。
「そのままの意味だよ。相沢 宗太死んだんだ。昨日、事故で。」
田中さんは微笑んだままそう答えた。
「じゃあ、ここにいる俺は誰なんだ!?」
「今日、君は誰でもなくなった。この世に存在しない人間であり、世界初の異世界移転の被験者第一号だよ。」
さっぱりわからない。はぐらかすような言葉に対して声を荒らげるように言った。
「ふざけんな!俺にもわかるように説明してください!」
「わかったよ。そんなに焦らなくても説明するさ。まず、異世界についての研究は世界で一番の機密情報だ。一般人が知ることはない。そして、君は異世界転移の素質があることによりこの研究所に連れてこられた。じゃあ、君が突如消えたらどうなる?周りは混乱するよね?マスメディアやゴシップ記者に探られるのは止めるのに労力がかかるから面倒なんだ。そうならないように君のクローンを作って事故に見せたんだ。よくある事故死だ。これで君がいなくなって不思議に思う人はいないはずだ。これでいいかな?」
「納得いくわけないだろ!第一、クローンなんて存在しないはずだ!」
怒りや混乱によって考えがまとまらない。
「あまり怒らないでくれよ。これが最善なんだから。僕はクローンの存在よりもスライムの存在のほうが信じられなかったけどね。証拠が見たいんでしょ?」
田中さんはポケットからボールペンくらいのポインタを出して真っ白な壁に向けた。そうすると真っ白な壁に映像が映し出された。
おそらくコンビニの監視カメラの映像であり、雑誌を立ち読みしている俺の姿があった。昨日、コンビニには寄ったが俺は立ち読みなんかしてない。つまりはこの映像に映し出されている俺は別人の俺だ。
しばらく映像をを見ているとコンビニの外から車が突っ込み、雑誌を読んでいる俺が轢かれ、大量の血が出ている映像が映った。
「嘘…だろ。」
「嘘じゃないさ。今頃、お通夜でもしてるんじゃないかな。」
田中さんは軽い感じで答えた。
「他に方法はあったんじゃないんですか!?例えば、クローンに生活させて4年たったら入れ替わるとか、行方不明にするとか!」
「バカなのかい?世界で一番の機密情報を持った人間を普通の生活に戻すわけないよ。ましてや高校生の君がうまく周りに嘘をついてごまかせるわけないでしょ。」
バカにされたことによって一層怒りが込みあがるが言われれば納得してしまった。仕方ないと割り切ったほうがいい…のか?深呼吸をして、できるだけ落ち着いて聞いた。
「研究所で一生生活するって言ってましたけど、4年後のお願いで元の生活にしてくれと言ったらできますか?」
「その願いは僕たちには叶えられない、ごめんね。でも、研究所には一通りの設備が整っているから生活には困らないよ。」
ダメ元で聞いてみたけどやはりダメだったか。
「じゃあ、4年後は戻ってきたら何をするんですか?」
「研究の手伝いだね。」
「具体的に何をするかは分かりますか?」
「異世界から帰ってきた初めての人になるだろうから、身体検査から始まって定期的に異世界に行ってもらう感じになるのかな?これはあくまで僕個人の見解になるから参考までにとどめといて。」
「分かりました。」
とりあえずは一年間訓練と実験をやればいいんだな。一部説明で混乱はしたが概ね納得したしなにより異世界に行くのは楽しみだ。俺Tueeeとかできるようになるのだろうか。異世界で無双とかしてみたいな。他にぱっと浮かぶ質問はないな。
「俺からの質問は以上です。」
「分かったよ。早速で悪いんだけども、実験をしてもらう。時間は限られているからね。最初いた部屋に戻ろう。」
そういうと田中さんはエレベーターのほうへ歩いていく。その後ろをついていく。エレベーターに乗ってる最中田中さんが話しかけてきた。
「そういえば、忘れてたよ。相沢 宗太は死んだことになってるからこれから君はコードネームで呼ばれることになるし、今後自分を名乗るときはコードネームで名乗るように。」
「分かりました。もう決まってるんですか?」
「ああ、決まっているよ。コードネームはファーストだよ。」
異世界に行く人間が初めてだからファーストか。なんのひねりもない名前だな。コードネームとか自分で考えてみたかったけどな。
話をしているうちに目的の階に到着し、自分がいた角部屋へと戻った。
「さて、ベットに横になって。まずは異世界に行った時に未知のウイルスなどに感染して死なないようにこの薬を飲んでもらう。副作用で眠くなると思うが気にしないで。」
田中さんはカプセルの錠剤を2錠と水の入ったペットボトルを渡してきた。
俺は軽くうなずき、薬を飲んだ。その数分後、急に猛烈な眠気が来た。こんなに早く薬は効くものなのか?
「すごく眠いんですけど、これって薬が効いてる証拠ですか?」
「そうだね。とても効いてと思うよ。なんせ睡眠薬だからね。」
「は?」
眠気に襲われながらも嘘をつかれたことは分かった。
「なんで嘘を…ついたんですか?」
「うーん、暴れないようにしてもらうためかな?正直に今から人体実験しますなんて言ったら暴れるでしょ?」
そうか…俺は最初から騙されていた…んだ…。そこで俺の意識は途絶えてしまった。




