第七十七話 再会
翌日の朝六時、スペース内の皆は既に起きていた。全員MBS用のスーツを着て、朝食を食べていた。皆普段の余裕を窺わせる顔付をしておらず、精神的疲労とショックでムード的には快しではない。特に綾夏と刈谷の顔付は既に心ここにあらずあった。
流騎は初の任務となる綾夏と刈谷を勇気付けようと、
「いいか二人とも、確かにこれから俺達が遂行する任務は果てしなく困難だ。俺ですら生きて帰ってこれるかどうかはわからない、それにこの任務に失敗したらこの国は破滅す……」
流騎の脇腹に空中飛び膝蹴りが命中、そして炸裂。流騎は体がくのじに曲がりながらスペースの壁に激突した。
「なっ!? おい、桃っ、人がせっかく……」
「逆にプレッシャーかけてどうするのよ! まったく、だから流騎はいつまでたっても鈍だって言われるんだよ」
「うっ……」
流騎は返す言葉が見つからず黙り込んでしまった。
「いい? 綾夏ちゃんに秀明君。気楽にいこうよ。ね?」
「でもよ、気楽にいけっていわれてもよ、萱場の言うとおりもしも俺達が負けたら日本は……」
「なに、いい男が弱気になってるの。もしもなんて使わないの、私達に任務が来たってことは勝算があるからこそなんだよ」
「で、でも……」
綾夏は未だに死と向き合うのが怖いのか、体が震えていた。
「綾夏ちゃんも、ね? 怖がらないで、私達が怖がってたら敵に好き放題させちゃうってことだよ? そんな事嫌でしょ?」
「い、いや……」
「なら、私達は闘わなきゃ。たとえどんな犠牲を払ってでも敵をやっつけなきゃ、だって私達は今生きてるんだから。だから生きてまた一緒に楽しくおしゃべりしようね。昨日みたいに」
「うん」
綾夏は桃に勇気付けられたのか、どうやら覚悟を決めたらしい、
「私やる」
「そう、その意気だよ」
桃のおかげでスペース内の冷えきったテンションはいつもどおりに戻った。そして静香が、
「それでは皆さん、準備を始めましょう。もうそろそろ時間ですので」
「ああ、そうだな。よし各自銃の点検をした後ホルスターにおさめて私事はやっておけよ」
流騎はそう言い、水鉄砲型銃を二丁ホルスターに納めた。刈谷は鉄塊とも似ても似つかない銃を右のホルスターに納めていた。その口径実に70mm。この世のものとは思えないほどの小型の大砲を思い浮かばせるような銃を刈谷は保持していた。
一方の綾夏と静香は同型の銃を一丁ずつ腰に提げ、桃は銃ではなくエレキガンをそれ専用のケースに入れた。それに気付いた綾夏は、
「桃ちゃんの力ってもしかして雷?」
「うん、よくわかったね。だから私はあんまし銃は使わないんだ」
「準備できたか?」
流騎が皆に呼びかけ、
「ああ、いつでもいいぜ」
刈谷の顔には熱気と闘志が甦っていた。
「それじゃ、今から俺たちは防衛任務2000時開始に備え山口MBS支部に向かう」
流騎の掛け声がスペース内に響いた。
流騎達一行は、電車を使い山口県の山陰本線の伊上に到着した。しかし、五人の高校生が同じスーツに身を包み遠くからでも見える物騒な銃を全員腰に提げている姿は異様を通り越して危険であった。
駅のホームの人達は五人からはできうるだけ距離をとり、目線を合わせないようにしていた。
そして流騎達が改札を抜けたところに一般のMBS隊員が四人待機していた。そのうちの一人が流騎に駆け寄り、
「シルキ隊員ですか?」
「ああ」
「それではこちらにどうぞ」
流騎たち五人は一般隊員の後に続き二手に分かれて二台の車に乗った。男は男同士、女は女同士に乗るための配慮であった。
そして五人と護衛兼運送の一般隊員たち四人を乗せた車は一時間ほど走り、山口MBS支部まで到着した。
山口MBS支部は油谷港に面しており、その場所は無人工場が多いため人出は少なく、場所としては最適の場所であった。しかし、任務開始まで後七時間ぐらいしかないためか支部は慌しく、怒号が飛び交っていた。その混雑している支部の外ではシコンの姿も見られた。シコンを捉えた流騎は車から飛び出し、刈谷の呼び止めを振り切って
「シコンっ!」
「ん? おぉ、シルキか。でかくなったな」
「何で貴様がここにいる!?」
「何でってお前、この国を守るためにだが他に理由でも?」
「くっ」
流騎は理性をなくしているのか、シコンを怒りの念を持って凝視し、逃げるように視線をそらした。そしてそのまま綾夏達の所に戻っていった。車の中で流騎の心境は、
『何で俺はこんなにも慌てて、怒っているんだ? シコンがいるということはわかりきってたじゃないか。何でいまさら俺はこんなにも理性を失っているんだ? くそっ! くそっ!』
それを見守っていた綾夏は、
「流騎くん……」
と心配そうに呟くだけであった。
再会といっても流騎とシコンとの再会ですが、それほど今は重要視する点ではありませんん。
サブタイ通りのただの再会です。ただそれだけですけど^^
だんだんと緊迫してまいりましたね。




