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異世界物語

ひまわりの花言葉

作者: 村中みか

ひまわりの絵を見ていたら思いつきました。

誤字,脱字,文等のまちがいなどがありましたら教えて下さい。

「受け取って下さい」

そういい彼は,美少女とも美青年とも思える中性的な美貌を持った騎士にひまわりを捧げている。

「……男勝りな私に,花を贈るとは。

  皮肉なものだな。だが,一応受け取るとしよう。」

そんな言葉を吐くのは,メラーナ王国直属の騎士団の団長 フィル・サーシャ。彼女は女でありながら団長まで上り詰めるほどの努力と実力を持っていた。だが,実家が高級貴族ということや女であることなどから,一部の者たちから批難をうけていた。もちろん,彼女の実力を認めている者もたくさんいる。だが,彼女はそのことには気づかないでいた。まぁ,批難していたものたちのなかに王族の分家などがいたためでもあるのだが,とにかく好意にだけ鈍感な彼女であった。

「皮肉では,ないのですが。」

そういい,頬をうっすら染める彼は,メラーナ王国直属の騎士団の副団長 サン・フローラ。中級貴族の出でイケメンで物腰の柔らかい好青年であることから,大勢のお嬢様方から慕われている。

「出会った当初から,あなたに嫌われていると思っていたが,こんな嫌がらせをするほどだとは思っていなかった。」

棘のある言い方で無表情に言い放つフィル。

二人はしばしの間黙り込み,過去のことを思い返していた。


                *    *    *


いまから,5年ほど前。フィルが一三歳,サンが一四歳のことであった。

王主宰の花見で二人は初めて顔を合わせた。

父と一緒にあいさつ回りをしていた。

「こんにちは,ポール・フローラ殿。

こちらが,私の一人娘です。

ほら,ご挨拶を。」

「はじめまして,フィル・サーシャと申します。」

と,ちょんとドレスを持ち上げ頭を下げる。完璧な礼儀作法だった。

ちなみに,今日のフィルのドレスは白と淡い青を基調とした清楚で愛らしいものだった。

ポール…サンの父が挨拶を返す。

「…お久しぶりです。ボブ・サーシャ様。

 こちらがうわさの……。」

口ごもってしまったサンの父に,フィルの父が笑みを浮かべつつ

「なんですかな?」

質問する。

黙ってしまった父をみかねて近くにいた息子のサンが,口を開いた。

「もうすでに,一般の騎士より強いご令嬢とお聞きしました。

……思っていたより,きしゃでいらっしゃる。

うわさは,本当なのですか?」

フィルは皮肉とうけっとったのか,作り物とわかる微笑を浮かべ

「えぇ,ほんとうですわよ。

それにしても,おかしなことをおっしゃる方ね。

魔法で強化すれば,見た目なんて関係ないでしょう。」

サンは顔を真っ赤にして

「あなたが心配なのですよ。

こんな可憐な方が……

その,戦いに参加するなんて。」

フィルを心配する言葉を投げかける。だが,フィルはまたしても皮肉と受け取ったらしい。

「私はサーシャ一族の跡取り,魔物あふれる辺境を治め,さらには騎士としてこの国をまもるのですよ。

可憐とはほど遠いのです。

その証拠に今なら魔法を使わなくても,あなたには勝てると思いますわ。」

ていねいな言葉使いだが,フィルがサンにケンカをふっかけているようにしか聞こえない。

フィルの父は困ったような顔をしている。だが,フィルはとまらない。

「そうですわ。

決闘をいたしましょう。そしたら,どちらが強いか…可憐とはほど遠いのかわかりますわよ。」

フィルの父はさすがに婚約者がいなくなるようなことはあまりしてほしくないようで

「フィル。

婚約者が…。」

止めようとするが,

「大丈夫ですわ,お父様。

結婚はしますから。世界で一番強い方を探してきますから。」

何かがずれている娘に言い切られてしまう。

「いや……,探してきても婿になってくれるかわからないし。」

「わかってますわ。

お嫁にはいきませんから。」

フィルの父はガックリうなだれ,小さな声で

「…もらってくれる人なんているのかな?」

と,ぼやいていた。すると,突然乱入者が現れた。

「では,決闘をおこなうぞ~ぃ。

今すぐって訳にもいかんからの~。

3日後くらいかの~。」

「「「「えっ。」」」」

それは…

「陛下,突然あらわれないでください。

