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燃えた夏  作者: Karyu
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第七十六話 桃の事情


「む? なんだそこにモモもいたのか」


 ハヤブサは桃の姿をモニターを越して見つけ、


「うん、ハヤブサちゃん」


「なら、お前も明日の作戦に参加しろ。作戦名はまだ出されてはいないが防衛任務としておく。お前たち五人には明日の朝一番でMBS山口支部に迎え、駅に着いたら一般隊員が迎えに来ている。それとリベリオンリーダーシコン達もMBS山口支部に一旦集まり、作戦実行時には二手に分かれる。詳しいことは支部についてから聞いてくれ。尚、この作戦が終了、成功した場合ルネサンスは無条件でこの政府を牛耳ることになる。この国を生かすのも殺すのも今や我々の手に委ねられているということを忘れるな。それでは健闘を祈る」


 ハヤブサからの通達は終わり、モニターの画面も切れた。五人はなんとか思考を整えた。

「ふぅ、明日はきっと地獄だな」


 流騎が疲弊しきった声を喉から絞り出した。


「でも、まあ先ずはこれ片付けないとな」


 流騎は自分の手に合ったコップの中のジュースを飲み干し、紙コップだったので握りつぶした。そしてゴミを拾い袋の中に詰め始めた。それに続き綾夏も気を幾らか紛らわすために流騎を手伝い始めた。


 残り三人も言葉数少なくも片付けに取り掛かり、五人いるので早いせいか僅か三十分で終わることができた。時計を見ると2000時とモニターにデジタルで表示されていた。


「後、二十四時間後か……」


 刈谷は呟いた。


「今日は皆ここに泊まっていけ、家に連絡入れおわったらな。明日はここを朝八時には始発に乗って山口県だ」


「うん」


「はい」


「ああ」


「桃、了解」


 流騎と桃の二人以外は諸々携帯を取り出し家や親に連絡しことの経緯を話した。


「全員終わったか?」


「ああ、でもよ林果さんはいいのかよ、連絡入れないで?」


 刈谷は当然もっともの事を聞いたが、桃の表情に陰が落ちた。


「わ、私には……」


「桃は孤児(みなしご)なんだ。それでMBSに引き取られた」 


 流騎は桃の代わりに説明し、刈谷に視線で訴えかけた。


「そ、そうだったのか、悪かったな林果さん余計なこときぃちまって」


「ううん、いいよ……」


「ま、それは置いといて女子三人は談話室を使ってくれ、俺達二人は筋トレルームで寝ることにする。まだ寝るには早いが明日は万端で挑まなければいけないからな。それじゃ、お休み」


 流騎はさっさと他の四人を置いて、一人だけ筋トレルームに姿を消した。それを追って刈谷も筋トレルームに入っていった。残された少女三人は互いに顔を見合わせ、綾夏が


「それじゃねよっか静香ちゃんに桃ちゃん」


「そうだね綾夏ちゃん。じゃ、ねよっか静香」


「はい」


 三人は談話室からもつながっているシャワー室へと順番に入っていき、簡易式ベッドを壁から取り出し、眠った。その時時刻はくじを回ったころであった。




 その頃男子の二人は。


「おい萱場、あの林果桃さんとお前ほんとに幼馴染なだけかよ?」


「いや、なんでだ? 惚れたか?」


「けっ、んなわけねぇだろ。そうか、ならいいんだよ。なんか彼女からは得体も知れねぇ化けもんが眠っているような気がしてな」


 刈谷の言葉を聞いたとき、流騎の鼓動は一瞬高まったが、誰かに悟られる前に平常心を取り戻し、


「なんでだ? 何でそう思う?」


「いや、俺の勘だ。でもよオロチが話しかけてくんだよ、林果さんを侮るなってな」


「そうか。そこまで気付いているのだったら話してもいいだろう。桃がグレード3だってことは教えたよな?」


「ああ」


「実はそれは桃になるべく敵に狙われないようにするためだ」


「どういうことだ?」


「MBSの隊員ってのはグレードが高いほど相手に敵視されやすい。しかも桃の場合特殊な能力を保持しているから尚更敵の手に触れさせるのは得策ではないんだ」


「じゃ、一体なんなんだ? 林果さんの能力って?」


「力自体は雷だ。だが桃はその扱える雷の種類が異なり、一種のマインドスキャンっていう技と言うより能力を持っている」


「マインドスキャン?」

 刈谷は益々わからなくなってきたようだが必死に流騎の話についていった。


「ああ、マインドスキャンってのは相手の脳の中の記憶、知識、思考、潜在能力の全てを知ることができるんだ。相手と目線を合わせるだけでな」


「な!? そ、そんなことができるのか?」


「事実だ。それに俺は桃との模擬戦で一度も勝ったことはない」


 刈谷はもはや驚きの声をあげることも間々ならなかった。



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