No.408020
ここへきてからもう1時間になるだろうか。身動きの取れない体を何とか駆使して今ある情報を整理してみると、今自分は、
・椅子に縛られている
・部屋に閉じ込められている
・なんか知らないけど脱出しないとまずそう
な、感じか。とりあえずこの状態なんとかするか。腕ごとしばられてるから手は動かせるけど、体は全く動かない。縄切る物必要だ。あ、足も一応動かせる。
手をがむしゃらに動かしていると椅子の裏に何か張り付いていることに気付いた。何とかそれを取ろうと手で少しずつずらしていく。ある程度動かした、と思ったところで、手に何か落ちる感覚がした。それを落とさないように握る。それはナイフだった。
ナイフ……。こんなもの椅子の裏に張り付けておくなよな。まったく。怪我したらどうすんだ。……でもこれで縄を切れる。
慎重に、少しずつ握りを変え、縄と自分の体の間にナイフを入れる。力の入れ方が難しい。でも確実に縄は切れていった。
そうするころ、約10分。実際はもっと短かったかもしれない。けど、それよりだいぶ長く感じられた。縄は切れた。あとは力を入れればほどくことができる。フンッと勢いよく腕を外に向けて力を入れると、簡単にほどくことができた。立ち上がりあらためて部屋を見回す。長時間椅子に座っていた所為で体がバッキバキだった。腰が痛い。
椅子から見える北の方向(時計で言うと12時の方向)にあったドアに向かって歩いていく。ドアノブをひねるとあっさりドアは開いた。
あまりのあっけなさに口が開いたままふさがらなかった。恐る恐るドアを弾き、ある程度開ける。何も起こらないことに安心すると、そのまま外へ足を踏み出した。