心臓に悪いです。」

そう,陛下だった。挨拶で疲れた陛下がふらふらしていると,なにやらおもしろそうなことになっている。そうして,フィルたちを発見したのだった。

「いや~,悪い悪い。

なんかおもしろそうなことになっているじゃないか。

わしもまぜてくれんかのぅ~。」

このときフィル以外の人たちの意見はぴったりあった

<ぜってー,悪いと思ってない。というか,なんか話をややこしくしようとしている。>

と,ちなみにフィルは試合に思いをはせていた。


三日後


王様の思いつきにより,武闘大会がおこなわれていた。

大会はトーナメント形式で行われ,魔法は禁止,八百長などの行為も禁止の純粋な武力だけの戦いとなった。

フィルは木刀で相手を瞬殺し,サンは剣で相手を瞬殺していた。

とうとう,決勝となった。

「試合開始!」

審判のかけ声とともに二人は動き出す。まずはフィルが打ち込みにいく。早く重い打ち込みにサンは押されるだが木刀にサンの剣がくいこみぬけない。二人とも焦った様子になったかとおもえば,同時に武器を放りだす。肉弾戦へと切り替えたのだ。だが,肉弾戦となったとたん,フィルの動きがみえなくなったかとおもえば,次の瞬間サンは空中に投げ出されていた。強く殴られたのだと,ようやくわかったときにはサンの負けが決まっていた。

「これでわかったでしょう。

私が可憐とはほど遠いことが。」

一本に結い上げたフィルの黒髪がなびく。

「まぁ,武器はまだあったのだけどね。」

と暗記を片手に取り出すフィル。

サンは己の未熟さを理解し,フィルを守れるような騎士になることを天に誓ったのだった。


ちなみにフィルの父は,王様が急に開いた武闘大会のために飛び回り終わった頃には幽霊のようになっていたらしい<サーシャ家メイド談>


              *       *       *


つまりは,サンは一目惚れした少女<フィル>のことを心配していたのだ。だが少女<フィル>は勘違いした,サンは自分の事を嫌っていると。


それから5年

フィルはますます強くなった,一年前には騎士団の団長に任命されるほど。

そして,神々しいほどの美少女に育った。老若男女を魅了するほどの。だが,サンのがんばりとフィルの鈍感さが効果をあらわし,フィル自身は気がついていない。

サンももちろん強くなった,フィルに負けないくらいに。そして二年前には騎士団の副団長に任命された。

ちなみに副団長なのは,階級が関わっているためで実力だけだと1,2を争うほどである。

サンは年々美しくなっていくフィルに焦りを覚え始めていた。そして今,とうとう覚悟を決め告白することにした。<あなただけを見つめる>という花言葉を持つひまわりを持って。


「団長。ひまわりの花言葉ってなにかしっていますか?」

フィルは自信を持って答える。

「もちろんだ。<あなただけを見つめる>だ…ろう。」

だが,途中から声が小さくなり,そして目を見開いた。ようやく気づいたのだ。サンがなぜあんなことを言ったのか,そしてどうして強さにこだわっていたのか。

「そうです。私はあなたを危険から遠ざけ,安全な所で過ごしてほしいかったから騎士になったのです。

ですが,楽しそうに戦っているあなたを見ていたらそれは間違いだったと思うようになりました。

あなたから楽しみを奪い去るより,影からあなたを守りぬく。それが私のすべきことだと。」

「そんな…。私は勘違いをしていたのか。」

そう小さくつぶやき,顔を赤くした。

「そうかもしれませんね。でも,そんなあなたも大好きなのです。

だから,あなたの背中を一生預けてくれませんか?」

サンが赤いフィルを愛おしそうに見つめながら告白する。

「こ…こんな,私…私でいいのなら。」

フィルはつっかえながらも,返事を言葉にし,ひまわりを受け取る。

「こんなではなく。

そんなあなただから大好きなのです。

俺と結婚してくれますか?」

フィルはうれしそうな笑みを浮かべ

「はい。」

力一杯うなずいた。


二人は幸せな人生を歩んだという。



気づけば幸せはそこにあるのかもしれない。

              おわり







見て下さり,本当にありがとうございました。

感想などがありましたらぜひぜひ教えて下さい。

2016年6月3日,一部文を直しました。

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