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燃えた夏  作者: Karyu
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第八十二話 桃vs昇竜


『やっぱり来た。桃って結構筋肉質が好きなんだけど、こういうタイプはお断りだな』


 桃は自分に突進してくる昇竜を見ながらそんな風に考えていた。


「女ァ、まずは貴様からだァー!」


「桃、怒鳴る男って嫌いなんだよねっと」


 桃は男が自分の右手に作り出した氷の刃を突き出したのを右に交わした。そして縦横無尽に迫り来る刃の嵐に桃は余裕綽々の動きで避け続けた。


 昇竜は埒が明かないと思ったのか、桃から距離をとり、


「少しはやるようだなァ! だがァ、これでもォ喰らえェ!」


 昇竜は剛腕な右腕を桃のいる方に突き出し、左手で右手首を掴んだ。そして、


「水砲弾!」


 と叫ぶと昇竜の右手の乙から巨大な水の球が現れ、ボーリング玉ぐらいの大きさになったら桃目掛けて飛んで行った。その速さ、まさに見切ること不可能。しかし桃の姿は既になく、昇竜の水砲弾は桃が元いた地点の空を切るだけであった。


「!?」


 昇竜は辺りを見回したが、桃の姿は見当たらなかった。


「実は後ろにいたりするんだな、えいっ」


 桃は腰に装着してきた片方のエレキガンを昇竜のがら空きの背中に突き刺し、電源を入れた。


「ぐがあああああァ!」


「どう、効くでしょ? 意外と」


 昇竜は絶叫を上げながらも桃から離れた。いくら屈強な人間、超人ともあれど、スタンガンの最高電圧110万ボルトに銃系統の威力を兼ね備えた桃のエレキガンは、桃の能力で更に威力を挙げているため、平気では済まされなかった。


「ぐっ、何故ェお前ェ俺のォ行動がァ読めるゥ?」


 昇竜は超人的な治癒能力で桃から受けた電撃によって焼かれた皮膚を治していった。僅か数秒で昇竜の皮膚は元通りになった。


「へぇ、ただの筋肉馬鹿だと思ってたのに結構頭切れるんだね。でも秘密だよ」


「ならァブッ飛ばすまでだァ」


 昇竜は今度は両腕を桃目掛けて向けた。


「水砲丸、乱れ撃ちィ!」


 先程までの水砲弾の二倍ある水球が両手から無数に放たれた。


「うおおおおおおォォォ!」


 昇竜の雄叫びと共に両手から放たれる水球は勢いを増し、終わることを知らずに撃たれ続けた。桃がいた場所は数々の水球を撃たれ、砂浜の砂が舞い上がり桃の姿を目視することは不可能であった。


 舞い上がった砂埃が徐々に砂浜に舞い落ちたが、その中に桃の姿はなかった。


 昇竜は眉間に一層皺を寄せ、辺りを見回したが見える人影は天竜と翼竜が他のチルドレンと遠くで戦闘している模様だけであった。


 困惑をしている様子の昇竜の顔に激痛と言う文字が奔った。


「ぐがあァッ!」


 昇竜は自分の右肩に電気を帯びた短刀が食い込んでいるのを見た。するとそこには先程視界から消えていた桃の姿であった。桃の右手が短刀を握り、昇竜の右肩に渾身の力で肉を引き裂いていた。昇竜は苦悶の声をあげる前に神経が切られていない左腕を氷の刃に変え横に薙いだ。すると桃の右腕に一線の血が空中を舞った。


 その瞬間僅か一秒、完璧に桃の肉体を分断するはずだった昇竜は驚きよりも一種の恐怖を桃から感じ取った。


 桃は昇竜から飛び退き、自分の右腕を見て呟いた、


「あはははは、血、血だ……。うふふふふ血だ……。あまーい」


 桃は自分の右腕から滴り落ちる血を口元に当てて舐めた。


「おいしーい……」


 桃は自分の血の味に陶酔しきっているのか、昇竜を見ていないかのようであった。


 昇竜は奇妙な目で桃を見つめてはいたが、自慢の右肩に刺さっている短刀を抜き出した、まだ電気が帯電していたのか手に持っていてもかすかに刀身が痺れていた。短刀を抜き出したと同時に昇竜の肩の傷はすぐさま癒着しはじめた。だがこの超人的な体を持つ昇竜は今、目前にいる桃に本能的な恐怖を感じていた。


 冷えきった汗が昇竜の額を伝った。幾分前まで一番弱そうであった女が自分よりも力量、しかも実力で数段上だと直感的に感じたのだ。しかも今の桃の心の中は尋常ではなかった。


 ふと何かを思い出したかのように桃が昇竜に顔を向けた。


「このおいしい血をくれた敵さんにお返しをしないとねー。あはははは」


 桃は腰から二つのエレキガンを取り出し、それを電気分解して一つの銃剣に変えた。


「うふふ。このボディ、刀身、重量、何をとっても最高―。この電雷丸に貴方の血をいっぱい、いっぱい浴びせてあげるからね」


 昇竜を見ていた桃は、しかし昇竜を直視してはいなかった。その目には歪んだ感情が渦を巻いていた。


「くッ!」


 昇竜は桃の攻撃に身構えたが、その行為も意味を成さなかった。次の瞬間、一閃の閃光が昇竜の視界を駆け抜けた。すると昇竜の両腕は大量の血を吹き上げながら空中を舞った。


 ドサッ


 昇竜の豪腕な両腕は肘から切断されて地に落ちた。コンマ数秒後、昇竜は恐怖と苦痛の痛みを共有した。


「ぐがああァァァ………!!」


「んふふー、良い感じの血……。すぐ楽にしてあげるからね」


 桃は軽快な動きで呻いている昇竜の右足を膝から切断、そのまま左腿まで切り捨てた。足場を失った昇竜は背中から地面に落ちた。そして桃はすかさず昇竜の腹部を電雷丸で刺した。苦悶で引きつった顔に更に激痛が走ったが桃の攻撃は終わらなかった。桃は電雷丸の先端に数万ボルトの電流を流し昇竜を体の内側から沸騰させた。奇妙な音を上げ昇竜は目を見開いたまま絶命した。


「焦げた血もおいしーい」


 桃は電雷丸の刀身を愛しげに舐めた。



桃はすごいですね……。

それしか言葉がでません。怖いです。書いたのは自分なんですけどね……。

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