第八十一話 戦場に舞う爆風
「なっ…………!?」
刈谷をはじめ他の四人もただ呆然と海の上で炎上する三隻の戦艦を見ていた。逃げ惑う兵士達、爆発により誘発された爆薬により三隻の戦艦は沈むことも忘れただただ燃え続けた。
「一体何が起きてるの?」
綾夏は当惑し、助けを求めるかのように挙動不審に陥りかけていた。
「他の部隊のこうげきかっ?」
流騎はトランシーバーに語りかけたが向こう側からの通信は怒号の嵐でなにも聞き取れなくなっていた。
「くそ、一体なんだっていうんだ!?」
流騎は毒づいたが、その様な暇は次の瞬間には掻き消えていた。
一気にして流騎達の背後に設置されていた通信施設をかねたトラックが吹き飛ばされ、一般隊員の殆どが一瞬にして死体と化した。
そして中国側の兵士達も見えない爆風によって流騎達の視界から掻き消えていた。
突風が吹き荒れる浜辺の爆煙から三人の男が歩幅をそれえ現れた。三人とも中国風な顔立ちをしており、MBSのスーツにも似て取れるようなスーツを着込んでいた。男達は流騎達の数十メートル手前で立ち止まった。
「おまェが水のシルキだなァ。よゥやくあえたぜェ」
中央に立っていた筋肉の発達が目立つ男がそう言い放った。その顔には獰猛な獅子のように歪んでいた。
「お前達は誰だ?」
流騎の問い掛けに中央の男とは異なり右隣の中肉中背の男が答えた。
「俺たちはァ、中国超人開発部隊によってェ作りだされたァ超人だァ」
「さっきの爆発は全部お前達の仕業か?」
「あァ、邪魔だったからァ消したまでさァ。俺たちィの前をうろちょろするゥ人間はァくずだからなァ」
今度は一番右側にいた男が答えた。男たち三人は全員同じ口調で喋るが三人立ちの容姿はまったく違っていた。
「だったら何故俺の名前を知ってる?」
流騎は相手を問い詰めて、後ろに下がっている静香と桃に手でサインを送った。
「何故ならばァ、お前がァ俺達のオリジナルだからだァ」
流騎は目を見張った。
「なに!?」
「フン、その前にィ俺達を説明しとく必要があるゥ。俺のォ名は翼竜、風を使いしチルドレン」
流騎から見て一番左の中肉中背の男が言い、
「俺のォ名は昇竜、水を司るゥチルドレン」
中央の筋肉太りした男が答え、
「俺は天竜、雷のォ力を受け継ぎしィチルドレン」
一番右側の長身の男が答えた。
「お前ェたち、チルドレンを倒しィ俺達ィが最強だと言うことをあいつゥに証明してやるゥ」
「あいつだと? あいつとは誰のことだ?」
流騎は慎重に翼竜に聞き返したが、
「問答無用ォ!!」
翼竜、昇竜、天竜は流騎たち目掛けて突進してきた。その速さ、まさに神速。
「くっ、散開っ!!」
流騎の一言で、桃は後方に跳び、静香と刈谷は流騎と綾夏が移動した反対側へと跳躍した。
すかさず三人の男達も散開した。翼竜は流騎と綾夏の所へ、昇竜は桃を目掛けて、天竜は静香と刈谷の元へと疾走した。まるで砂浜をなめるかの如く。
一時まで殺風景だった砂浜も、今や黒煙と異臭の漂う異空間へと変貌していた。今では最早、流騎と翼竜たち以外に生きている生物の反応はなかった。ただただ人間の肉体が焼ける匂いと、数え切れないほどの人間が互いに積み重なっている砂浜が音をたてずに存在していた。
MBSの一般隊員も天竜の雷撃と翼竜の突風の不意打ちにより一瞬にして焼け焦げていた。油谷島との通信、連絡が途絶えた山口MBS支部ではトンビが沈痛な面向きで司令官室の机に座っていた。
「シルキたちとの通信が途絶えたと言うのは本当か?」
トンビはその旨を伝えに来た隊員に聞き返した。
「はっ。先程の0210時、油谷島部隊との通信が途絶えました。これが通信途絶に陥る前にカメラが捕らえたものです」
隊員は司令官室の壁に設置されたモニターにスイッチを入れた、すると一般隊員の女性が画面に映り、戦況の説明をしていた。
『こちら油谷島部隊、さきほどシルキ率いるチルドレン隊五人が中国艦隊七隻を撃沈。中国側も続々と残った三隻へと戻っていきます。えっ……!!?? た、ただいま中国側の残り三隻の戦艦が爆発炎上、こちらからの攻撃はなし、現状から見て戦艦内で爆発が生じた模様。ただいま、中国側の戦艦三隻が水没、こちらの勝利かくて―――』
『ごおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!』
『ピー、ザーザーザーザーザー……ズ、ズズズズーーザーザーザー』
「これが油谷島からの最終通信でした」
隊員はモニターのスイッチを消した。
「うむ、そうか」
「どうされますか?」
「シルキ達が死んだと言う情報はない、誰かを偵察に出せ」
「はっ」