用心棒
タカユキは走ってくるアウムに飛びついた。連射によって高温になった機銃の銃身をつかみ、地面に引き倒す。
銃身は焼けるように熱かったが、離すつもりはなかった。
おれの体はどうなったっていい。大切な人を守るんだ。
タイヤを空転させて暴れながら機銃を乱射するアウムを、タカユキは全力でおさえこむ。しかし、機銃の銃身は熱すぎて、もう耐えられそうにない。
「はなれて」
いつの間にか駆けつけてきていたシオンが、小銃を構えてタカユキの横に立っていた。
「すまん」
タカユキはアウムを放して飛びのく。
シオンの小銃が火を吹き、アウムのボディをズタズタに切り裂いた。
ジョージはため息をつきながら、周囲の様子を見ていた。
アウムは完全に動作を停止していた、女兵士は銃弾を撃ちつくした小銃で、おそるおそるアウムをつついている。隊長がその横で女兵士の様子を見守っていた。その姿はアウムの残骸にちょっかいをだしている少女と、その父親のようにも見えた。
身を挺してソーマをかばった男の兵士も幸い無傷で、ソーマとなにやら言葉を交わしている。
それより、タカユキだ。
タカユキはアヤをかばった。自分が盾になってでもアヤを守ろうとしたことはまちがいない。さらに、アウムを素手でおさえこむという荒技までやってのけた。その際に負った両手の火傷を、アヤが心配そうに見ている。タカユキとアヤは、互いに想いあっているのだ。
だとすれば、そもそもタカユキがアヤを襲ったという話も事実かどうかあやしくなる。自分がひどい勘ちがいをしていたらしいことに気づいて、ジョージは落ちこんでいた。そもそも、娘を守ると言いながら、ジョージ自身はアウムを前になにもできなかったではないか。
情けない。
ジョージが自己嫌悪に打ちひしがれていると、大きな音をたててタウンホールから二輪アウムが飛びだしてきた。
しまった。
四輪のアウムが、二台の二輪アウムに分かれたと言っていたではないか。もう一台残っていることを、すっかり忘れていた。しかし、ここでもまた、タカユキがアヤの用心棒よろしく前に立ち、アウムからアヤの姿を隠している。
まったく、たいした男だ。
ジョージは心底感心した。
しかし、これ以上彼を苦しめることはしたくない。タカユキの痛みは、アヤの痛みでもあるのだ。まず盾となって死ぬべきは、先の短い年寄りであるべきだろう。ジョージは、タカユキとアヤの前に立ち、アウムをにらみつけた。
来い、機械野郎。
ケニチは二輪型アウムの残りもう一機が現れた瞬間、死を覚悟した。ケニチの小銃の弾倉は空になっていた。シオンの残弾もなし。コースケはナイフ一本。どう考えても勝ち目はなかった。
アウムが接近してくるのを見ながら、せめてソーマの盾にならなければとケニチは立ちあがった。
そのケニチに、ソーマがささやく。
「どうやらアウムはわたしを追っているようだ。わたしがあいつを引きつけるから、その間に逃げてくれ」
ケニチはソーマを止めようとしたが、ソーマはすでに走りだしていた。
しかし、ここでソーマを見殺しにするわけにはいかない。
ケニチはソーマを追いかけた。アウムの機銃が火を吹いて、銃弾が耳元をかすめる。
ソーマは建物の陰に逃げこもうとしているようだが、まだ距離がある。
間にあわない。
せめて、アウムの射線をさえぎらなければ。
ケニチはふり返り、アウムと向き合った。
走行してくるアウムの向こうから、さらに高速で接近してくるものが見えた。
黒いタコだった。
まったく。オリオのやつは、いつもギリギリに来る。
ケニチは苦笑した。
オリオがあやつる黒い機体は地上すれすれを飛んできて、アウムをニードルガンでズタズタにした。そして、そのまま路上に着陸する。
通常ならば翼を広げて滑空モードで着陸するものだが、通りが狭いために翼をたたんだ状態での着陸だった。しかも、オリオはタコがまだ滑走中なのに機体から飛び降りる。
オリオはリツカのタコが墜落した場所へ走りながら、さけんだ。
「お嬢さま!」




