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異世界なんか行きたくなかった  作者: 耳かき
地球編
10/10

「今ちょうど君が来て、一か月たったみたいだ。現時点ではスケジュールより3日遅れているよ」

無機質な音声でもう聞きたくない声が響いた。最初に自由に行動できる時間について聞いてから一日ごとにスケジュールよりどのくらい遅れているか知らされるようになった。

一か月というのは昔の俺にとっては短い感覚だった。しかし、ここに来てからの一か月は何十倍にも長く感じた。24時間ずっと動いているからというのもあるのかもしれない。今の俺は手術すべてを終えている。最後に行ったのは4日前で感覚拡張手術。3時間くらいはいろいろなことに反応出来すぎて体の動かし方に困ったがもう慣れた。そして、得た能力の中で最も苦しられ、便利だったのが瞬間記憶能力だ。ずっと覚えていることで人を殺した時の感覚や感情までも記憶してしまう。しかし、戦闘経験もすべて記憶できる点はかなり便利だと思った。ここ一週間は一回も死んではいない。

そして、俺は戦闘中でもある。1対4のこちらは無手、あちらは小火器を持っても戦闘だ。それもおそらく軍人だろう。グレネードランチャー、機関銃、ショットガン、ライフルを持ち、右腰にナイフを装備している。誰からでも大丈夫だろうが、ショットガンのやつから殺そう、当たったら痛そうだ。そう決めると俺は軍人たちが銃を撃つよりも早くショットガンの軍人に近づいて、右腰のナイフを抜きそのまま首を切った。まずは一人。そのまま死に体な軍人を盾にしながら機関銃の軍人の近くまで進み、ショットガンを撃った。うまく当たったみたいでそのまま倒れる。これで二人。グレネードランチャーをこちらに撃つことを音そして目で察知しその場から離れる。数秒後に爆音が鳴った。その数秒の間にグレネードランチャーの軍人に近寄る。ライフルを撃ってくるが弾を目視できる俺にとっては避けることは容易い。避けながらもショットガンの射程距離まで行き、撃った。当たったみたいだが浅い。俺は素早く目の前まで行き、ナイフでとどめを刺した。三人目。ライフルの軍人はあきらめることなく撃ってくる、が俺に当たることなくじわじわと距離を詰められる。ライフルでは不可能と判断し、ナイフに持ち替え近接戦闘へとシフトする。軍人が正確に首筋を狙ってくる、しかしそれはブラフで本命は足を崩すこと。俺は軍人と密着するくらい前に出て、ナイフを心臓に刺す。軍人は力をなくして俺の方に倒れこむ。4人目、これで最後。俺は軍人を受け止め、ゆっくりと仰向けにして寝かせた。

――3343人。俺が瞬間記憶能力を得てから殺した人の数だ。たとえ殺人犯やそれに近しいやつらだったとしても多くの人生を終わらせてしまったということが罪悪感を強く感じさせた。俺が殺した奴らはおそらく地獄へ行くのだろう。でも、俺は地獄よりもっとひどいところへ行くだろうと思った。死んだ後は何もないと思いながらもこんなことを考えてしまうことにも現実逃避をしているみたいで嫌気がさした。

次の人間が入ってくるまでの少しの間、ここに来る前の事を思い出すことが多くなった。特に家族や友人といるときのことを。あの時は自分は恵まれていないなんて思っていたが、今考えれば贅沢だったのかもしれない。周りと比較して劣等感を抱いていたことは確かだ。だからといってどうにもならないわけではない。努力すれば無くすことだって可能だったはずだ。モテない、このことも顔が不細工なら金を貯めて整形すればいいし、人見知りならたくさんの人と話して離れしていけばいい。羨ましがるだけで何もしない、その現状を嘆くべきだった。俺の怠慢が作り出した現状だったのだ。しかし、後悔しても過去は変えられない。いずれ、研究所の奴らを殺し、自由になったら一からやり直して平和に生きよう。俺は強く決意した。

「最初の頃よりもたくましくなってうれしく思うよ。そして、次のステップへ移行するよ」

田中は嬉しそうな声音で言った。

扉から入ってきたのは一人の青年だった。ハーフのようで身長は180cmくらい、髪は金髪でイケメンだった。

「君が異世界に行くまでのパートナーになってもらう、γくんだよ。仲良くしてね」

俺は田中の意図が読み取れずただ立ち尽くすだけだった。


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